第5話
岡山藩。
烏城と呼ばれる黒い城が有名。
その城下町の宿で、千代姫と槍花を除く一行が待機している。
千代姫と槍花は、郡代に会いに行っている。
ペンドラゴンは蔵五といね子と三人で、お手玉をして遊んでいる。
言葉が通じなくても歳が近い者同士、簡単に打ち解けた様子である。三人で笑いながら遊びに興じている。
一方、シャーロットは退屈を持て余している。寝転がりお尻をかいている。
突然シャーロットが叫ぶ。
「おっ!?みんな静かに!」
静寂。
そしてシャーロットが、ブッ、とおならを出す。
シャーロットが眉をひそめて言う。
「ペラペラペラ!」
「は~い、ごめんねごめんね~」
「ペラペラ(プイッ)」
それを見て、小鈴がシャーロットに言う。
「シャーロット様、ペンドラゴン様は何とおっしゃったのですか?」
「シャーロットは可愛いからおならも可愛いですね、とのことやで」
「そ、そうですか…嘘ですね?」
「嘘やで。結婚前の女が人前でおならとかすんな、言うてはったわ。ペン様は立派やろ?それより小鈴ちゃん、ちょっとギャンブルしてきていい?」
「ギャンブル?それは何ですか?」
「賭け事や。長崎でやったチンチロは楽しかったなー。だめ?」
「賭場は危険なので駄目です。お二人の安全を確保するのが私の仕事です」
「そっかー…じゃあ、賭場じゃなくて厠に行ってきていい?すぐ戻るで」
「…厠へは私が付き添います。賭場へは行かせません」
「ちっ」
しばらくして、千代姫と槍花が戻ってくる。
シャーロットが起き上がり言う。
「槍花おかえりー。外に遊びに行こうぜ!暇で敵わんわ」
「シャーロット、済まないが仕事が入った…ハクション」
「仕事?」
千代姫が言う。
「鬼ノ城城跡で怪異が発生しているそうです。巨漢の鬼が占拠しているとの事。この地には豪傑もおらず、報奨金を懸けて兵を集めようとしても名乗り出る者がいないとか。お困りのようなので、我々で退治をすることとなりました」
シャーロットがピクリと反応する。
「…姫さん、報奨金って言うた?」
「はい」
「報奨金ってアレやな、お金的なアレやろ?」
「お金です」
「よっしゃ、ちょい待ち。ペン様ー、ペラペラペラ」
「ペラ?ペラペラペラ」
シャーロットが鼻をフンとならし言う。
「よっしゃ。姫さん、あたしらも鬼退治に行くわ」
「え?でも、我々には報奨金は出ませんよ」
「へ?」
シャーロットが一気にやる気をなくした。
「ならやめとく。ペン様ー、ペラペラペラ」
「ペラ?ペラペラペラ(怒)」
シャーロットが天を仰いだ。
「あっちゃあ。藪蛇やったわ」
「ペンドラゴン様は何と?」
「市井の安寧を保つのが騎士の役目。助けになりたい、とのことや」
千代姫がにこりと笑う。
「さすがは竜騎士様です。高潔ですね。では折角なので、ペンドラゴン様の活躍を拝見するとしますか」
シャーロットが立ち上がり、言う。
「まあ、ペン様が出るまでもない。あたし一人で十分や。さあ、暇つぶしに、ドカンとセントジョージをぶっ放すでー」
そして、鬼ノ城城跡地へ。
鬼ノ城まであと少しのところで、大きな足跡を発見する。
千代姫が足跡に自分の足を乗せてみる。三倍の大きさがあった。巨人の鬼の怪異である。
シャーロットが言う。
「あたし、用事思い出したから帰るわー」
槍花が答える。
「何の用事だ?ここは我々に任せて、用事を済ませてきてよいぞ。ハクション」
「真面目かっ!ただの冗談やがな…て言うか、槍花こそ休んでおいたほうがええんとちゃう?風邪やろ?」
槍花が首を振る。
「姫をお護りするのが私の職責だ。たかが風邪やくしゃみごときで…ハクション!」
「はいはい。あたしがちゃちゃっと終わらせたるから、あんたは体を休めておき」
小鈴が千代姫にこっそりと話しかける。
「シャーロット様は、本当に大丈夫でしょうか?頼りないというか、適当と言うか」
「そうですね。ペンドラゴン様のご苦労がしのばれます」
「私はなんていうか…懲らしめたくなります」
「…分かります」
やがて城跡にたどり着く。
瓦礫の陰に、大きな鬼の頭が見える。まだこちらに気付いていない。
「ラッキー、チャチャっと終わらせよか。ペン様、ペラペラペラ…よっしゃ、セントジョージ使用許可をゲット、と」
