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2話 王都へ

――――コペルニクスの丘にて


月と別れた秋は頭を整理しながら丘の散策をしていた。


拓けた丘には一本の木とそのふもとに小さな池があり、その近くにちいさな石があった。

木は枝垂れており、石は誰かの墓かとも思ったが、何も彫られてはいなかった。


石には何か不思議な感覚がした。

見たわけでも音がしたわけでもないのにブラウン管テレビが点いてるかどうかわかるような

あの感じに似ている。


秋が石に目を凝らすと3つの文字が光って浮き出た。


異世界の文字だろうか、ルーン文字に似ていた。

ぱっと見Mに近いのと♢に近い字とFの横棒を下に下げたような字だった。


導かれるようにそっと触れると自分の情報が流れ込んできた


理解できないものもあったが月の寵愛、狼の災いが刻まれていること、自分の魔力の属性が空間で

あることを理解できた。


こっちの世界ではこうやってステータスを知るのだろうか?


「空間、、か。」


魔力で属性と言ったら火や水などが鉄板だけに秋はすこし落胆したが切り替えて

いろいろ試してみることにした。


まずできたのは自分を中心として空間を広げ、その空間を知覚することだ。

物体までの距離はもちろん、眼で見えていない自分の背後や木々などの遮蔽物の裏側まで

空間の範囲内ならば知ることができた。


これは愛着障害であろう秋の気質にあっているだろう。


完璧な間合いをとれるというのは戦闘では大きなアドバンテージとなるかもしれない。


もう一つは異世界の定番の空間収納だ。これは説明するまでもないだろう。

生きてくうえで一番重要な水を池から確保できたのはかなりでかい。水質を気にしなければだが....。


使えたのはこの2つだった。空間に物を固定出来たら役立ちそうだと思ったが出来そうになかった。


空間魔法を試してみてわかったのは難易度の高さ故の燃費が悪さだ。

月暈(つきがさ)で魔力を視覚できるようになるまではまともにつかえなかった。


魔力を視覚できることによる練習効率は高かった。

当分は空間知覚の範囲や効率を高めるのが優先だろう。


そうこうしてるうちに太陽は高く昇っていた。


とりあえず生きていくには村なり町なり人里を探さなくてはならない。

もともと2日に一回くらいの食事でも平気な秋だが夜は冷えるし魔物がいる世界で

安心して眠れる場所をさがさなくてはならない。運よく村や町を見つけても一文無しでは

どうしようもない。


秋の異世界生活はすでにぎりぎりなのだ。


丘から見下ろして見つけた轍を辿って歩き始めた。

しばらく歩くと、遠くから馬車がやってくるのが見えた。


秋は迷った。


この格好は不自然ではないだろうか?Tシャツの上に左肩が破れたデニムジャケット、

下に至ってはスウェットだ。


話しかけられてもうまく話す自信がない。

異世界の文化もルールも何も知らないのだ。


それでも異世界で初めて人に会えたことにほっとした。


馬車の御者をみると鎧を身につけていて体格がよいのに反してとても穏やかそうな顔つきをしていた。

後ろの荷台には4人ほど乗っていた。

異世界の冒険者パーティって感じの雰囲気だったが怖気づいてよくみることができなかった。


やはりこの格好はおかしいらしく視線を感じた。

声をかけられませんようにと祈りながら通り過ぎた。


「あの子...」


荷台の白髪の女がつぶやく。秋は20代半ばであの子といわれるような歳ではないのだが、異世界人からみたら童顔なのかもしれない。


「おかしな格好だったがどっから来たんだろうな?武器も持たずに一人で」


いかにも前衛職の赤髪の男が言う。疑いというより心配そうなところをみるに面倒見のいい

性格なのだろう。


「そーんな強そうには見えなかったけどなー。格もひっくそーだったし」


興味なさそうに獣人の女は鼻をならした。


「気になるの?グレイス。」


そう白髪の女聞いているのは金髪に長い耳、いわゆるエルフという種族だろう。


「格は感じなかったけど左肩に変わった痕跡を感じた。それに通り過ぎる一瞬だけなにか魔法を

つかっていたわ」


白い髪の女は秋が使った空間知覚に気づいたらしい。


「王都のほうにむかったよな?案外引き返してくるかもな。今王都はお偉いさんが世界が滅ぶとか

とんでもない魔法を使うとかで物騒だろ?あんな変な格好のやついれてもらえるかね。」


赤髪の男は王都があまり好ましくないのか難色を示した


「なんとなく縁がありそうね。また会える気がするわ」


秋の小さくなった背中を見てつぶやく白髪の女に冒険者一行は少し驚いていた。




そんなことは露知らず、遠くに見える都市に秋は心を躍らせ


空間知覚を練習がてら都市に向けて伸ばしてみる。

都市の周りは高い壁と堀に囲まれ門から桟橋にかけて人が列をなしていた。


秋は一瞬ためらうが、腹をくくり列の最後尾に並ぶことにした。

どうやら検問をしているらしく、どこか物々しい。


衛兵が二人一組になり、順番に身分を確認しているようだ。


秋が頭の中で衛兵との質疑応答をシミュレートしていると後ろの馬車に乗った男から話しかけられた。


「こりゃ長くなりそうですねぇいつもはこんなんじゃないんですけど」


急に話しかけられて驚いたが、適当に相槌をうった


「そうですね、、」


秋は元の世界でも急に話しかけられてもこんな感じで返しただろう。

自分は異世界にきても社交的にはなれないのだと自覚し辟易する。


「ずいぶん珍しい格好ですね?遠方から来られたのですか?」


どうやら会話は続くらしい。異世界人は日本人のように気まずい空気を察してはくれないらしい。

馬車を降り、馬をなでながら問いかけてきた。


「そうですね。田舎のほうから出てきたからここらの地理には疎くて」


「そうでしたか、珍しい服装だったもので商人として気になって...

申し遅れました、旅商人のフォーガルと申します。」


そういって右手を差し出してきた。


商人なら珍しい服を着ている人かけるのはごく自然だろう。しかし、田舎と濁したことに言及してこないのが気になる。様子見をされてるのだろうか。


「商人でしたか、どうも。アキです」


そういって握手に答えた。


「王都グランツには何か特別な用事が?」


.....王都だったらしい、、。どうりでこんな高い壁に囲まれているわけだ。

やはり検問をクリアするのは無理だろう。

秋が答えに困っていると


「いえ、無理にとは...商人として気になってしまって」


「実は、あてもなく旅をしていましていろいろあって荷物もなくなって困っていたところに

都市が見えたのでやってきたって感じなんです。王都だったらやっぱり入るは無理ですかね」


会話にぼろが出たら退散しようと心に決め、質問した。


「そうですか、身分を示すものがないと厳しいでしょうね、いつもだったら事情を話して通行料さえ払えば入れてもらえるのですが、今、この王都に国中の偉い方々が招かれてるみたいで検問が厳しくなってるようなんです。」


どうやらフォーガルは商人だけあって話好きらしくいろんなことを教えてくれた。

この国はミルドアースといって、もともと5つの国だったものが一つになってできた国らしい。

その名残として五つの都市が土地を治めていて

一つはここ王都グランツ。そしてグランツを囲むような形で、北の戦士の都市ノルン、

東のつわものの都市イロアス、西の魔法都市ウィールズ、南の魔工都市サジャと呼ばれているらしい。

そしてやはり身分証を作るなら冒険者ギルドがいいらしい。丁寧に近くの町の場所まで教えてくれた。


ここから2日あれば着くらしい。王都をあきらめ秋は近くの町ランパートを目指すことにした。


みてくれて、ありがとう

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