11話 ある少年の日記…*
短すぎて驚愕するかもしれません。視点がいつもと違います。
◯月△日
今日カークリード学園に入学することが決まった。この学園に入るのは将来のことを見据えてと父さんは言うけれど、今の家にそんな金どこにあるんだろう。うちは名前だけ有名の商家なのに…。初めて母さんと父さんが喧嘩するところを見た。弟と妹には聞かせないようにしたけど、怯えてた。僕が頑張らないと。
◯月々日
最近家の空気がピリピリしている。母さんは父さんと顔をあまり合わせようとしない。今日は新しい制服を作りにいった。制服ってなんであんなに高いんだろう…。母さんは無理して笑ってた。でも、制服があれば私服を買う必要がなくなるから随分と楽になる。
◯月◇日
今日もまた大げんかだ。ここのところ毎日怒鳴り声をきいている。学園に通わせる金なんかないって母さんはずっと父さんに言ってるのに父さんは分かってない。母さんは随分白髪が増えた。染めにいく金がないんだろうな。弟はまだ僕のおさがりがあるけど、妹には着れる服がない。ごめん、僕のせいで女の子なのにお洒落をさせてあげられない。
◯月☆日
母さんが泣いてた。初めてみた。『どこで間違えたんだろう…』って。ごめんなさい。ごめんなさい。僕はどうすれば良かった?どうすればいい?とりあえず学園で頑張るしかない。
今日は入学式だった。どいつもこいつもキラキラした目をしてた…。お金に困ったことなんてないんだろうな。
◯月@日
今日妹がこっそり僕に話してくれた。新しい筆箱が欲しいんだって。妹の筆箱はボロボロだった。気づいてやれなかった。もしかしてと思って弟のも見してもらったら、弟の筆箱もボロボロだった。いつからこんな我慢させてたんだろう。いや、ボロボロなのは筆箱だけじゃない。カバンも服も本当ならもう替え時なのに…。学園で食べる時に使えって僕には金をくれるから、その金を使って新しい筆箱を買った。僕のせいでたくさん我慢をさせている。
ごめん、ごめん、ごめんなさい。
◯月#日
頑張らないと。優秀にならないと。一年後には弟と妹にちゃんとした生活を送らせてあげるために。『人生をやり直したい。』父さんも母さんもよく言っている。僕がいる人生はそんなに2人を苦しめてるんだね。ごめんなさい。
◯月¥日
今日サングリア家のお嬢様が首を切ったらしい。学園も王宮も大騒ぎだった。僕が首を切ったら、少しはこの家はマシになるんだろうか。いや、そんなことしたら今まで僕にかけてきたお金が全部無駄になるから父さんと母さんは怒るだろうな…。
◯月$日
魔法が使えるようになった。
魔法って使わなくてもなんとなくどんな魔法か分かるってことを初めて知った。僕の魔法は物を瞬間移動させることができるらしい。今日実験してみて、一度触れた物を瞬間移動させることができることがわかった。××くんの消しゴムを一度触った後、離れた場所で念じたら僕の手の中に瞬間移動できていた。随分と僕の今の状況にぴったりな魔法だ。笑っちゃうな。新しい消しゴムは消しゴムがないって言ってた妹にあげた。
◯月€日
初めて人のお金を取った。僕の魔法が悲鳴を上げているのが分かる。魔法が『自分自身』ってやつ…こんな感覚なんだ。これは悪いことに使いたくなくなるな。でもさ、あいつらにとっては、はした金なんだよ。少しくらいなくなったって気づきもしない。そんな金で弟や妹が喜んでくれるなら本望だろ。
◯月〒日
家に帰りたくない。家にいると気が滅入る。父さんはずっと仕事をしているけど、なかなか上手くいかないらしい。母さんも店頭に出てるけど売行きは良くないって言ってた。こんな調子であと1年も持つのだろうか。それに僕が卒業して戻ってきたとして、どれほど立て直すことができるんだろう…。
◯月●日
今日初めてあんな近くで殿下と殿下の婚約者を見た。やっぱり僕にとっては雲の上の存在だ。何を言ってるかよくわからなかった。
最近、盗む額を少しずつ増やしてるけど、気づく様子はない。ばかだなぁ。その金で今日はステーキを食った。学園で一番高いメニューはすごく美味しかったけどこんなもんかって感じだった。もう食べようとは思わない。無駄な金を使ってしまった。
今日も僕の魔法は泣いている。




