31、ブーレ湖の決戦 後編
投稿が少し遅くなりましたが、よろしくお願いします。
エルラール達が湖底に向かうと同時に神殿の割れた天窓から天使が二人降りてきた。
その天使の一人は男性のように見え現養父であるサンダール・ブラックウェルに似ていて、もう一人の天使は女性のようでマーガレット王妃にそっくりだった。
「まさか、、、、、お父さま、、、、お母さま?」
瞬間、二人に抱きしめられた。
「「リリエルっ」」
「本当にお父さまとお母さまなのですね。十五年前にここで亡くなられ大天使になられた、とケルビム様からお聞きしていたのですが、ずっとずっと、、、お会い、した、、、かっ、た、、」
涙が溢れる。
「立派に成長してくれて嬉しい。積もる話はあるが、地獄のゲートが開きかけている。世界各地のアンデッドは全て殲滅し地獄の亀裂も閉じて結界を張ってあるが、ゲートを閉じるためにはこのブーレ湖を死守しなくてはならない。この神殿は私達天使軍が守るが、湖水を清浄に保ち湖底を守るのはリリエルとユーリアの役目だ。やってくれるか。」
「はい、お父さま。」
「では、ユーリア、リリエルと頼む。神殿は外から守る。」
「バサラ、ご武運を。」
バサラは天窓から空中に飛び立った。
ユーリアがリリエルの手を握る。
「リリエル、大きくなったわね。というよりすっかりレディね。」
「お母さまが本当のお母さまだと知ったのは一年半ほどまえで。」
「ずっと天界から見守っていたの。フリージアにも感謝してるのよ。あなたを大切に育ててくれて。」
「ホワイティエ家では大切に大切に育てていただきました。」
「あなたを見ているとよくわかるわ。たくさん話したいけれど、まずは湖水の浄化をしましょう。ゲートは開きかけているの。ここの湖水の結界が強ければゲートは開きにくくなるから、頑張りましょう。」
「はい、お母さま。」
二人で湖水に膝まで浸かり、光魔法を水に込めていく。
先ほどから、水温が上がってボコボコと沸いた泡が出てきていたが、光の粒子が吸収されるに従って水温が下がりはじめ、泡の発生が止まった。水はキラキラと輝きはじめオーロラ色に変わっていく。
「リリエル、力を抜いてはダメよ。このオーロラ色がもっと濃くなるように、同時に水の粒子の密度を細かく詰めると結界は更に強化できるわ。」
「お母さま、わかりました。」
リリエルの光魔法は母ユーリアから引き継いだものだ。女神としての役目は多くの命を守ること。更に今回、リリエルは何としても生き延びねばならない。
順調に湖水の結界が強化されていく中、地響きが起きて神殿の壁が崩れていく。外からバサラの声が響いた。
「ゲートの亀裂が広がっている。ユーリア、リリエルに結界を張るのだ。」
「わかったわ。リリエル、今からあなたに結界を張るから、あなたは内側から同時に光を出すのよ。いきますよ。」
ユーリアはリリエルの全身に光魔法で結界を張っていく。それは卵のような形でリリエルを包み光は厚みを増し黄金色に輝く。リリエルも内側から光を出して結界を強化していく。湖の真ん中に黄金色の大きな卵が立ち、その周りも黄金色の水が広がっている。
※ ※ ※
ルベールがブーレ湖底のさらに深いところに到着した時、すでに地獄のゲートが開きかけていた。中からマグマのような赤黒い炎が吹き出している。
(これが地獄の火なのか)
そして絶句した。
その炎の中に、グロテスクな人型の何かがこちらを見ている。姿は人型だが、どす黒い翼を持ち、髪の毛はなく、皮膚はナメクジのようでズルッとしており、手指は長く鉤爪で、耳は尖り口は裂け牙が、目は底なしのように穴があいているだけだった、いやその奥に赤黒い炎がある。その目が亀裂からこちらを伺っていた。ルシファーだった。
「何と、、醜い。」
ルベールは思わず呟いていた。
「地獄の炎に焼かれれば、皆、醜くなるのだ。だから光の乙女をよこせ。」
地獄の底から聞こえる声、というのはまさにこのような声なのだろう。
「ごめん被る。」
ルベールは決意した。
(何が何でもリリエルをこんな醜悪で邪悪なものには渡してならない。)
ルベールが強力な闇魔法で亀裂を抑え込み、全属性の水、火、土、風の全てを使って特殊鉱物を生成し亀裂の隙間を埋めていく。
だが敵も黙ってゲートを塞がれるつもりはないようだった。
ルベールはエルラールから言われていた。ルシファーは元は神に殊の外、愛された天使だった。それが神を越えようと邪な画策をし地獄に堕ちた。力は異常に強力。数億年前に地獄から出てきて封印されたパンドラの箱を開けようとし、ミカエルと戦って負け、永遠に地獄に封印されたはずだった。今回はアジズの裏切りで力を増幅し、ルシファー自らゲート前まで来れるようになった。更にルシファーは、他者を地獄へ引き摺り込むための尋常でない闇のパワーを持っている。だから時間をかけずにゲートを閉じろと。
ゲートを挟んで、地獄側からは隙間を広げようとする闇の邪悪なパワーが、人間側からは、闇を闇で抑え隙間を閉じる鉱物を作り出す、まさに凌ぎを削る綱引きのようだった。
その均衡の中に小さな緩みを見つけたのはルベールだった。
(いまだっ、たたみかけて押し込んでやる!)
ルベールは満身の魔力をかけて闇魔法をゲートの隙間に送り込んだ。これが固まればゲートは閉じる。
「やああああああああああっ、閉じろおおおおおおおおっ!!!」
「殿下、なりませんっ!!!」湖底からゲートに到着しかけていたエルラールが叫ぶ。
「。。。ぅ。。。。」
「全軍撤退、湖底にいるものは地上に戻れ、全軍一時撤退!地上の守護対象を保護し天界へ帰還せよ!!!」
※ ※ ※
ブーレ湖周辺と神殿の周りでは、空が真っ青になり小さな光が飛び交う。光と天使以外は動きがない。
「全軍撤退、白百合の乙女を天界へっ!」
「天使軍は撤退、王位継承者、及びウィンザーの中枢の者を保護せよっ!」
「ウリエル軍はウィンザー城へ迎え、全てを天界結界へ入れろっ!」
湖から大ジャンプで空中に飛び出してきたエルラールが怒号で指示を飛ばし、リリエルが入っている黄金の卵を脇に抱えて全速力で天空に向かう。
天軍の天使達が飛び回って、身動き出来ずに固まってしまった人間を小脇に抱えて天空へと飛び立っていく。
ブーレ湖の周辺は赤黒く染まり、ウィンザー世界は凍結された。
読んでいただきありがとうございます。明日21時ごろに投稿予定です。




