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魔法が使えないと冷遇される世界を、悪女は手品で立ち回る!  作者: 竹間単
◆第六章 いざ敵陣へ!

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●35


「ここが魔法認定委員会の本部……!」


 馬車が到着したのは、とても大きな館の前だった。

 これは魔法認定委員会入りに憧れる人が多いことも頷ける。

 このような立派な場所で働くのは、さぞ気持ちが良いことだろう。


「迷子になられると厄介です。手を繋ぎましょう」


 館に圧倒されているあたしに、キリアンが手を差し出した。

 エスコートと言えば聞こえはいいけれど、なんだか子ども扱いをされているような気がする。


「もしかしてキリアンさんは、あたしのことを子どもだとでも思ってます?」


「そうではありません。敷地内にはたくさんの魔法が掛けられているので、初めて入った人間は必ず迷子になるんです。ここには機密情報も多いですからね。簡単には持ち出せないようにする措置です」


「…………」


 あたしは差し出されたキリアンの手に自身の手を乗せた。

 そんな魔法だらけの場所で迷子になんてなったら、レティシアではなくあたしの方が尊厳の危機を迎えてしまう。


「素直なのは良いことです」


「あたしがいつも素直じゃないみたいに言わないでください」


「魔法もどきで認定員の目を誤魔化そうとしている人が素直だとでも?」


 そうだった。あたしは手品を使って魔法認定試験をパスしないといけないのだった。

 けれど今はレティシアの件に全力で取り組むべきだ。

 問題は一個ずつ、確実に片付けていこう。




 キリアンに連れて行かれた先であたしたちを待っていたのは、へらへらとしたおじさんだった。

 おじさんは、ぐでっと机に身体を預けている。


「ただいま戻りました」


「よお、キリアン。闇魔法の証拠は見つかったか?」


「はい。動かぬ証拠を発見しました」


「発見したのはそっちのお嬢ちゃんだろお? まあいいけどさ。じゃあ報告よろしく」


 いきなり現れた飲兵衛のようなおじさんに面食らっていると、キリアンがあたしに説明をしてくれた。


「彼は俺の上司です」


 もう一度、飲兵衛のようなおじさんを見る。

 おじさんはキリアンとはかなりタイプが違うように見える。

 具体的に言うなら、仕事に真面目なキリアンとは違い、不真面目そうに見える。

 と言うか、ここにいるということは仕事中のはずなのだけれど……こんな態度での仕事が許されているなんて、魔法認定委員会は身内に甘い組織なのだろうか。


「今、あの人のことを不真面目そうな人だと思ったでしょう?」


「えっ!?」


 心の中を読まれて驚く。

 あたしが答えに困っていると、キリアンの上司のおじさんが豪快に笑った。


「おいおい。初対面の人間に変な印象を付けないでくれよ、キリアン。私はデキる上司だろう?」


「それは否定しませんが、不真面目に見えるのもその通りでしょう? 客人の前でくらい、もう少しシャキッとしてください」


「私は力を抜くことの重要性を理解してるだけだよ。真面目に働きすぎて潰れるのはごめんだからな」


「やっぱり不真面目ではないですか」


「なんだ、キリアン。私とお喋りをしに来たのか?」


 上司のおじさんにそう言われたキリアンは、ハッとした様子で証拠の品を取り出した。


「こちらの二点がオーヴァルニ伯爵邸から持ち出した証拠品です」


 キリアンが闇魔法の本と赤い石のネックレスを上司のおじさんに渡した。

 上司のおじさんは本とネックレスを様々な角度から観察している。


「へえ。こんなものが出てきたのか」


「はい。証拠映像もあります。バヴィエール伯爵令嬢、馬車の中で見せてくれた記録映像をもう一度再生してください」


「分かりました」


 キリアンに指示されたあたしは、記録魔法箱を起動させた。

 馬車の中で一度映像を見たキリアンが、映像に説明を付け加えていく。


「こちらはオーヴァルニ伯爵令嬢の自室です。潜入したバヴィエール伯爵令嬢が記録してくれました」


「ほう。画面が見づらいのは、レンズの前にレースでもかかってるのか?」


「レースのリボンでレンズを隠していたとのことです。ですが、要所要所でレースを退かしているのでご安心ください」


 そのまま映像を流し、レティシアが金庫から本とネックレスを取り出し、あたしが本とネックレスを映したところで、キリアンが映像を止めた。


「今映った本とネックレスがそちらの品です」


「これはまた決定的な証拠を入手したもんだ」


 上司のおじさんが映像を撮った際のあたしと同じように、本をペラペラとネックレスをゆらゆらとさせながら、再度確認をした。


「……で、そっちのお嬢ちゃんに怪しいところが無いことはきちんと確認したんだな?」


「はい。オーヴァルニ伯爵邸に入る前に持ち物を確認し、屋敷からここまではずっと一緒に移動をしていました。これらはオーヴァルニ伯爵邸から持ち出したもので間違いありません」


「記録映像にも映ってたもんな。疑うだけ時間の無駄か」


 上司のおじさんがあたしに向かってニカッと白い歯を見せた。

 一体何の笑顔だろう。


「一緒の馬車で移動できて良かったな、キリアン。そろそろバヴィエール伯爵令嬢じゃなくて、名前で呼んでみたらどうだ?」


「話を横道に逸らせている時間はありません」


 キリアンは上司のおじさんに冷たくそう言い放つと、真剣な口調で言葉を紡いだ。


「現在、オーヴァルニ伯爵令嬢は自身の部屋にある地下室の檻の中にいます。ですので、証拠隠滅をされない今のうちに、オーヴァルニ伯爵邸の捜査許可をお願いします」


「ここまで証拠が揃ってて、強制捜査の許可を出さないわけにはいかないな。よーし、数分だけ待ってろ。令状を用意するから。ついでに暇そうなやつらを全員連れ出すか」


 上司のおじさんは大きく伸びをすると、本とネックレスを持ってどこかへ行ってしまった。




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