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師匠は本を開きあるページに視線を落とすとある一文を指差した。

私は本を覗き込みその一文を読む。


「『精霊に愛されし者以外はこの本を読むことはできない。私は今後生まれてくる同胞のためこの本を残す。』」

「ここに書かれているようにこの本は精霊に愛されたもの以外はみることが出来ない様に術が施してある。次のページから私たち以外には何も書かれていないようにみえるらしい。このような本があと数冊ある。」

「この本はどうやって入手したのですか?随分古いものですし、精霊術が盛んだったときのもの…ですか?」


私の問いに師匠は軽く首を振る。


「いや、廃れる寸前に書き残していったものだろうな。この本は代々王家が保管し、銀髪の者が生まれるとその者に貸出ている。」


そういながら師匠は次のページを開いた。真っ白なページだったはずのそこに次々と文字が浮かび上がる。

私はその光景に目を奪われた。


「すごい…」


師匠はページの先頭部分を指差す。


「まず、基本的なことだが、精霊と契約するには精霊に取り込まれないような精神力と魔力コントロールが必要だ。その後魔力を目に集中させ精霊がみえるようになったら契約の儀式を行う。…だいたい3年…くらいか。」

「え!?すぐに精霊と契約出来るのではないのですか?」


てっきり簡単に契約できるものだと思っていたのに…

私が不服そうにしていると呆れたような師匠の声がかかる。


「いくら愛された存在だとしても、精霊は強大な力をもつものだ。柔半かな精神力ではその力に取り込まれ暴走する。それに、コントロール出来なくては術を使うことは出来ない。何より君は今、精霊をみることができているか?」


   ―――見えていなと契約出来ないぞ。


そう言われて私は周囲を見渡し、項垂れた。


「…みえません。というより、精霊はここにいるのですか?」

「いるぞ。さっきから周りを飛び回っている。銀髪をもつ者が2人いるからか、いつもよりおおいな。」


 師匠には精霊がみえているらしい。精霊がみえている世界はどんなものなのか早く見たい。


「…凹んでても仕方ないですね。ちなみに、師匠はどれくらいで契約したのですか?」

「私か?私は1年ほどだったかな。ちなみに、君のように師などいなかったから独学だったがな。」


 …確かに、精霊術を扱える者がいないなら独学しかない。それにしても、チート羨ましい限りである。


「それで、まずは君に精霊術の基本的なことを教えた後は、精神統一や魔術、魔力コントロールなどを重点的に教えていく。」

「はい。わかりました。」

「では―――」





 ―――師匠が言うには、精霊には4大精霊と言われる火水風土の精霊と光闇精霊が存在している。魔術と精霊術…この二つは元をたどればどちらも『精霊』と関わっている。遥か昔、精霊術と魔術が共存していた時代より前、精霊術はあっても魔術は存在しなかった。ある時精霊が気まぐれに銀髪でない人間達に与えた魔力から人間が独自に術式を構築していき出来たものだという。その人間達が子を産みその子に魔力が宿るそれが繰り返していき『魔術』が出来た。ただ、精霊術師のように彼らに愛された存在ではなかったため身体に馴染む属性のものしか定着しなかった。そして、闇精霊だけは誰一人として馴染むことがてきなかった。


 闇精霊の力は相手を欺く力や記憶消去の力をもつ。ただし、記憶消去の力は精霊術師にも負担がかかりすぎるためよほどのことがない限り使わないとのこと。また、魔術が精霊の力から派生したもの故に、魔力保留量が多く精霊術師は魔術も扱える。しかも、全ての属性が扱えるらしい。また、精霊術には術式を唱えることは不要。


 …精霊術師達は魔術師達を受け入れ精霊術と魔術両方が栄えた。しかし、時が経つにつれ魔術が広がりをみせると、魔術師達は精霊術師を嫌悪し始めた。おそらく、強大な魔術保留量と全ての属性が使えるということ、何より闇精霊の力を使えることに恐怖しだしたのだろうと…




