第13話 ー街を護る者達ー
「迷宮氾濫!?そう思い立った経緯は後で聞く、一先ず指示通りに俺は動こう。ウランはここの特別席にいるはずだ、申し訳ないがそっちは任せる。」
「仕方ないな、映像記憶の分に上乗せしてもらおう。」
そう言いつつ私はべヌスと別れ、特別席に向かう。
関係者通路を通る際変装していたために無駄に説明の時間を取ってしまったが、無事にウランのいる部屋までたどり着いた。
「ウラン!いるか!?」
「おおっ!?レムリア!何か用か!です!」
「今すぐ迷宮の入口に行ってくれ、理由は直ぐにわかるはずだ。急ぎで頼む。」
「……?まぁ分かった!任せろ!です!」
彼女は特に深く聞くことなく楽しそうに走っていく。
これで相手の狙いの1つは潰せるはずだ。
先日の異常個体の件はこの時の予行練習だろう、全門の詰所へ侵入となれば出入り口を潰した上で街を混乱に陥れることが敵の狙いだと予想できる、だがきっと……それだけじゃない。
迷宮の入口は第4塔のすぐ近く、冒険者が出張ってくればそう簡単に突破はされない。
この用意周到さから見るに敵もきっと馬鹿ではないだろう。だからこそ、これは仕掛けの1つに過ぎないはず。
他の仕掛けはなんだ?前2つはたまたま私の持つ情報から気づけたが、他は持ちえていない。
その次の段階も気になるが……今は後だ。
「思い出せ……最近外部の人間が増えている?違う。それは最近外部の人間を受け入れる体制がさらに整い人を呼び込めているだけだ。なら盗難や窃盗が増えたこと……1番可能性があるのはそっちだな。」
そうだ、街評判が人を呼ぶのは分かるが、余程の目的がないと犯罪をするためだけに態々この街に来ることは無い。
あるとすれば金を持つ外部の人間を貧民が羨み事をしでかすぐらいだが、だからと言って元から外部の人間は少なくない上、治世が整いつつある今急激に増加するはずがない。
「クソ!よく聞いておくべきだった。発生地域と、その内容が分かればある程度は絞れたんだが……」
念の為テティスに大規模な魔法の準備をしていてもらおう、あくまで保険だが対応が後手である以上全てに手を打てる状況にしなければならない。
リスクを踏んでまで侵入を強行したのであれば決行は今日中か遅くて明日、最悪今すぐということも有り得るな。
敵の組織規模が分からないな……流石に衛兵、しかも隊長格でさえ手も足も出ず制圧されたとなるとかなりの実力者がいる、私の鏡を狙ったあの少女か?いや、別の者がいるとみた方がいいな。
……思考がズレているな。落ち着こう、まずはテティスに会いに行くことだ。
◆◇◆◇◆◇◆
「地味に、この距離は疲れるな……テティス、いるよな?頼みがある。」
既に不要となった変装を解き、彼女の元を訪ねた。
驚いた様子でテティスは顔を出すが今は説明や細かい協議の時間も惜しい。
「珍しいわね。こんな近日中に貴方の顔を何度も見れるなんて……」
寝ていたのかやや寝ぼけた彼女に眠気覚ましの薬を手渡す。
忘れられては困る。
「改めて言おう、テティス。頼みがあるんだ。杞憂かもしれないが、これから街に厄災が訪れる。その備えとして天候操作と幾つか戦術規模の魔法へ対策をしていて欲しい、家屋の火災や魔法の行使への対策としてね。」
「それだけでいいの?」
まさかの返しに私は驚く、どういう事だ?それだけとは?
「……すまないが、言っている意味がわからない。それだけとはどういう事かな?」
「そうね……もっと私を……いえ、この分だと他も期待できないわね。もっと他の皆を頼りなさい?貴方の言う、その厄災って何?どうすればいいの?ちゃんと教えなさい。私にも手伝わせて?」
そんな時間は……そう言いかけて喉が詰まる。
経験がないが故に焦りすぎていたのは事実。そうだ、1人で解決しようなど唯の傲慢でしかない。
落ち着け、深呼吸だ。
「わかった。ただ今直ぐにでも起こりえる以上、時間が無い。手短でいいか?」
「ふふ、勿論。」
◆◇◆◇◆◇◆
「お!べヌスとマルスじゃないか!楽しい観戦を中断して此処で待ってた!です!此処で待っていればじきにわかると、レムリアが言っていた!です!さぁ説明しろ!です!」
「……すまない。そんな場合では無いがひとつ聞かせてくれ、一体いつから待ってたんだ?」
汗ひとつかいていないウランと、対照的に疲れが表情に出ているベヌスとマルス。
その差からついべヌスは聞かずにはいられなかった。
「ん?半刻前にはいたぞ!かなり待ったんだからな!です!」
「……相変わらずバケモンだナ。お前。」
その発言に言い過ぎだとべヌスはマルスを軽く咎める。
早すぎる……が、一先ずこれで頼まれた事はこなせた。
彼女は迷宮氾濫が起こると言っていたな。
例の侵入から繋がったと考えるに、それも人工的に引き起こされるものなのだろう。
とすれば今すぐか、遅くて今日の夜までか?
まだ、夕刻に差し掛かったばかり、ギルド職員による一時的な侵入規制で騒ぎにはなっているが念の為にギルド長室からお茶中だったマルスを引っ張ってきたから問題ない。
「迷宮氾濫が起こる……かもしれない。恐らく今日中に。レムリアがウランをここに向かわせたということは、最悪10層近くの魔物も来る可能性もある、頼む。ここを死守してくれ。」
「本当か!?最近どの魔物も手応えがなかったから楽しみだ!です!」
楽しみなのはお前だけだという感想はさておき、ここからどうすべきだ?指示通りに動いたが、きっと彼女は先の先も読んでいるはず。
考えろ、街を守るんだ。
「あァ、そういう事カ……ウラン、ここまで魔物誘引してくる奴がいれば問答無用で殺してしまえ。お前が撃ち漏らした魔物は冒険者たちで囲んで殺ス、お前が優先するのは引っ張ってくる奴の方ナ……あァ、殺しちゃまじィか、なるべく捕らえる方向で頼ムぜ。」
俺がどうすべき悩むうちに、ある程度理解したであろうマルスが行動を決める。
……このままじゃダメだ!俺はこの街の警備を担っているんだ、指揮すべき者がこのままでいいはずがねぇ!
「……よし、俺は1度全ての塔管理者に話を通してくる。俺の知っていることはきっとレムリア程ではないが、準備があるのとないのじゃ大違いだろうからな。」
ふと、ある事を思い出した。彼女と別れる少し前、そうだ、確か……
「次の段階が迷宮氾濫?いや、それも一端か?レムリアは最終的な目的を気にしていた……そうだ、ここまで組織的でただ事を起こして終わりのはずがない。」
「何か気づいタみたいだな。」
ケケケと笑いつつ、マルスは言った。
「一先ず、迷宮氾濫以外も警戒していてくれ、これから俺達は、街は、未だかつて無い大事に巻き込まれる。街の人々を守るぞ。」
「勿論だ!です!」
「無茶して死ぬんじゃねぇゾ。皆で乗り切ッて楽しく飲もうゼ。」




