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3話 冒険者の町ランパート

王都を離れた秋は冒険者の町ランパートを目指すことにした。


どうやら街道を大きく外れなければ迷うことはないらしい。

街灯が等間隔で配置してあるおかげで夜の間も進むことができた。


月明かりが照らしてる。緊張しっぱなしだった異世界での一日が終わった。

身体が軽くなるのを感じる。元の世界でも秋はこの時間だけが心が休まる時間だった。


太陽が真上にくる前にランパートに着くことができた。

町へ入るのに通行料や身分を証明するものは必要なく、名前を聞かれそれを見張りが書き込むだけだった。


これはあらかじめフォーガルに聞いたとおりだった。

ランパートが冒険者の町と言われる理由の一つらしい。

冒険者には誰にでもなれる。身寄りのないものでも、お尋ね者だろうと、孤児だろうと

むしろそういうものほど冒険者として名を上げていった。そういう歴史がランパートが冒険者の町と

呼ばれようになった由縁らしい。


門の見張りに冒険者ギルドの場所を聞くとひと際目立つ建物を指さされた。

いかにも異世界って感じのヨーロッパのような街並みに秋は感動しながら、冒険者ギルドに入った。


「すみません、冒険者登録をしたいんですけど」

そう受付に尋ねると一枚の紙とペンを差し出された。


「冒険者登録ですね。こちらにご記入おねがいします。」


紙には見知らぬ文字が書かれており困惑していると


「文字が書けなければ代筆させていただきます」


そう受付が笑顔で提案してくれた。冒険者の識字率はそれほど高くないらしい。

お願いすることにした。


「冒険者登録をする前に簡単に説明いたしましょうか?」


早くも秋はランパートが好きになれそうだ。なんてできた受付なのだろう。容姿もとても整ってる。

もしかしてギルドの受付はけっこうエリートな職業なのかもしれない。


異世界で不安いっぱいの秋は受付のやさしさに感動した


「お願いします。」


「それではこのギルドの受付、マリアがご案内いたしますね」


そういって一室に通された。


まず冒険者という存在についてだ。基本は漫画やアニメの冒険者と変わらないが、驚いたのは

強くなるためになにより重要視されるの『英雄性』なのだそうだ。

レベルや経験値という概念ではなく、人に語り継がれるような結果を残すことで『格』があがり、

強靭な肉体や力を得るらしい。


例えば竜のような格の高い生き物を倒せば『竜殺し』と呼ばれて、

竜のような強靭な肉体を得て刃が通らなかったとか、

弓を外さない名手の生涯使っていた弓の格があがり

矢を放てば決して外さないアーティファクトと呼ばれるような遺物になったりしたとか。


人だけではなく物でさえ変わってしまうなんてこれに心が躍らない男はいないだろう。


理屈や基準はわかってないが冒険の神が見守っているからとされてる。

ギルドには冒険者になるにあたって選定の儀があるらしく、それに選ばれることができれば、

【冒険者の導き】を得ることができるらしい。

導きというのは神が人に与える恩恵のようなもので恩恵は下から導き、加護、寵愛と段階があるらしい。

加護でも珍しいが寵愛ともなると神の体の一部を分け与えられるとも言われてるらしい。


月はアキが思ってたよりすごいものをくれたらしい。

【月の寵愛】は人に隠したほうがいいだろう。

とすると【狼の災い】とはなんだろう?おそらく加護や寵愛とは逆のものだろうが

どんな影響があるのだろうか?


【冒険の導き】は心から冒険者として生きていきたいと願えば基本的には誰でもあたえてくれるらしい。

それでも例外はあって、例えば商人の家に生まれ、商人になりたいと思ってる人間や、

冒険者のような危険なことはしたくないが、力は欲しいといった人間には与えられないらしい。


【冒険の導き】は得るだけで一般人より身体能力が高くなるらしく性別や体格や

生まれとらわれないらしい。

そして魔物討伐の依頼は、冒険の導きから情報を読み取る魔法具があるらしく、

素材だけ持ち帰るなどのごまかしはきかないらしい。

この世界は思っていたより神と人の関りが深いらしい。


冒険者のランクはF~A、そして英雄と呼ばれるほどの格を持つ人間はS級と呼ばれるらしい。

ソロはあまり推奨されないため基本的にパーティランクを上げていくらしい。

C級パーティになればベテラン、B級は町に2~3組いればいいほう、A級なら会うのが珍しいほどだ。

王都や他の五大都市にいけば会えるかもしれないがランパートではまず会えないそうだ。

S級だけは個人に与えられる称号らしく、まさしく英雄なのだそうだ。

噂では五大都市にそれぞれ一人ずついるとか、人が住めなくなった魔大陸に不死の魔女がそうだとか、

王都グランツの初代がそうだったとか、あやふやな情報しかないらしい。

受付のマリアさんは英雄の話が好きらしく、楽しそうに教えてくれた。



「それで、その竜殺しが竜の血を浴びて.....はっ!