 説明しおわると師匠は私に質問がないか聞いてきた。私はいくつか疑問に思ったことを聞く。


「呪文は唱えなくていいとおっしゃられましたが、それはどうしてですか?それと、欺くというのは、この結界に使わられているものですよね?」


「契約した者は力を使いたいとき頭の中でそれぞれの属性に語りかける。そして、魔力を精霊に流し込めば発動する。君が言ったようにこの結界に使われている一つは闇精霊ものだ。この結界は魔術結界に精霊術を組み込んだもので、私が独自に開発した術式だとさっき言っただろう?完全な精霊術ではないから呪文を唱える必要もある。」

「なるほど…」

「私たちは精霊術師であることを知られてはならない。だが、そうすれば人前で堂々と精霊の力は使えない。だから私は魔術に精霊術を付属させ使うという手段をとっている。」

「…ですが、それでも通常の魔術とは力の差が歴然で不審に思われるのではないのですか?」


 いくら付属させて呪文を唱えるからといって不審に思われるのではないか…私がそう眉を八の字にして聞くと、


「ふっ」


――鼻で笑われた。


「何故鼻で笑うのですか!私の疑問は当然のものでしょう!?」


 アリィ様以外のことでは基本穏やかな私だがこれはいただけない。なぜ鼻で笑われなければならないのか…机に両手をつき身を乗り出しながら怒れば…また鼻で笑われた。ひどい。


「私は希代の天才と言われている魔術師だぞ?しかも公爵子息。魔術に明るくない者は私がつくったと言えばそれで納得する。うるさい連中は叩き潰している。だから大丈夫だ。」

「………」


 それは大丈夫というのだろうか…叩き潰したとは一体…いや、深く考えてはいけない。うん、そういうものだと思っておこう…


私は息を吐き佇まいをなおし師匠を真っ直ぐ見た。


「えっと、分かりました。では、もう一つ…養父様がおっしゃっていた私たちの髪を知るものの中に…私の実の両親の者はいませんでした。それは、師匠が記憶消去をしたからですか?」


養父様が教えてくれて時からの疑問を師匠にぶつける。

師匠はゆっくり目を閉じ頷いた。


「ああ。」

「…そうですか…その力は負担が大きいとおっしゃっていましたが、大丈夫なのですか?」


 私が心配気な声で気遣うと、師匠は眉間にシワをさらに寄せる。


「何だ?実の両親の心配より私の心配か…?負担なら…もう大丈夫だ。」


『もう』ということはやはり体調でも崩していたのだろう。

私が微笑むと、師匠はさらにシワを寄せる。そんなにシワを寄せて大丈夫なのだろうか?


「別に死んだわけではないのでしょう?もともと家族とはうまくいっていませんでしたし、私は師匠の体調と今後、彼らがアディンゼル家に迷惑をかけないか、アリィ様に危害が及ばないか心配だっただけです。…師匠、ありがとうございました。」


私は師匠に頭をさげ礼を言う。

顔をあげれば、彼は何故か苦虫を噛み潰したような顔をしていた。


「礼を言うほどのことでもないだろう。」

「そんなことありませっ…!?」


私が反論しようと体をまえのめりにして声をあげると、全ていい終わる前に頭を抑え込まれた。

痛くはないが地味にしんどい。

…照れてるのだろうか?

