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魔法が使えないと冷遇される世界を、悪女は手品で立ち回る!  作者: 竹間単
◆最終章 理想の世界

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●42


「認定試験の話に戻るが、どうしてコインを封筒の中に入れたんだ? 封筒に入れずにコインを増殖させればいいだろうに……いや、コインを増殖させてはいけないのだが」


 一人の認定員が鋭いことを言ってきた。

 コインを封筒に入れた理由……そんなもの、魔法が使えないからに決まっている。

 もちろんそんなことは言えないから、上手く誤魔化さないと。


「コインを封筒の中に入れた理由は、その…………封筒から出てきた方がビックリするかなと思いまして!」


 茶目っ気たっぷりにそう言ってみたものの、認定員たちは笑うどころか困惑しているようだ。


 あっ、しまった。

 寸前まで今日認定されないなら死んでやると泣いていたのに、いきなり茶目っ気を出したら困惑もするか。

 こういうときは、ええと……とりあえず真面目な顔をしておこう。


「ビックリしましたか?」


「サービス精神か何か知らないが、我々を驚かせる必要は無い」


 認定員の一人がピシャリと言った。


「すみません」


「あとこの増殖したコインは我々の方で処理をしておく。不正に得たコインだからな」


 そのコインは増殖魔法で出現させたわけではなく普通にあたしの所持金なのだけれど……まあいいか。

 コイン一枚のために終わりかけた話題を蒸し返すのは得策とは言えない。


「しかし増殖魔法で認定を出すわけにはいかない。違法だからな」


「何かもう一つ、別の魔法を見せてくれ。簡単なもので良い。この前の水晶玉を動かす魔法や花を咲かせる魔法を間近で見せてくれても良いぞ。間近で見せてくれるなら、問題なく認定することが出来る」


 この認定員は、前回の認定試験のときにもいた人のようだ。

 緊張しすぎていてキリアン以外の顔なんか覚えていなかったから気付かなかった。


「せっかく屋敷まで来ていただいたので、この前とは別のものをお見せしようと思います」


 だってあれらの手品を近くで見せることは出来ないから。

 水晶玉を動かす手品は、まだあたしの技術力が足りないから、近くで見られたら手で動かしていることがバレてしまう。

 それに遠くからなら木の枝のように見えていた棒も、こんなに近くから見られたら、ただの棒だと見破られてしまうだろう。


「別の魔法も使えるのか。まだ魔法の講習も受けていないと言うのに、もしかして君は優秀なのかな?」


「長年の努力が一気に実を結んだだけです。他の人はあたしよりも幼い頃に認定試験をクリアしてるので、あたしは優秀どころか劣等生ですよ」


 あたしはそう言うと、足元に置いておいたキャリーケースから、今度は一枚のカードを取り出した。


「では、次の魔法をお見せしますね。まずはこのカードにおかしなところが無いことを確認してください」


 認定員たちは慣れた様子でカードを確認していった。

 すぐにカードはあたしの元へと戻ってくる。


「問題無い」


「ご確認ありがとうございます。それでは、このカードに瞬間移動の魔法を掛けます。さあ移動しなさい、風のように!」


 あたしは片手で杖を振ると、もう片方のカードを持った手を素早く動かし、カードを袖の中へと隠した。

 ちらりと認定員たちの顔を見る。

 見破られては……いないようだ。

 認定員たちはあたしに手品のタネを指摘することはせずに、真面目な顔をして成り行きを見守っている。

 それなら、その真面目な顔を驚きの顔に変えてあげよう。

 あたしのとっておきの手品で!


「さて瞬間移動をしたカードがどこへ行ったのかと言うと……そちらのフルーツバスケットの中です!」


 あたしがテーブルの上に置かれたフルーツバスケットを指差すと、認定員たちはバスケットの中を探し始めた。

 その間にあたしはキャリーケースからまな板とナイフを取り出して、テーブルの上に置く。


「カードが見当たらないぞ」


「失敗か?」


「いいえ、失敗ではありません」


 あたしはたくさんの果物の中からレモンを手に取ると、まな板の上に乗せた。


「あたしは先程のカードを、このレモンの中に移動させたのです」


 認定員たちの視線がレモンに集中したことを確認すると、あたしはレモンにナイフを入れた。


「よくご覧ください。こうしてレモンを切ると……」


 あたしがレモンの中から丸まったカードを取り出して広げると、認定員たちから歓声が上がった。


「おおっ!」


「まさに瞬間移動の魔法だ!」


「瞬間移動の魔法をこんな風に使うとは、面白い試みだ!」


 手応えアリ!

 あたしは期待に胸を躍らせながら、認定員たちへと質問をする。


「どうでしょう。あたしは魔法使いとして認定してもらえるでしょうか?」


 認定員たちは一度集まって話し合った後、すぐにこう告げた。


「結果が出た。満場一致で、君を魔法使いと認定する!」


「やったあ! あたし、魔法使いになれたわーー!!」


 その瞬間、光の速さであたしのもとまでやって来たお母様に抱きしめられた。

 お母様はいつまでも魔法使いと認定されないあたしのことが心配でたまらなかったのだろう。

 認定試験を受けたあたしよりも大粒の涙を流している。

 今日のパーティーは盛大なものになりそうだ。



   *   *   *




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