↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/29

第一次接近遭遇



放課後。

体育館の二階ギャラリーに続くドアの前に晶は居た。

ドアを開ける様子は無く、またそこから立ち去る気配も無い。


〜 このノブにものすごい電流が通っていて握った途端感電して死ぬ…そんなんだったら迷わず帰るのだけど…


心の中でボヤく晶は、ギャラリーへ行くか行かないのかでずっと考えていた。


バスケ部には近づかない、そう学校に誓ったものの、壁の向こうから聞こえるボールの弾む音、響く音が耳を触る度にもどかしい思いが湧いてくる。

何より晶は加藤に会いたかった。会って報告したい事があった。復学の初日に身体は悪くなってないと言えた、が、先日の病院での検査結果で遂に目に見える形で腎臓の数値が下がり始めたのを確認出来て、晶は何よりも加藤に報告をしたかったのだ。


高校二年の夏に突然発症した腎臓病。いつ治るか分からないと告げられあっさり幕を閉じたバスケ人生。失意の中で招いた左膝の重症。怪我だけでも治そうと本格的なリハビリをしようにも、負担を掛ければすぐに熱が出る為結局ただ安静に過ごす日々。

約三年間、葛藤の日々。それがもうすぐ終わる。


カラダは悪くなってない、から、良くなりました。

たった一言、それだけを伝えたかった。


「…」

ちょっとだけ開けてみよう。

ちょっと覗いてギャラリーに居れば、一言挨拶して帰ろう。

もしコートに出ていたらその時は姿だけ見て帰ろう。


決意を決めた晶は扉に手を触れる…手前。


彼女の背後から頭と同じ位大きな手が耳をすり抜け、“ バンッ ” と音を立てて触れた。


「!」


触れたというより叩いたの方が正解だろう。

不意を突かれ予想だにしない音に晶は背中ごと固まった。


「…」

何⁉︎ 誰⁉︎


固まる晶は、肩を窄め両手をグッと握り胸に手を当てながらビクビクと振り返る。

「三原晶先輩っすよね。どうしたんすか?バスケ部でも見学っすかね」

振り返った途端、晶の背をゆうに超す身長の男子生徒はヌッと顔を晶に近付ける。

身長に比例して顔も大きく、それが余計な迫力を与え、晶は声も出ず更に肩を窄め固まる。


「あれれ?その反応ひょっとして俺の事覚えてない系とか?」

「…」

「んん?俺ですよ?一年前にスーパールーキーで入部した郷内っすよ。キラキラネームの郷内スバル」

「し、知らない」

「おぉ、マジかよぉ。マジで言ってんすか。俺あんなにアピールしたのにショックだなぁ。じゃなんだ、俺に会いに来たんじゃないんだ」

「…」

「それとも…加藤のオッサンに会いたいとか?」

郷内はポケットから携帯を出すと、画面に晶と加藤が写った写真を見せ付けた。

「!」

「まさかあんたと加藤がデキてるってびっくりしたわ。ダメっすよ?在学中に付き合うならもっとコッソリしないと。てっきり卒業したから堂々付き合ってるのかと思ったらまだ学校に残ってるから、みんな鵜の目鷹の目で見てるんすよ、先輩の事」

「…」

「おっと。勘違いしないでくださいよ?これ晒したの俺じゃないっすからね?晒す奴もアホだよね、もっと有効な使い方あるのにさ」

「…」

「いやぁ、やっと謎解けたわ。なんで去年あんなまともに動けない先輩が試合出てたか。既にあん時にはデキてたんでしょ?そりゃ加藤も可愛いあんたを出してヤりたいもんな」

「…」

「大変だったんすよ、あの試合。三年の最後の試合だからって無理やり応援狩り出されて、あんな泥臭え試合見せられて、男共ってゆうか和久井君なんかボロボロ泣いてさぁ…それなのに俺の事覚えてないって、さすがサイボーグ先輩っすね」

「…あのさ」

「?」

「その手、退けてくれないかな?あと、あなたからタバコの匂いがします。あなたが何歳か知らないけど在校生の喫煙は校則違反です」

「おっと。きぃびしい、わんこ先輩並に厳しいねぇ」

「あなたが誰かは知らないけど、私を先輩と呼ぶなら目上の人間に対する態度じゃないですけどね」

「なるほど、そりゃそうだ。別に俺、あんたの事を尊敬してる訳でもないしな。じゃ晶ちゃんって呼びますよ。で、聞いてないすか?和久井君あたりから俺の事?同じクラスでしょ、てっきりあんたに泣き付いてるのかと」

