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10話 ステーキが食べたい

短いです。申し訳ないです。次は頑張りたいです。m(_ _)m

「あれ?持ち金が減ってる気がする…。何かに使ったかな。」



「俺も昨日、財布の中少し減った気がしたんだよな…。」



「まぁ、なんか飲み物でも買ったんだろ。」



 昼休みの時間に食堂で男子生徒が話している。食堂の椅子に腰を下ろしていたヴィオラは後ろの席にいる男子生徒の話を盗み聞きしていた。その内容にヴィオラは事態が刻々と進んでることに気づく。


 ーーいつのまにかこんな時間が経ってたなんて…。


 ヴィオラが座っている席の丸テーブルには、右回りにヴィオラ、フィリア、アンドレア、ラルク、イーサンの順に座っていた。フィリアの土下座事件の後、授業中など5人で話すことが増え、最近はずっと5人揃って食べている。



「ヴィオラ様!今日は何を食べますか?ハンバーグが美味しそうですよ!」



「はは、フィリア嬢はいつもハンバーグだな。何度も言ってるが、ヴィオラ嬢にはナイフは持たせられないからハンバーグはダメなんだ。」



「ハンバーグが食べらないなんて…かわいそうです。殿下が食べさせてあければよろしいんじゃないですか?」



「それは……ダメだろ…。」



 アンドレアとフィリアは気安いやりとりをしているのをヴィオラは黙って聞いていた。日が過ぎるごとにアンドレアとフィリアが仲良くなっているように感じている。まだ甘い雰囲気は出ていないが、いつもならこの時点で次のループを検討している。それなのにヴィオラの懐に毒は入っていないし、足にナイフが付いていない。ままならない状況にヴィオラは機嫌が降下していく。


 ーーこんな長い時間このループにいるつもりはなかったのにっ!私はいつになったら死ねるの!?


 会話に入ってこないヴィオラに気づいたアンドレアが優しく話しかけた。



「ヴィオラ嬢は何を食べたい?」



「毒がいいです。」



「ダメに決まってるだろ!?」



 ヴィオラはアンドレアの否定の言葉を聞き終わる前に、席を立ち、さっさと食堂内でステーキを食べようとしている男子生徒を見つけると、人混みをすり抜け素早い動きで近づいていく。そして貴族の令嬢の仮面を被り優雅にお辞儀をした。



「ごきげんよう。」



「え、え…?はいどうも初めまし、て。」



「簡単に切れる柔らかそうな鴨肉ですわね。ついでに私の首も切っていただけると嬉しいのですけれど。」



「は、はぁ…。…え?」



「ちょっとそのナイフ貸していただけません?」



 どうかしら、と世間話のようににこやかな表情でヴィオラは提案する。しかし、ステーキを食べようとしていた少年は言われた内容が理解できず、固まってしまった。その間に追いついたアンドレアがヴィオラの腰を抱き寄せ、ヴィオラが逃げないように拘束すると「すまない、気にしないでくれ。」といつものように男子生徒に声をかけた。アンドレアは嫌がるヴィオラ連れて元の席に戻っていく。巻き込まれた男子生徒は、また痴話喧嘩に巻き込まれただけかと何事もなかったかのようにステーキを食べ始めた。



「貴女は本当に油断もスキもあったもんじゃないな!」



 ヴィオラを席に座らせてからアンドレアは声を上げた。しかし、ヴィオラはふてくされて言葉を発さない。その様子にイーサンは呆れたように笑った。



「しかし、ヴィオラ嬢も諦めませんね…。」



「あの中庭首切り事件と合わせて、26回目です。殿下の回収も慣れてきましたね。」



「嫌な慣れだ…。」



 アンドレアはラルクの言葉に心底嫌そうに応えた。最初の頃はアンドレアもいちいち照れながらヴィオラを拘束していたが、慣れた今では随分自然にできるようになっている。もちろんヴィオラも最初は恥ずかしさでどうにかなりそうだったが次第に慣れていった。「じゃあご飯を食べましょう!」とこれまたこの光景に慣れてしまったフィリアが進行した。



「あの人が食べてたステーキとても美味しそうでしたね!今日は奮発してステーキにしちゃいます!」



 フィリアはメニューを決めると学園で雇っている食堂のウエイトレスにメニューを伝えた。他のメンバーもそれに続いてそれぞれメニューを注文する。黙りを決め込むヴィオラの分も慣れたようにアンドレアが注文した。


 ーーまた、サンドウィッチじゃないですか!


 ヴィオラにはフォークもナイフも危険だと判断され、ランチにはいつもサンドウィッチが注文されている。ディナーはスプーンを使う料理が提供される。



「もうサンドウィッチは嫌です!!私もステーキが食べたいです!」



「じゃあ、死ぬことを諦めるか?」



「嫌です!」



「じゃあ諦めろ。」



 アンドレアはヴィオラに慈悲をかけない。馬鹿正直に言ってしまわなければいいのかもしれないが、ヴィオラはアンドレアに後ろめたいことはもうしたくはないため、嘘はつかない。そこへ先ほど注文した料理が運ばれてきた。フィリアの前にはこの食堂で一番高級な鴨肉のステーキが置かれた。ラルクとイーサンにはハンバーグが、アンドレアにはチキンのソテーがテーブルに置かれる。


 ヴィオラ以外の全員がこれ見よがしにナイフとフォークを使わないと食べれないものを注文していた。



「本当にいい性格してますねっ!みなさんっ!」



 ヴィオラの前にはみずみずしいレタスと国産豚のハムがはさんであるサンドウィッチが置かれた。このサンドウィッチ自体はとても美味しいものである。しかし、流石に毎日食べていれば、この食堂にある3種類のサンドウィッチを日ごとに変えようと飽きてしまう。不機嫌になりながらもしぶしぶサンドウィッチを食べるヴィオラを見て、イーサンが助け舟を出した。



  「…殿下。食べさせてあげればよろしいんじゃないですか?」



「そうですよ。」



  すかさず、ラルクもイーサンに同調した。ヴィオラはアンドレアの従者の擁護に、期待してアンドレアを見る。しかし、アンドレアは耳を赤くしながら却下した。



  「そんな恥ずかしいことできるわけないだろっ!」



  予想通りの反応をしたアンドレアにイーサンとラルクは満足して食事を再開する。彼らは最初っから、アンドレアの恥ずかしがる表情をみることが目的であった。ヴィオラに食べさせるなど恥ずかしがってできないことを分かってた2人の反応にヴィオラは怒りを覚えた。


 ーー次のループの最初の夜は絶対にステーキを食べてやるっ!


 そう深く決意したヴィオラであった。



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