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魔法が使えないと冷遇される世界を、悪女は手品で立ち回る!  作者: 竹間単
◆第六章 いざ敵陣へ!

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●36


 それからの動きは素早かった。

 予告通りキリアンの上司のおじさんは、令状とやらをひらひらとさせながら、数分であたしたちのもとに戻ってきた。

 しかも上司のおじさんの周りには十人ほどの人間が集っている。

 彼らが強制捜査に加わるメンバーなのだろう。


 何よりも驚いたのは、上司のおじさんが先程までとは別人のように見えたことだ。

 着ている服も同じなら髪型だって変わっていないのに、キリッとしていて、いかにもデキる上司といった感じだ。

 そのキリッとした上司のおじさんの掛け声で、職員がぞろぞろと馬車へ向かい、全員でレティシアの屋敷へ移動を始めた。


 なんだかすごいものを見た気分だ。

 時には飲兵衛のおじさんのようでいて、時にはデキる仕事人に変身する。

 ああいう人を優秀な人間と呼ぶのか!とあたしが感動をしていると、あの人は特例です、とキリアンに釘を刺されてしまった。




 そんなこんなでレティシアの屋敷に到着したあたしたちは、上司のおじさんを先頭にしてずらりと並んだ。

 あたしたちを見た屋敷の使用人たちがざわざわとしている。


「失礼する! 魔法認定委員会だ!」


「あの、アポイントメントは……」


「そんなものはない。これは強制捜査だ!」


 有無を言わさぬ勢いで、上司のおじさんが使用人に告げた。


「強制捜査!? 申し訳ございません。今、屋敷はそれどころではなく……」


「オーヴァルニ伯爵令嬢がいなくなった件か?」


「どうしてそれを」


「こら!」


 口を滑らせた使用人に、別の使用人が注意をした。

 しかしあたしたちはすべてを知っているのだから、そんな隠し立ては通用しない。


「探す必要は無い。私たちはオーヴァルニ伯爵令嬢の居場所を知ってるからな」


「そうなのですか!? レティシアお嬢様は一体今どこに」


「いいから屋敷に通せ。これが令状だ! 抵抗するなら、お前たちを闇魔法の隠蔽で牢にぶち込むぞ!」


 早くレティシアを捕縛しないと証拠を隠滅されると思ったのか、それとも使用人とのやり取りが面倒くさくなったのか、上司のおじさんが令状を使用人の顔面に押し付けながら凄んだ。


「ひいっ!? 闇魔法!?」


「こ、こちらへどうぞ」


 令状を顔面に押し付けられた使用人が戸惑っている間に、別の使用人があたしたちを屋敷の中へと案内した。

 令状を出された上で抵抗をすると、自分たちも捕縛されてしまうと思ったのかもしれない。


「オーヴァルニ伯爵令嬢の部屋はどっちだ」


「こっちです」


 使用人の前にあたしが言った。

 この機に及んで使用人に嘘を吐かれると面倒だからだ。

 それならあたしが案内をしてしまった方が良い。


 案内のために上司のおじさんの隣に並んで廊下を歩いていた私は、一つの部屋の前で足を止めた。


「ここが問題の部屋か?」


「はい、レティシアの部屋です。あとこれが檻のカギです」


 道案内が終わったあたしは上司のおじさんに檻のカギを渡すと、集団の後ろの方に下がった。

 するとキリアンがあたしの隣に立った。

 どうやらキリアンは突入要員ではないらしい。


「念のため俺のそばからは離れないようにしてください。バヴィエール伯爵令嬢は逆恨みで襲われる可能性がありますから」


「分かりました」


 あたしがキリアンと話している間に上司のおじさんが勢いよくドアを開け、レティシアの部屋へと駆け込んだ。

 後ろから職員もレティシアの部屋へと雪崩れ込む。


 レティシアの部屋からは、すぐにテキパキとした声が聞こえてきた。

 声は上司のおじさんのものだ。


「金庫はこれだな。押収しろ! 他にも闇魔法に関わる品が無いか、部屋の中を隅々まで徹底的に探せ!」


 あたしもドアの近くから部屋の中を覗く。

 すると鋭い目つきをした上司のおじさんと目が合った。


「地下室への入り口はどこだ!?」


「あの本棚の下です」


 あたしがぬいぐるみだらけの本棚を指差すと、上司のおじさんはすぐに本棚へと向かった。

 そして別の職員とともに本棚を動かす。すると地下室への入り口が姿を現した。


「誰か地下室に入れ!」


 そして上司のおじさんは職員の一人に檻のカギを渡すと地下室へ向かわせた。

 その間もおじさんは部屋の中で全体の指揮を執っている。


 少しすると地下室に降りた職員から、地上に向けた大声が聞こえてきた。


「檻の中に女性がいます! 顔を殴られているようです!」


「なにっ!?」


 上司のおじさんの顔が、ぐりんとあたしの方を向いた。

 気まずくなったあたしは、上司のおじさんから目を逸らしつつ答える。


「あー、そのー……揉み合ったときに、ちょっとだけ殴っちゃったかも、です」


「ボコボコです! ボコボコに殴られています!」


 地下室から今度はそんな声が響いてきた。

 また向けられた視線を、あたしは斜め下を向くことでやり過ごした。


 上司のおじさんはあたしには何も言わず、代わりに地下室内にいる部下に指示を出した。


「渡しておいたカギで檻を開けて女を連れ出せ。くれぐれも油断はするなよ!」


 地下室から、階段を上る足音が響いてきた。

 どうやらレティシアが出てくるようだ。




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