「?」

「朝練のコーチ、してくれるんでしょ?」

「!」

「あぁすんません、たまたまわんこ先輩と晶ちゃんが話してたの聞いちゃったんで。あ、ひょっとしてこれ、オフレコでした?」

「…」

「いつから来てくれるんすか?俺が華麗に和久井君の上からダンク叩き込む姿見せてあげたいなぁ」

「…どうでもいいけど、私はコーチなんて興味ない」

「へぇ、興味ないと。でも…聞きたくないすか?なんでわんこ先輩があんたにそんな話持ってきたのか」

「…帰ります」

「まぁまぁ、そう言わずに。オッサンにも会いたいでしょ?扉《そこ》開けりゃ居ますよ」


“ ! ”


「やめてよ!」


郷内がノブに手を掛けた瞬間、逆に晶はバンッと扉を叩く。が、触れる瞬間その手首を郷内が強く捕まえた。


「痛いんだけど。離してくれないかな」

「ヤダって言ったら?」

「!」


晶は一瞬感情が昂ぶった。

杖を突くこの左手で張り倒してやりたいとその握る手も強くなる。

その時だった。


「郷内!」


晶達の後方から怒鳴り声。

湊だった。


「お?」

「和久井君」


いつにもない厳しい表情の湊がツカツカと歩み寄る。


「何してんだよ、先輩嫌がってんだろ」

最初こそ荒らげた声だが、湊はすぐに冷静に戻る。

晶の腕を握る手を離そうと伸ばすと、郷内は途端にパッと離した。


「はーい、離しましたよ。ねぇ、晶ちゃん先輩」

郷内はいつにもなくご機嫌、というより半分からかう感じで声のトーンが上がる。

「…」

「ちょっとキャプテン。顔怖いって、ね。何にもしてないでしょ」

「…」

何もしてないって、充分したでしょ!

晶はギロっと睨んだ。


「だぁから、ちょっと晶ちゃん先輩に色々質問しただけだから、ね?別に文句ないっしょ?文句あるならバスケで勝負しましょうよ、俺らスポーツマンなんだから」


「…」


「バスケでさ、ね」


郷内はニヤニヤしながらも何か湊に念を押す様な口ぶりを見せる。


「…とっくに練習始まってんぞ。サボるつもりが無いならさっさと下に降りて合流しろよ」

「へいへい。分かりましたよ、行きますよ。じゃ、先輩またね。これで俺の事覚えたでしょ?キラキラネームの郷内スーちゃんすよ、こんなだせぇ名前で親恨んでます 笑」

「…」

晶は郷内と目を合わせる事無く彼が消えるまでそっぽを向いていた。


郷内が居なくなったのを確認して数秒、その時、晶は急に力が抜けて腰から砕け落ちそうになる。

しかしその手前で湊は晶の背中を抱えた。


「!」

思わず手が伸びたとはいえベストから伝わる晶の体温が伝わると、湊はドキっと心を奪われた。

「す、すんません、つい」

湊は謝ってしまう。

「あっ、ううん…ありがとう」

湊がドキっとしたのと同時にそれは晶も同じだった。


「あの、もう大丈夫だよ」

「あ、は、はい、すんません」

そのまま腰を下ろした晶に触れたままだった湊は慌てて手を離した。


湊はそのまま立ったまま晶の隣で壁にもたれる。

するとさっきまでの熱が途端に冷えた様に急に二人とも無言になった。お互い何をどう話せばいいのか、心ではあれこれ言いたいがそれを口に出せず困ってる。

先に切り出したのは晶だった。


「ありがとう」

「先輩?」

「和久井君が来てくれなかったらすごく困ってたと思う」

「いえ、こっちこそ郷内の馬鹿が迷惑掛けてすんません」

「…」

考え込む晶。

「何か?」

「うん?あぁ、うん。あの人やっぱりバスケ部だったんだね」

湊は一瞬耳を疑る。

「え⁉︎ 覚えてないんすか?」

湊は郷内が入部したての去年を思い出していた。1年の時から上背もあり体格もがっちりしていた、それに比例してなのか態度も大きくたとえ上級生でも物怖じしない。バスケの腕も相当なものだった為、何か正面切って彼の素行の悪さを注意出来る者は居なかった。

