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魔法が使えないと冷遇される世界を、悪女は手品で立ち回る!  作者: 竹間単
◆最終章 理想の世界

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39/43

●39


「せっかく魔法を使う能力があるのに、もったいないですね」


「魔法の才能は魔力に限った話ではありませんからね。魔法を理解する頭脳もまた、魔法を使う才能です。そのため魔力量が同じなら、知能の高い人の方が魔法の才能を発揮する傾向にあります」


「それ、自分のことを言ってます?」


「そうですね。俺には魔力があり、魔法を学ぶ頭脳、さらに努力を惜しまない心意気も持ち合わせていました」


 キリアンが何でもないことのように言った。

 彼にとってそれは自慢ではなく、ただの純然たる事実でしかないのだろう。


「レティシアには、キリアンさんの持ってるそれが無かったということですね」


「ある意味で、オーヴァルニ伯爵令嬢はあなたと似ていたのかもしれませんね。彼女は先天的に魔力を持っていたものの、それを使う頭脳、そして足りない頭脳で努力を続ける心を持ち合わせてはいなかったのですから」


 レティシアが、あたしと似ている?


 考えたこともなかった。

 けれどこうしてじっくり紐解いていくと、レティシアとあたしには似た部分があったように思う。

 最終的な思考のゴールが違ったから真逆のような気がしていたけれど、その実、あたしたちはよく似ていたのかもしれない。


「レティシアもあたしも、魔法に関して努力の出来ない人間だった……のかもしれないですね」


 あたしには魔力が無いから努力をしたくても努力が出来なかった。

 一方でレティシアは魔法を学ぶ頭脳が足りないから、心が折れてしまって努力が出来なかった。


「似ていたからこそ、彼女はあなたのことを敵視していたのかもしれませんね。要は同族嫌悪です」


 ……そうか。レティシアはあたしのことを憎んでいたけれど、同時に自分のことも憎んでいたのかもしれない。

 上手くいかない鬱屈とした感情が、自分に似たあたしへ向かってしまったのかもしれない。

 そう思うと、今はもうレティシアを責める気にはなれない。

 回帰前の人生であたしはレティシアに殺されているから、その分の報いは受けてほしいと思うけれど、心情的にはもうレティシアを許してしまっている。


「……あたし、これまでレティシアはあたしと違って魔力があるから、あたしよりも恵まれてると思ってました」


「魔力は存在がハッキリしていて、魔法を使うことで目に見えます。ですが心は目に見えませんからね。オーヴァルニ伯爵令嬢の心が折れていることを、魔法を使う才能が無いことを、誰も見抜けなかったんです。それが彼女の悲劇かもしれませんね」


 レティシアの折れてしまった心は誰にも理解されず、理解されていないからレティシアは魔法の勉強を強制され続けてきた。

 一方であたしは魔法が使えないことを周りに理解してもらっていたから、魔法の勉強を強制されはしなかった。

 あたしも今の今まで理解できていなかったけれど、もしかするとレティシア自身も理解していないのかもしれないけれど、レティシアはそのことを不公平だと思っていたのかもしれない。

 レティシアの周りにも、レティシアの折れた心を理解する人がいたら、結果は違っていたのだろうか。


「レティシアは努力が出来ないのに努力を強制されて、あたしは努力が出来ないことを周りに理解してもらえたおかげで努力を強制されずに呑気に生きてきました。そのことを考えると、恵まれてたのはレティシアよりもあたしの方だったのかもしれません」


 非魔法民の自分は恵まれていないとばかり思っていたけれど、本当に恵まれていなかったのは、魔法を使う才能が無いことを認めてもらえなかったレティシアの方だったのかもしれない。

 出来ないのに出来るフリをして、出来る人たちの中で生きていかないといけなかったのだから。

 それはとても、大変なことのように思える。


「あたしはレティシアを告発するのではなく、説得で闇魔法をやめさせるべきだったのでしょうか」


「どうでしょうね。一度闇魔法に手を出してしまうと、もう普通の魔法は使えません。魔法が使えるフリをするためには闇魔法を使い続けるしかなかったので、やめさせることは難しかったと思いますよ」


「……非魔法民として生きた方が、レティシアにとっては幸せだったのかもしれませんね」


「たぶんあなたが思っているよりもずっと、非魔法民への風当たりは強いですよ」


 それを知っていたから、レティシアは魔法にしがみつこうとした。

 けれど上手く出来なくて、その結果、闇魔法に手を出した。

 もし非魔法民に対する風当たりがここまで強くなければ、その上で魔力以外にも非魔法民と認定される方法があれば、レティシアは幸せに生きられたかもしれない。


「非魔法民を差別する、この世界が悪いですね」


 そう、何もかもこの世界が悪い。


「レティシアはあたしに対しては加害者ですけれど、被害者でもあると思います。こんな世の中じゃなければ、魔法を使わずに楽しく生きられたはずですから」


 レティシアのような悲しい運命を辿る人を、これ以上生み出してはいけない。

 だから。


「決めました。あたし、この世界を変えます!」




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