…それにしても、師匠、私たちはまだ出会って間もないのに随分扱いがぞんざいではないでしょうか?いえ、私が言えたぎりではないのですが…


「し、しょ、う。手をどけてください!」

「君がくだらないことをいうからだ。いいか?もう何も言うな。」

「は、はい。」


 師匠は手を離してくれたので私は乱れた髪を手でなおしながら椅子に座り直した。

師匠はいまだ苦虫を噛み潰した顔のままだ。


「もう質問はないな?」

「あ!えっと!」

「なんだ?」

「えっと…質問ではないのですが…あの…か、髪を…本来の髪色を見せていただけないでしょうか?」

「はっ?」


ちょっと勇気を出して聞いてみた。実を言うと、自分以外に銀髪の者がいると聞いた時から、みてみたいと思っていた。

師匠をみてみると燻しがるように私をみていた。


「理由はなんだ?」


私は師匠から視線を外し頬に手を当て、顔が熱くのるのを感じながらみたい理由を言う。


「アリィ様が私のこと…いえ、髪を綺麗だと言ってくださるのです。そのおかげで、この髪はかけがえないものになりました。…ですが、どうも髪だと言っても自分のことを綺麗だとは…その…いえアリィ様の言葉は信じてますが…なので、私ではない誰かの銀髪をみたくて…」


 ちょっと早口だったがちゃんと理由を言って、師匠の方に視線を戻すと…


眉間にシワを寄せ呆れたような顔をした師匠が、


「君は本当に…アリアーヌ嬢が好きなのだな…。」


 ―――そう呟いた。


その言葉を聞いて、私はまた身を乗り出し輝かんばかりの顔をした。


「はい!もちろんです!アリィ様は「まて」」


 私がアリィ様のことを言う前に、師匠は私の顔の前に手を出し続きを言うのを制した。


「どうしたのですか?」

「君がアリアーヌ嬢のことを話すと長くなるのは先程のことでわかっている。…この結界の中なら特に問題ないからみせよう。だからこれ以上彼女のことははなすな?いいな?」

「…わかりました。」


ちょっの不服であったがみせてもらえるのだ。ここは大人しくひこう。


私がひくと師匠は身につけていたブレスレットをはずす。

外した瞬間、藍色の髪が銀髪へと変わった。




「…綺麗…」





藍色の髪も似合っていたが、それ以上に銀髪は師匠に似合っていた。

銀髪は風にゆられなびかせ、日の光に反射してキラキラしてとても幻想的で…


私が見惚れていると師匠が声をかける。


「もういいか?」

「はい…。ありがとうございます。」


私がお礼を言うと師匠はブレスレットをつけ、また藍色の髪になっていった。


「銀髪…綺麗ですね…。」

「君も私と同じ色だろう?…それで、これで君は自分の髪を綺麗だと確信がもてたということか?」

「…!?」


一気に顔を熱が集まり、火照った頬に両手で包むようにして師匠を上目遣いでみつめた。


「……はい。」

(わざわざ言わなくてもいいじゃないですか!)


自分からお願いしたことといえ、中々に恥ずかしい。

師匠はそんな私をしばし観察するようにみていたがため息を一つはくと、指で机をたたき私に本の方をみるように促した。

「まだ時間があるから続きをはじめるぞ。」

「…お願いします。」




**********





「今日はこの位にしよう。この本は君に渡しておく。次の時間までに復習しておけ。」

「え!いいのですか?」

「許可はもらっている。」


そう言って私に本を渡してくれた。その本を両手で抱えるようにもつ。

師匠は机や椅子をたたみまとめておくと結界をといた。


私は師匠の隣にいき微笑む。


「師匠。今日はありがとうございました。これこらよろしくお願いします。」



その言葉に、師匠は微笑んだ。


師匠は微笑んだ…


師 匠 は 微 笑 ん だ


『理想の魔術師様』で…


「こちらこそありがとうございました。あなたのような優秀な方を教えられることに喜びを感じます。これから一緒に頑張りましょうね。」


「は、はい。」


 どうやら結界からでればその場に他の人がいなくても猫を被るらしい。凄まじい根性だ。

そして、師匠は猫を被ったまま帰っていった。


  ――――師匠…うん、尊敬してます…引いてなんかいません…













エジット・ビュンレ(20)

銀髪に金色の瞳(普段は藍色の髪)

精霊術師。宮廷魔術師のトップでレイティアの師匠。

普段は猫をかぶり『理想の魔術師様』と呼ばれ常に微笑えみをうかべている。

9歳の婚約者がいる。ロリk(((



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