その5
遅くなりました。
今年は、この小説を描き始めたりと色々と忙しい年になりました。
世の中も大変ですが来年も頑張っていきます。
皆さんも頑張って行きましょう
ということで、本編どうぞ
休日の駅はいつもよりは空いている気がした。今日の朝もいつもの朝と同じように人で溢れていたとは思うが、いつもより数時間遅い現在は人が少なくて当然である。
俺はいつものように電車を乗り継ぎ、上野との待ち合わせ場所、光明高校前駅の入口に到着した。
人は多くもなく少なくもない。まぁ、休日の駅前って感じだ。
と、そこに1人だけ異彩を放つ女がいた。
長い髪を2つに結び、清潔感のある清楚な服装、下げられたバッグにはアニメのキーホルダーや缶バッチ。
俺はその女を知っている。光明高校1年B組、俺の隣の席の上野凛だ。
「えっと、おはよう。上野。」
俺は小走りで駆け寄り、声をかける
「おはよう、じゃないわよ!遅すぎ!」
「え、あ、ごめん。」
上野のご機嫌はかなり悪いようだ。でも、遅すぎっていっても待ち合わせ時間の30分前なんですけど…なに?楽しみだったの?
「まぁ、いいわ!早く行きましょ?」
そういうと、不機嫌ツインテールはゆらゆらと揺れながら駅の中へと進んでいく。
「ちょ、どこに行くのか聞いてないんだが……」
背中に声をかけるが、スルーされてしまった。その代わりに
「ちょっと、遅いわよ!早く来なさい!」
命令形の怒鳴り声が聞こえる。
「へいへい!今行きますよーっと。」
俺は溜息を吐いて、ノロノロと歩き出す。ここで急がないのは上野への、小さな抵抗だ。
断言出来る。やはり、これはデートじゃない。上野よ、俺のドキドキを返せよ
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東京方面へと向かう電車は、久しぶりに利用した気がする。
中学の時は、アニメのイベントで新宿や秋葉原、池袋なんかよく通ったためこっち方面はよく来ていたが、脱ヲタを計画してからは通学以外に電車の利用はほとんど無くなっていた。
駅でしばらく待っていると、電車はすぐにやってきた。扉が開き上野はスタスタと中へと歩いていく。
休日の昼間なため、席は余裕があるので上野はキョロキョロと座る席を選ぶと端の方に座った。
俺はと言うと、何となく隣に座るのが気恥ずかしくて、何となく上野の斜め前に立ち、吊革につかまった。
電車の中は静かで、電車が走る音だけが響く。
俺たちはと言うと、特に会話はなく、俺は流れゆく景色をぼーっと眺める。ふと、上野が気になってる視線を向けると、
「!!!!!!」
上野はあさっての方向に目を向けて座席にもたれかかっていた。見るからに吐きそうである。
どうやら、電車酔いするタイプだったらしい。
「おい、大丈夫かよ。1回次の駅で降りて休もう。」
「き、気にしないで…全然へ、平気だわ…」
上野はそう言うと、震える親指を立ててグットを作ってみる。
「全然、ぐっじょぶ…」
全然、グッジョブじゃないんだか……
そうこうしているうちに、次の駅に着くとのアナウスが流れたため、俺たちはと降りることになった。
駅を降りて、近くのベンチに腰掛ける。自販機で飲み物を買い、上野に渡した。
「あら、ボッチヲタクの癖に気が利くのね……」
「うっせぇーな。まぁ、無駄口叩けるほどには元気があるようで安心したよ」
「そうね、だって元気だもの……ふふふ、計画通り」
上野はニヤリと笑うと、よろけることも無くスっと立ち上がる。
「え?今なんて…」
「計画通りって言ったのよ。殺人ノートを持ちながら言った方がリアルだったかしら?」
「いや、名前を知られてるからそれは嫌だなって…ってちがーーーう!計画ってどういう事だよ!」
「あら?まだ気づかないの?ここの駅、見覚えない?」
言われて、俺は駅を見渡してみる。この雰囲気…そして、駅から見える景色、柱に書かれた駅名……
見てみないふりをしていたのだろうか、気づかなかったのだろうか…俺はここを知っている。
あれほど通った場所だ、俺の中学三年間の青春を詰め込んだ場所…
「ここは……もしかして…」
「そうよ、秋葉原よ!!!!」
上野はグッジョブと親指を立てる。
「な!?」
こいつの目的地って秋葉原かよ!わざわざ、酔ったフリしてここで下ろすなんて……
「どうかしら?久しぶりなんでしょう?秋葉原は」
「お、おう…」
確かに久しぶりだ。脱ヲタした俺のテンションも上がってきてしまった。当時の熱が俺の中で燻るのがわかる。ジワジワと蝕むように…
「ほら、いくわよ」
上野はすまし顔でスタスタと歩いていく。俺は何が何だか分からないが久しぶりの秋葉原に胸を躍らせながら、上野の背中を追った。
って、なんで胸踊らせてんだよ、俺は。
ありがとうございました。
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皆様、良いお年を