その悪さは晶達三年の女子達にも影響が及ぶ程で、男子部と女子部は活動が別でも普通に女子部のコートに足を運んではナンパをしていた。晶もその一人だったが彼女は全く耳を貸さなかった。一切感情も表に出してなかったため偶然にも付いたあだ名が『サイボーグ先輩』だが、この時入部してた当時の1年生らは晶が何故サイボーグなのかはイマイチ合致がしない。晶がサイボーグと呼ばれてたのは病で倒れる前の話しで、3年の頃には不気味にも心を開いて部員達へのアドバイスなんかもしていたからだ。


そして郷内の記憶が欠けている晶に対し湊はなんだか少し安堵な気持ちに覆われた。


先輩らしいな。

という気持ちと、真剣に告白してふられた自分が忘れられていて、チャラチャラした郷内が彼女の脳内に残っているならさすがに浮かばれない気持ちが交差していたからだ。


「あ、あの…」

湊は郷内の記憶を取り出そうとする晶に割り込んだ。

「?」

「郷内の奴、なんか俺の事言ってませんでしたか?」


晶は郷内が言ってた言葉を思い出す。

真っ先に浮かんだのは朝練のコーチの件だが複雑な表情の湊を見て、別の事も出てくる。


てっきり和久井君があんたに泣き付いたんじゃないかって。


和久井君の上からダンク叩き込む姿をあんたに見せてやりたい。


知りたくないすか?なんでわんこ先輩があんたにそんな話持ち込んだか。


「…わんこが私に朝練のコーチを頼みに来たのを彼がどっかで盗み聞きしてたみたいで、いつから来るのかってしつこく」

「そうだったんすか、他は?」

「他?」

「あ、いえすんません。尋問するみたいで」

「ううん、別に」

「そうっすか」

「…」


やっぱり何かあったんだ、この二人。

相談乗れるなら乗ってあげたいが湊の表情から余計な事は言わない方が良いと晶は悟った。


「先輩、もしそのあれなら、保健室で休まれた方がいいんじゃないすか?」

「大丈夫だよ。後で教室戻ってすぐ帰るから。和久井君こそ練習は?」

「俺は問題無いっすよ。南海さんにメニューの確認報告するだけなんで」

「だったら早く南海先生の所に行かなきゃダメだよ」

「いやでも先輩…」

「私なら大丈夫。次郷内君が来たら防犯ベル鳴らすから」

「そうっすか…分かりました、じゃあ俺はこれで」

「うん」


晶が小さく手を振る仕草にドキっとしながらも名残惜しそうに湊は、この場から立ち去った。


一人になった晶は余計疲れが増し、しばらくの間はため息つきながら無意味に携帯をいじって気を紛らわせる。

自分の知らない所でバスケ部は何か大きく動き始めてる、ひょっとしたら自分はその渦に巻き込まれ始めてるのかも、と感じずにはいられないのだった。



〜…


2


その夜の出来事だった。

帰宅して自分の部屋に籠る湊の携帯に


『このアホ!!!』


と、痛烈な返信が届く。


送り主は珠代だ。


続けざまに【中指を立てるポーズ】【その中指で鼻を掘るポーズ】【あっかんべー】といった下品なスタンプが追加された。


これには湊も呆れて、


『おい!いくらなんでも人に送るスタンプじゃねぇだろ!』


と、すぐさま珠代に携帯を打ち返す。

だが珠代はものの1,2秒で打ち返してきた。


『あたしだってこんなスタンプ使うのお前が初めてだ、バーカ!』


湊には珠代が携帯の向こうで激昂してるのは理解したが、何故にそこまでキレているのかまでは判別しかねていた。なので怒らせるのは覚悟の上で携帯を打った。


『前にも言っただろ、俺は郷内とお前を取り持つのは難しいって。現に今日だって三原先輩に絡んだんだぞ。俺が行かなかったら先輩はヤバイ事になったかも知れないのに』


湊は改めて郷内は好かないと告げる。だが珠代の激怒の的は違っていた。


『違う!そこじゃない』


「?」

そこじゃないってどこだよ。


湊は考え込む。

その差中、また珠代から届く。


『なんで晶ちゃんを一人にさせたんだよ!』


「 ⁉︎ 」

先輩を⁉︎

いやなんでって言われても…


『先輩が一人で大丈夫って言ったし俺も練習あったから』


『はあ⁉︎ せっかく二人きりになれたチャンスを何逃してんだよ!』