えっとそれでは説明は大体こんなところですね。改めて冒険者の選定を希望されますか?」


脱線しすぎたのが恥ずかしかったのか、顔を赤らめながらマリアは秋に確認した。


「はい、お願いします」


「それでは書類作成の前に選定の儀に移りましょうか。」


そういわれ案内されたのは中央に石像があるやけに神々しい雰囲気がある部屋だった。

マリアはどこからか水の入った杯を持ってきて石像の前置いた。


「石像の前に立って祈りをささげてください」

そういわれ、秋は手をあわせ目を閉じる。


「冒険の神に代わり問います、あなたは冒険者として命を賭することを誓いますか?」


予想以上に近い耳元で囁かれたことによりアキはどぎまぎした。


「誓います」


そう宣言すると、「もう大丈夫ですよ」とマリアの声が聞こえた。


目を開けると杯の水が光っていた。

そこにマリアが紙を浸すと文字が浮き上がってきた。


「紙を取り出して見てください」


そういわれ取り出すと濡れてると思った紙は乾いていた。

アキが見慣れた文字で書かれていた。

―――――――――――――――――

野上 秋 クラス:冒険者

スキル:危険察知 並列思考

魔法属性:空間

称号:なし

―――――――――――――――――


「その紙がステータスシートになります。書類を作成しますので、

口頭で名前と任意で構わないのでスキルと魔力属性を教えていただけますか?」


どうやらギルド職員はステータスシートを見ない決まりらしい。


「名前はアキでスキルは《危険察知》と《並列思考》、魔法属性は空間で【空間収納】と

索敵にちかいことができます。」


「かしこまりました。それでは先ほどの説明した時の応接室でおまちいただけますか?」


そういってマリアは出ていった。


応接室で待ってる間、ステータスシート見直していた。


《危険察知》と《並列思考》、どっちもいわばパッシブスキルというやつだろうか?

