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 一番に逝くのは誰か。

 やくたいもない考えを弄ぶのはきまって二人ぼっちの夜だ。不思議なもんだ。ひとりきりの時や、三人揃っているときは思いつきもしないのに。今夜はバルサが偵察に出ていた。戻るまではもうしばらくかかるだろう。キャスパーと俺は車の荷台に足を投げ出して座っている。俺たちは端の焦げた毛布を分け合っている。寒い、寄こせ、お前取りすぎだ、返せ。一枚のぬくもりを俺たちは引っ張り合う。荒野でも星はスモッグに覆われて見えない。

 バルサだろう、と俺は結論づける。

 きっと振り向きもせずに逝く。

 あいつが死ぬ場面を想像するのは難しい。銃、刃物、病、死者たち。そんなものが積み重なった山のてっぺんで大あくびをしてるような奴だからだ。奴の息の根を止めようと思えば、脳天に月でもぶつけるしかない。対物ライフルじゃちょっと弱い。けれど同時に、確信もある。ああいう生き物は長くこの世にとどめておけない。

 お次は誰だろう?

 考えるまでもない。俺。

 多分すごく間抜けな死因だ。眠くて眠くて眠れなくてふらふらして、滑って転んでハイ左様なら。顔の半分をドブに突っ込んで、きっと目は開いたままで。その瞬間も、そのあとも。

 最後に残るのはキャスパーだ。

 奴はどうするだろう。先に逝った俺たちを百万の言葉で嘲るだろうか。それともニヤニヤ笑いの端っこに煙草を引っかけて、その瞬間が来るまで女か酒瓶でも抱いているか。自分が死んだ後のことを思い描くのは割と難しい。

 俺は引っ張っていた毛布を放す。

 最後は、キャスパー。

 何度考え直しても、毎回、そうなってしまう。

 遺されてしまう。よりによって、いっとう寒がりのこいつが。

 キャスパーは眼を閉じている。胸は穏やかに上下している。来るはずもない眠りの淵にいるように。俺はその胸に毛布をかけてやってから、同じように目を閉じる。星がうるさい。

 やがて、バルサが音もなく毛布に滑り込んできた。俺の膝のあたりで丸まって、すぐに寝息をたてはじめる。ほぼ同時に俺の意識も暗闇に吸い込まれる。

 たまに不思議に思う。

 世間の奴らはどうやって眠っているのだろう。

 このふたつの体温もなしに。


(了)

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