『チャンスも何も先輩が一人になりたいって言ったんだぞ。俺が先輩だったら一人になりたい時に他の奴には居てほしくねえよ』


『あんたの気持ちなんてどうでも良いんだ、アホ!もしその後一人になった晶ちゃんの身に何かあったらどうするの!』


『郷内の奴ならちゃんと見張ったし心配ないぜ』


『だから!郷ちゃんじゃなくても晶ちゃんを狙ってる男子はいるだろ?晶ちゃんがそのまま倒れ込む可能性もあるし』


『それはねえよ。部活終わってから一応校内で先輩が居そうな箇所見たけど居なかったから無事帰った筈だぜ』


珠代から【深いため息をつくスタンプ】が配信される。


『呆れたわ、あんた』

『何がだよ、間違った事したか?』


湊の答えに間髪入れず送り続けた珠代だがここに来て返信は滞る。

多分そこに珠代の怒りがあるのだと湊は感じた。

珠代から届いたのは5分ほどしてだが湊にはそれが途方も無い時に感じた。


『ちょっと強引でも腰抜けた晶ちゃんを担いで保健室運ぶとか出来ないのか?』

『それなら俺もそう言ったぞ。でも先輩は大丈夫って言ったから』

『そこが駄目なんだよ!』

『いやだけどな、むやみやたらに触るなんて出来ないって』


湊は携帯を打つ最中一瞬晶を支えた背中の感触を思い出す。


『…なんか分かったわ。なんであんたは今まで彼女が1人も出来なくて、郷ちゃんはモテてるのか』


『ふざけんな。俺は郷内みたいなタラし野郎じゃねえ!』


『そうじゃなくて。女の子はあんたの脳みそとは違うの。ちょっと強引でも優しく手を差し伸べて導いてくれる男の子の方が好きになるんだよ。せっかくのチャンスだったのに。ホントあんたはイケメンの無駄使い』


「…」

湊は言葉を失った。

珠代の返信が理解出来つつも、ちょっと待てと言いたいのの狭間で揺れた。


もし晶が珠代の言う心の内ならまだしも、もしも本当に一人で落ち着きたいのに自分がしつこく居座ったらどうなるのか。それこそ自分が嫌いな郷内と同じではないのか、と彼は主張したかった。


『お前の言いたい事は分かった。でもそれを俺が出来るかどうかは別だろ?』


そりゃ俺だって…抱き締められるもんなら…


湊は両手を見ながら晶を支えた背中の感触を思い出す。


『もういいよ。一応あんたの為に言っとくけどちっとはマニュアル本の一冊でも読んだ方がいいんじゃない?』


珠代はこの一通を最後に今夜は通信が途絶えた。


始めは、なんだよこいつ、と舌打ちしたが時間が経つと少しだけ珠代の言い分も理解出来た気になった。



〜…


3


湊と珠代が携帯メールで応酬をしてた頃、晶も同じ様に携帯と睨みあっていた。


放課後の郷内との遭遇を思い出す度にイライラし、二度と絡みたくないと考えながらもバスケ部である彼が何者なのか記憶に無い自分にも腹立たしかった。


『だから、茶髪でちょっとウェーブ掛かった二年生!上背かなりあって蛇みたいな目つき悪いナルシスト!知らない?』


メールは親友の美魚と凜里花に送信した。


『知らねーw ミハルのストーカーか?』


「 ! 」


美魚からすぐ返ってくるものの、からかい半分の内容に晶はイライラが募って携帯を力いっぱい投げつけそうになった。が、思いとどまり力いっぱいでは無くベッドの横にポイっと放った。


「何こいつ!ホントに役に立たないデカ女め!もうこいつには二度と相談しない」


晶が放った携帯に、ベーッと悪態つく差中今度は凜里花から届いた。


『郷内君なら覚えてるわよ。当時の1年生の中ではズバ抜けて上手かったわね。確かお父さんがアメリカの軍人でハーフだったのかな』


晶は凜里花からの返信に、そうそう、それ!と言いたい表情になる。


「さすがサトちゃん。乳だけ成長したバカ女とは全然違う」

晶は笑顔になって打っていく。


『そう、それ!確か下の名前がスバルって言ってて兎に角失礼な奴だった』


『中学での実績は無いからウチには一般入試だったみたいだけど、なんか幼い頃から軍の施設で軍人さん相手にバスケしてたって聞いたわ。プレイもアメリカ的っていうか、隙見せたらどんどん上から叩いてくる強引な印象があったかな』


