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壱果の父上はムテキング  作者: 巳ノ星 壱果


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7/8

7話 我が家は、無重力空間

 無敵な父上は、私を叱ったことがない。

 なぜ怒らないのかわからない。


「壱果に何を言っても伝わらない」


 と思われているのかもしれない。

 ただ、違和感を覚えたときだけ、黙って溜息をつく。


 そう、父上は「黙るムテキング」なのだ!


 だが私は知っている。

 父上の怒りスイッチを。


 それは、私にとっての地雷スイッチであった。


 床にカバンを置いた、その瞬間だ!

 父上の中で何かが起動する!


「床にカバンが置いてある」


 この言葉を、何十回聞いたかもう覚えていない。

 幼少期は自分の部屋に逃げるように、カバンを置きにいった。


 清潔で快適な空間を愛する父上を黙らせる術を、

 私は大人になってから身につけてしまったのである。


「私の周りは宇宙空間なのです。

 そんなに浮かせたいなら、宇宙飛行士を目指すべきだったと思うよ。全部浮いてて快適だよ」


 そう言うと、父上は黙る。


 私はその隙に、そっとウォークインクローゼットへ物をしまうのである。


 きっと父上は思っているのだろう。

 なぜこんな無敵な娘に育ってしまったのか、と。


 来世では、父上が宇宙飛行士になっているに違いない。


 そして私は、その宇宙飛行士の父上のもとに生まれたいと思う。


 無重力でも、きっと同じことを言われるのだろうけれど.....

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