表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/21

スワン・ピーク<11>

 車内は静かだ。勇ましいエンジンの音に誰も伴奏を与えようとしない。

「煙草くれ」

 言うと、ハンドルを握った奴は振り向きもせずにライターごと放ってよこした。「おいおい、嫌煙家の看板は下げたのか。今夜はお祝いだな」なんて混ぜっ返したりしなかった。そう言えば、奴は今日、一本も吸ってない。狂った機関車みたいなヘビースモーカーなのに。

 助手席の奴が無言なのはいつも通りだ。開け放った車窓にむき出しの肘を引っかけている。今までの人生で奴を女や子どもだなんて認識したことは一秒たりとも無いが、俺より一回りも二回りも細い腕は誰かを思い出させた。

 俺は眼をそらして紙巻をくわえた。火をつける。ジッと小さな音がして赤い火が灯る。吸い込む。煙が口内から肺を満たす。まずい。臭い。最悪だ。それでも俺は、世の多くのヤニ中毒どもがこいつに夢中になる理由の端っこを理解した。深く吸い込むと頭がくらりとした。

「次はどこだ? 北か、南か」

 どうでもよさげに投げかけられた質問。俺は答える。

「買い物がしたい」

 ペンと、紙を。

 夜明けが近い。日の光は遠い。

 スワン・ピークに白鳥はいない。山もない。あそこの主役は沼と柳とボウフラども。ピエロでも鬱を患う素敵な土地柄。

 スワン・ピークには二度と来ない。


(了)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