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第4話

千代姫一行は長崎の町へたどり着いた。

幕府が唯一、外国との窓口とする町。

他国の文化が流入し、貿易により富に恵まれている町である。

予定よりも早く着いたため、長崎の町でさしあたりの逗留となった。

千代姫と小鈴は宿に待機して打ち合わせをしている。

蔵五といね子は、槍花と共に長崎の町を散策することとなった。

異国情緒あふれる品物や建物が多くあり、蔵五といね子が目を輝かせる。

いね子が土産物屋の前で足をとめ、動かなくなった。

蔵五が言う。


「いね子ちゃん、何を見てるの」

「ええと、これです」


びいどろのかんざしだった。


「きれいだね」

「はい。こんなきれいな物、初めて見ました」

「買ってあげようか?」

「え?」

「どれどれ、値段は…」


値札をみて蔵五は絶句する。


「た、高いなぁ」

「村田様、無理をなさらないでください」

「いや、そうはいかないよ」


蔵五は槍花に話しかける。


「槍花様、ご相談したいことが」

「なんだ蔵五」

「このびいどろを買いたくて。お金を借りるわけにはいかないでしょうか」

「村田様!借金をしてまではいりません」

「だめだよ、買ってあげるから」

「ふむふむ、なるほど。事情は分かった。よし、蔵五よ、出世払いで構わないからこれを使いなさい」

「ありがとうございます」


店主からびいどろのかんざしを受け取り、いね子に渡す。

いね子が受け取り、うっとりする。そして、頭に付ける。


「村田様…わたし、幸せです」

「よかった」


槍花が満足気に頷く。


「いね子、とてもよく似合っているぞ。美少女にますます拍車がかかるな」

「そんな、槍花様…あれ?」


そこでいね子は金髪ショートカットの白人の女が道を歩くのに気が付いた。


「すごい…きれい」


いね子が見とれる。

金髪女が、視線に気付く。そして近寄ってきた。

青い瞳。西洋の軍服で身を包んでいる。

金髪女が言う。


「姉ちゃん、何ジロジロと人のこと見とんねや」


蔵五達が固まる。


「こら、なんとか言えや。こっちはギャンブルで総スカンでイライラしとんねん。今からペンドラゴン様に叱られるんやぞ」

「ぺんどら…え?」

「イギリス最強クラスの美少女にクドクドと人の道を説かれんねん。分かるか?」


槍花が蔵五といね子の前に立つ。


「異人どの。不躾に見てしまい申し訳ない。謝罪する」

「おおっ?姉ちゃんはなかなかの武芸者やな。分かるで」

「そちらこそ。しかし、日本語がお上手ですね。しかも関西弁。私も関西弁は多少使えますよ」

「そうなんか。実は日本語の教師が方言持ちやってなぁ。お?あそこにかわいい子犬がおるな、あれ、チャウチャウちゃう?」

「ちゃうちゃう。チャウチャウちゃう」

「そっか。じゃあそろそろ行くわ。絡んで済まんかったな。姉ちゃん達の名前は?」

「立花槍花。こちらは村田蔵五と楠本いね子」

「あたいの名前はシャーロット・ドレイクや。イギリス人やで。ほな」


シャーロットを見送り、いね子がうっとりとつぶやく。


「びいどろみたいに輝く髪。きれいな女性でした」


蔵五が頷く。


「そうだね」


いね子がムスッとする。

しかし、蔵五はそれに気づかない。






蔵五達が宿に戻ると、小鈴が千代姫の身なりを整えていた。

小鈴が言う。


「みんな、おかえりー。ここで異国の要人と会うことになったよ。槍花は補佐役として姫様の横に侍って」

「要人?」

「エレノア・ペンドラゴン。イギリスの竜騎士」


槍花が首をかしげる。


「ペンドラゴン?なんか聞いたような…」

「先方も早く到着していたみたいで、すぐに会うことになったのよ。ほら、次は槍花の髪を整えてあげるからこっち来て。あと、蔵五くんといね子ちゃんは別室でのんびりしておいてね。おっ!いね子ちゃん素敵なかんざししてるじゃん」

「えへへ。村田様に買って頂きました」

「へえー。蔵五君もなかなかやるじゃん」


小鈴が槍花の髪を整えた頃、その要人がやってくる。

竜騎士エレノア・ペンドラゴン。金髪碧眼の美少女イギリス人。

そして副官のシャーロット・ドレイク。中身がおっさんの関西弁イギリス人。

ふたりは軍服に身を包んでいる。


「「ああっ!」」


槍花とシャーロットが驚く。

千代姫が首を傾げる。


「槍花さん、お知り合いなの?」

「は、はい。先ほど町で少し話をしまして…」


千代姫と槍花、ペンドラゴンとシャーロットが向かい合わせに座る。小鈴は千代姫の後ろに控える。

会談は、ペンドラゴンが英語で話しシャーロットが通訳する形で進行する。


「ペラペラペラ」

「ええと、ペン様いわく、国王より言われて親書を持ってきた、開けて見てくれんか、との事や」

「では、拝見します…なるほど」


千代姫が大きく息を吐く。


「この親書の内容を、ペンドラゴン様はご存じで?」

「ペラペラペラ」

「ペン様いわく、分かっとるで、とのことや」

「そうですか…おふたりは異国の強力な怪異を退治するためやってきたと。では、江戸に確認を取り、回答をいたします」

「頼むで。で、姫さん、どれくらいかかりそうやろか」

「そうですねぇ。早ければ明日にでも」

「マジかいな。江戸って遠いんやろ?えらい速いな」

「優秀な部下に恵まれていますので…江戸の人間と長崎から会話ができるのです」


後ろに控える小鈴がえへんと胸を張る。

千代姫は続ける。


「ところで、長崎逗留で困っていることはございませんか?」

「ペラペラペラ」


ペンドラゴンがニコリと笑い、千代姫に頭を下げる。


「ええと、ペン様曰く、長崎の賭場はイカサマが横行しとる。正義の竜騎士としては見過ごせへん。シャーロットを派遣してギャンブルさせるから、わざと儲けさせるように手配してくれんか、とのことやね」

「くっ!」


槍花が堪えきれず吹き出す。

シャーロットが頭をかく。

千代姫とペンドラゴンと小鈴は、それを不思議そうな顔でそれを見ていた。






翌日の昼、小鈴が言う。


「姫様、お姉ちゃんから連絡です。評議から認可が下りたと」

「ありがとう。じゃあ、ペンドラゴン様をお呼びしましょう」


宿の者に言い、ペンドラゴンへの使いを送る。

程なくして、金髪二人組がやってきた。

千代姫が言う。


「ご足労恐れ入ります。信書の件ですが、江戸から認可がおりました。お二人の江戸での滞在を許可いたします」

「ペラペラペラ」

「感謝やでー、とのことや」

「では、出立はいつになさいますか?」

「ペラペラペラ」

「こっちはいつでも大丈夫や。今日でも明日でも構わへん、とのことや」

「そうですか。では、今日にしましょう」


こうして、千代姫一行5名と、イギリス人コンビ2名の江戸への旅が始まる。

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