表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/31

ガソリンを捨てるために原油を掘るのか――EU・イギリスへの提言【ドルと石油の話②】

本日4話投稿の2話目です。

 トランプ大統領が返り咲いてから、西側諸国の首脳たちが右往左往している。

 関税をちらつかされ、NATOの負担を迫られ、「どう接すればいいのか」と頭を抱えている。

 だが、視点を変えれば答えは意外とシンプルかもしれない。

 トランプが最も喜ぶことを、EUとイギリスから先に提案すればいい。



●トランプの最大の関心事


 トランプ政権の経済政策の核心は「アメリカ産エネルギーの輸出拡大」だ。

 シェール革命以降、アメリカは世界最大の産油国になった。この豊富なエネルギー資源を世界に売り込むことが、トランプにとっての最優先課題のひとつである。

 ならばEUとイギリスが「アメリカ産原油・LNGのユーラシアハブになります」と先に手を挙げれば、トランプは機嫌が良くなる。関税交渉でも安全保障の議論でも、テーブルの雰囲気は変わるはずだ。

 しかし、ここで必ず出てくる反論がある。

「脱化石燃料の理念はどうするんだ」と。



●そもそも原油はエネルギーだけじゃない


 EUはグリーンディールを掲げ、2050年カーボンニュートラルを目標に据えてきた。化石燃料からの脱却は、EUの政治的アイデンティティの核心部分だ。

 だから「原油を買います」とは言いにくい。

 しかし、ここで一つの問いを立てたい。

 EUは本当に「原油なし」で産業を維持できるのか。

 原油は燃料だけではない。精製すると、ナフサ・アスファルト・潤滑油・化学製品の基礎原料が同時に生まれる。プラスチック、合成繊維、医薬品、塗料……現代の産業インフラのほぼすべてが、石油由来の素材なしには成り立たない。

 EVがどれだけ普及しようと、ナフサの需要がある限り原油の精製は続く。

 つまり皮肉なことに「ガソリンを使わなくなっても、原油は掘り続けなければならない」という現実がある。

 極端に言えば、「ガソリンを捨てるために原油を掘る」時代が来るかもしれない。

 それならば、そのガソリンをどう扱うかが問題になる。



●ガソリンから水素を、CO₂から樹脂を


 ここに技術的な突破口がある。

 ガソリンから水素を抽出する技術が実用化されれば、化石燃料由来の原油をクリーンエネルギーの原料として活用できる。燃やして終わりではなく、水素というかたちで次のエネルギーサイクルに組み込める。

 そして水素抽出の過程で発生する一酸化炭素・二酸化炭素。これを大気中に放出するのではなく、樹脂・化学製品の原料として再利用する技術開発をセットで進める。

 CO₂を「廃棄物」ではなく「資源」として扱う発想だ。

 この二つの技術が実装されれば、構図は一変する。

 原油を買う→燃料は水素に転換してクリーンエネルギーとして活用→副産物のCO₂・COは樹脂原料にリサイクル→カーボンニュートラルに近づきながら、石油由来の資源需要も満たせる。

 「脱化石燃料」という理念を守りながら、原油という資源を最大限に活用する道が開ける。



●三方よしの構図


 この構想をEU・イギリスがトランプに提案するとどうなるか。

 トランプにとっては「アメリカ産原油が大量に売れる」。文句のない話だ。

 EUとイギリスにとっては、ロシア産エネルギー依存からの脱却という安全保障上の課題が解決しながら、環境目標も技術で担保できる。水素・CO₂再利用という新産業も生まれる。

 そして日本がアジアのハブを担い、EUとイギリスがユーラシアのハブを担うことで、アメリカ産エネルギーが東西から世界を支える構図が完成する。

 ペトロダラー体制の補強を、西側全体で分担する絵だ。



●理念か、現実か——その問いは終わった


 EUはこれまで「理念(環境)か、現実(エネルギー安全保障)か」という二択を迫られてきた。

 しかし技術開発をセットにした原油ハブ構想は、その二択を無効にする。

 環境理念をラッピングとして使いながら、現実の資源確保とトランプとの関係修復を同時に達成できる。

 右往左往している必要はない。

 トランプが喜ぶことを、EUとイギリスが主体的に設計して提案する。その中身に技術開発という未来への投資を織り込む。

 これが「トランプ時代の西側外交」の一つの答えではないだろうか。

 あなたは、ガソリンを捨てるために原油を掘る未来と、ガソリンから水素を作る未来と、どちらを選びますか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