『…うん。なんかそんな雰囲気はあった。和久井君とかにも失礼だったし。ってゆうか彼が来てくれなかったらホントに大変だった』


『へぇー ( ̄▽ ̄) 和久井の旦那に助けてもらったんか、へぇー』


「 ⁉︎ 」


思わぬ美魚のカットインで晶はドキっとした。


『うっさいなミワ公!ちっとも情報よこさないクセに余計な事ばっか!』


『 ( ̄▽ ̄) 』

『その顔やめろ!』

『それよりミハル、あんた本当に覚えてないの?』

『ん?』

『郷内君、入部したての頃結構しつこくミハルに声掛けてたわよ。まぁあんたはずっと無視してたけど』


⁉︎

晶はハッとする。そして放課後に郷内が自分を知ってる様な口だったのを思い出した。


『知らない』


何度も掘り返すも郷内の記憶は綺麗に無い。いかに自分が異性に興味ないか改めて晶は知る。


『あ、思い出した。そいつチャラ髪だろ。だせぇパーマ掛けて女のケツ追い掛けてた奴。確かミハルをマネージャーと勘違いしてナメた態度とってたな、つうか、サトにも随分しつこかったんだぜ』


『ムッ!私のサトちゃんに⁉︎ ミワ公!ちゃんと守ったんだろうな』


『ってゆうよりミワちゃんにもしつこかったわよね、彼』


⁉︎

少しづつ明らかになっていく郷内の生態。ナルシストで女癖がひどい、晶の中で最も彼は嫌いな位置にランクインしていた。

「むっ、ミワ公にも?乳さえデカけりゃなんでも良いのか?」


『クククっ。一度キレたら声掛けてこなくなったけどねw つうか、インハイ前に殺気だってる三年にナンパしてくる度胸は認めてやるけど』


『ミハルが覚えてないのが意外ってゆうか流石よね』

『お嬢様は鉄のハートを持つサイボーグだからな』


「『だからお嬢様はやめろ、サイボーグもやめろ!』」


スマホを打ちながら同時に叫ぶ晶。

その時だった。


♪ ♪ ♪


手元が着信音と共にバイブで震え出す。


チャットでは無く電話で相手は真琴の名前が液晶画面に浮かび出る。


“ わんこ…?なんだろ ”


『ごめん。電話かかってきたから一旦切るね、色々ありがと』

晶は素早く打ち込み、二人も『オケ』『りょうかーい』と返り電話に切り替えた。


「もしもし。わんこ?どうしたの」

『先輩、すいません。突然電話して』

真琴の声は何か慌ててる様にもとれた。

「いいよ、それより何?言っとくけど朝練の件は…」

『いえそうではなくて』

電話口の真琴は少し口どもる。何か慌てつつも自分に伝え辛い、そんな状況の様な感じだ。

晶は少し考え、答え易そうに導いてみる。

「ん?私が何かしたかな?」

『あの、実は…』

「…」

『今さっき私も見たばかりでなんとも言えないのですが…』

真琴は本当に言い辛そうだった。

「ん?」

晶も只事ではないな、感じ出す。そしてその予感は当たる。


『先輩の写真がまたSNSに投稿されてまして』


「え… ⁉︎ 」


晶は一瞬固まった。


自分の写真がまたSNSに流された。ゴールデンウィークの加藤との写真がまた嫌がらせの如く、しつこくUPされた。最初はそう思ったのだが、真琴から確認するよう急かされて自ら拝見するとゴールデンウィークの写真とは全く違う物がそこに掲載されていた。


それを見るなり晶は言葉を失い、なんで?という気持ちと共に部屋を一面キョロキョロと見始める。


自分は監視されているのではないか?そんな気持ちが芽生えると一気に胃を突き上げる吐き気に襲われる。

そんな時に限って美魚の冗談のレスのストーカーかよwという言葉が蘇る。


この写真を上げた者は、明らかに私を見てる…悪意の目で…


そう考えるだけで、今にでも布団の中に潜ってもう外には出たくない。

この写真を上げた者が単にふざけているだけには思えない。


晶は自分がどうすれば良いのか、全く思考は停止してただただ茫然自失と震えだけが沸くばかりだった。





次回

『弱くてもいい!』(仮)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。