二日目〜裏
ポリアには主人がいる。
主人の性格は陽気、溌剌、頑固、口達者。好きなことには気が長い方だが、興味のないことには飽きっぽい。
庭の犬をよく撫で回し、トゥニカを汚すので洗濯女はいつも眉をひそめているものの、元来明るく使用人にもわがままを言わずよく声をかけてくれるので、なんだかんだとみんなこの主人が好きだ。
ポリアは髪を結うのが得意で、よく宴会の身支度を任される。結婚し子供ができたときに働きに出るのをやめていたのだが、その腕を買われ宴会のある時だけ通いででも、と引き留められ仕事を続けている。
今日もポリアは通いでやってきた。
「お見合いなので、清楚に仕上げてくれ」と言われたが、あのお嬢様に何の皮をかぶせれば清楚になるというのか。それならばもう少し給金を上げてもらってもいいくらいだ。
裏口の門をくぐり、中庭を抜けると、ふと黒い固まりが目にはいった。
すわ、熊か?と目をこすりよく見ると、それは黒い犬と若い女だった。
「お嬢様!!」
ポリアの叫びに一人と1頭が振り向く。
「お嬢様!!なんてこと!トゥニカが犬の毛で真っ黒じゃありませんか!おまけによだれで髪も服もベトベト!どうなさるのです!」
今からテルマエに行っても間に合わない。ポリアは濡れた布を用意させ、主人の身を急いで清めた。新しいトゥニカを着せ、黄金色のパッラをまとわせる。
茶色の巻き髪は流行りのギリシア風にまとめることにした。
なんとか清楚な女性「風」に整えたところ、外から声がかかる。
「支度はどうだ?」
間に合った!
「たいへんお美しくていらっしゃいます」
ポリアは答えた。
今日も彼女は無事、自らの務めを果たしたのだ。