シャーロットがカバンから懐中時計を取り出す。
「じゃ~ん!セントジョージ登場!」
蔵五が首をひねる。
「何ですか?それは」
「神器やで。竜殺しの銃のレプリカや。あんな雑魚程度、これでズドンでおしまいや。はよ終わらせて遊びに行くでー」
槍花がセントジョージを覗き込む。
「草薙みたいなものか。神器を託されるとは、やはりシャーロットは一角の武人なのだな⋯ハクション!」
「まあ、わたしは近接格闘が得意やからな。セントジョージを一発撃ったらスピリット切れでクタクタなるんや。でも、いざとなったらペン様に運んでもろたらええやろし。じゃ、見てな!」
シャーロットが、懐中時計を握る右手を前に出し、人さし指を伸ばす。
左手を添える。
右手が光り出す。
その光が人さし指に収束する。
「じゃあ、セントジョージいけ!ズドーン!」
「ハクション!」
「うおっ!?」
槍花のくしゃみに驚き、射線が狂う。
放たれた光線は鬼の頭上に逸れ、宙に消えていく。
呆然とするシャーロットに槍花が言う。
「…ごめん。」
「なんでやねん…まあ、ええ。後はペン様に任せるわ。ペン様ー、ペラペラペラ」
鬼がこちらに気づき、近づいてくる。
ペンドラゴンが真剣な表情で前に出る。
しかし、それを千代姫が止める。
「彼女を少し懲らしめましょう」
「ペラペラ?」
千代姫が言う。
「蔵五さんいね子さん、出番です。彼女に気力を注いであげてください。例のやつです」
「え?分かりました…いね子ちゃん、今回はやりすぎないでね」
いね子が答える。
「…はい(ニチャア)」
「…い、いね子ちゃん?」
2人はシャーロットの元へ。
そして手をつなぎ気力を注ぎ込む。
槍花がおびえてその場から逃げ出した。
やがて、シャーロットが驚愕する。
「な⋯なんやこのあふれるスピリットは」
蔵五が言う。
「シャーロット様、これで鬼を倒してください」
「蔵五くんたちの仕業なんか。これは恐ろしい力やなぁ。よっしゃぁ!極太のセントジョージ砲を撃ったるでー」
シャーロットは右拳をつきだす。そこにまばゆい光が収束する。
「どかーん!」
光線が放たれる。
もはや銃ではなく大砲だった。
太い光線が鬼の上半身を跡形もなく吹き飛ばす。
残った下半身も、すぐに黒い霧となり霧散する。
「うひょー!たまらんなぁ。蔵五、もっと頼むで、ガンガンやったって…いや…無理かも」
シャーロットの体がビクンビクンと震える。
「あああっ。何これムリムリムリっ。もう止めっ、やぁっ!蔵五ぉぉぉ!ああん、だめぇ!もうだめなのぉぉぉ」
蔵五が叫ぶ。
「だめだ!いね子ちゃん手を離して」
「…」
「…いね子ちゃん?」
「…おおおおお♡」
「だめだっ!シャーロットさんは大丈夫ですか?」
「おおおおお♡」
「ヒィィィ!」
それを眺める千代姫がつぶやく。
「…すごく楽しい」
千代姫の足元で槍花が怯えてガタガタ震える。そして、つぶやく。
「私だけでなく、シャーロットの尊厳までもが…」
ペンドラゴンが手に汗を握り、興奮してつぶやく。
「ワンダフル!」
それらを見た小鈴が、呆れながら言う。
「姫様…そろそろ止めないとシャーロット様が壊れます」
「…そうね。ちっ」
千代姫が蔵五を睨む。
蔵五の気力が霧散し、いね子の手が離れる。
ツヤツヤになったいね子とシャーロットが、その場に倒れる。ビクンビクンと痙攣する。
蔵五が言う。
「二人とも大丈夫ですか?いね子ちゃん?」
「だ、大丈夫れす。すごく良かったれす…」
「え!?シャ、シャーロット様は大丈夫ですか?」
近寄る蔵五に怯えて、シャーロットが泣き叫ぶ。
「ひいいい!近寄んな!この性獣!」
「せ、性獣!?」
「ペン様ー!助けてー!妊娠させられるー」
ペンドラゴンが、親指を立て蔵五に言う。
「グッジョブ!」
「ペ、ペン様ぁぁぁ」
それを見ながら、小鈴が言った。
「姫様、これは何と報告すれば…」
「ありのままで構いません」
「はい…お姉ちゃん、シャーロット様がメスになったよ…」
すこし怯えながら報告する小鈴を見て、千代姫が小さく呟く。
「…小鈴さんは、どんな声で鳴くのかしらねぇ」
「ヒィィ!お姉ちゃん助けてー!」