名前だけみればすごく役立ちそうだし〈空間知覚〉との相性も良さそうだ。


そんなことを考えていると、ノックをした後、マリアが入ってきた。


「こちらが冒険者証になります。こちら身分証にもなりますので首にかけてお使いください。

紛失しましたら再発行に銀貨2枚かかるのでお気を付けください。」


ドッグタグのような見た目をしているのを見るに死亡時の認識票がわりも兼ねているのだろう。

そんなことより銀貨2枚の相場がわからない。

そして秋は一文無しだ。そのことを打ち明けるのは今しかないかもしれない。

いや冒険者登録をお願いするときに打ち明けるべきだったと思う。


「すみません。実は田舎からでてきて今お金を持ってなくて...恥ずかしながら2シルバーがどれくらいなのかもわからなくて...」


受付からしたらこの上ないほど迷惑な客だろう。本当に手探りの異世界転移の過酷さが身に染みる。


「大丈夫ですよ。祈り方がイロアスのほうのやり方でしたもんね。そういうお客様結構いらっしゃいますのでギルドでできる限りサポートさせていただきますよ。」


.....天使なのだろうか?いやな顔せず職務を全うするマリアは月より女神のようだ。

ランパートは本当に誰でも冒険者になれるのだ。


マリアさんの説明では

銭貨10枚で銅貨1枚 銅貨10枚で銀貨1枚 銀貨10枚で大銀貨1枚 大銀貨10枚で金貨1枚

大金貨1枚で金貨10枚 白金貨に至っては金貨100枚相当らしい。

元の世界でいうと銭貨が10円 銅貨100円 銀貨1000円 大銀貨1万円 金貨10万円

大金貨が100万 白金貨1000万らしい。


これならすぐ覚えられそうだ。

そしてギルドでは駆け出しややむを得ない時だけ借金ができるらしい。冒険者証で記録されるらしく、

銀行で冒険者証で口座も作れるらしい。


「アキさんはクラスに希望はありますか?」


クラスというのは使う武器や、それぞれの戦い方に応じて変化していくらしい。

パーティ募集するときや、格を上げるためにも自分が何者なのかという指標を持つという意味でも

大事なことらしい。


格をあげるのと似ていてはっきりとした条件はわかってないが、最初は自分に合った武器を使うことで

ステータスシートを更新した時にクラスの欄が変化するのだそうだ。


「すみません。まだ迷っていて...」


クラスは格と大きく関わってくるため、慎重に選んだほうがいいらしい。

クラスを頻繁に変えると格があがるのが遠のくジンクスがあるらしい。

自分が英雄として語り継がれるにあたってクラスは絶対付きまとう。

戦士なのか騎士なのか魔法使いなのか....英雄としては切っても離せない問題なのだ。

ランパートには剣術、槍術、弓術、格闘術を教えるところがあるらしい。

これも冒険者になるには最適な環境なのだという。


秋は英雄になりたいわけじゃない。ただこの世界で生きていかなくてはいけない。

どうしても自分が命を懸けて戦うというイメージが湧かなかった。


無難に盾と剣はどうだろう?リーチがある槍のほうが素人には扱いやすいのではないか?


「そうですね、私の意見ですが危険察知があって珍しいですが空間魔法で索敵ができるとのこと

でしたので弓術や格闘術を修めて狩人か盗賊からはじめて斥候(スカウト)や追跡者(チェイサー)

を目指すことをお勧めします。」


....たしかに。それが一番かもしれない。

斥候や追跡者という派生クラスは狩人か盗賊から派生できるらしい。

クラスの資格を得る方法は様々でダンジョンを踏破するだとか一部の部族のみ伝わるものがあるとか

地域性も関係していてイロアスには侍や忍者というクラスがあるらしい。


また、冒険者の文化がない隣の帝国には【戦の導き】により兵士(ソルジャー)や槍兵(スピアマン)司令官(コマンダー)などわずかに違うクラスに分けられるとか。


「それじゃあ狩人を目指してみます。」


「かしこまりました。ギルドで武器は貸し出せますので見てみましょうか」


そのまま倉庫に案内された。長年使った武器は格が上がることがあるから愛用することも多いが

そうじゃない場合は冒険の神に供養の意味で寄付したりもするらしい。


本当に冒険者にやさしい街だ。


〔錆びた短剣〕を手に取ってみているとどこからか装備一式もってやってきた。


「あの、よかったらこちらはどうでしょう?」


そういって差し出された弓や短剣は素人目にもわかるほど他の寄付品とは品質が違うものだった。

武器だけじゃなく皮の鎧と黒いマント、矢筒まであった。


「私の弟のものだったんです。短剣は私がお祝いに贈ったものだったんですけどね」


秋は察してしまった。お祝いに贈った短剣なら寄付したりはしないだろう。

そしてこんなに品質がいいものが残ってるわけがない。マリアさんの私物を持ってきたのだろう。

(マリアさんははっきりとは言わないが弟さんはもう....)


「そんな大事なもの、受け取れません。」


マリアさん厚意にできるだけまっすぐな思いで応えた。


あの短剣にはきっと弟さんの思いがこもっているのだ。

会ったばかりの秋にでもわかるマリアさんのやさしさがそれを物語っていた。


マリアは少し驚いた顔をしたが今日一番の穏やかな顔で言った


「弟もね、アキさんみたいにどこかいつも遠慮しがちな雰囲気の顔だったの

その短剣をあげたときもうれしさよりも申し訳ないような顔してさ、もっと喜んでほしかったのに!」


「きっと喜んでいたと思います。うまく言えないけど俺だったらそうなのでっていうのも変か....えっと」


「うん。そうだね、そうだといいな。」

上手く言えない秋にマリアさんは涙を浮かべ、それでもやさしく笑った


「弟をアキくんの冒険に連れてってあげてよ。それが冒険者に憧れてた弟に私がしてあげられること

だと思うから」


「いやそれは、、」


「いいの!お姉ちゃんの言うことを聞きなさい!そうだその服も目立つから何着か持ってきてあげる」


秋の答えを聞く前に出て行ってしまった


「お姉ちゃんって...,。俺、もう25なんだけどなあ....」


その後はマリアさんの仕事終わりご飯に連れて行ってくれたり、世話を焼いてくれた。


「じゃ、ここがギルドで貸し出してる宿舎だから。最初は慣れないと思うけど....明日からがんばってね!」


そうしてマリアと別れた秋は宿舎にはいった。

大部屋で大勢が眠りについていた。秋も空いてるベッドに横になって静かに決意した。


(なるべく早く一人部屋に泊まれるようになろう....)


秋は苦戦しながらも異世界にきてはじめて眠りについた――――





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