新入職員
新しい時代の幕開けやねー
村にいる若者は、村長の孫夫婦と、その子供くらい。
村長の息子さんは50代後半で、既に村の村長業務のほとんどを担っている。
村長の孫夫婦は、土産物屋で塩で作った様々な加工品も販売していて、なかなか上手くやっている。
曾孫たちは、10才の男の子レイと8才の女の子ミル。
2人は、私がこの村へ来たころには、本当に小さくて、道端で遊んでいるのは見ていたけれど、忙しく働いていた私が、そんなに関わることも無かった。
でも、私も少し余裕が出てきて。
2人とも、大きくなってきて、食堂に顔を出すことが増えた。
子供たちが味見係をしていると、かわいい声に誘われて、お客さんが増える。
ついでに、2人にテーブルまで料理を運んでもらうと、歓声があがる。
お客さんは、チップを2人に渡してくれたりもする。
ほんの銅貨1枚くらいでも、子供にとっては、良い小遣いだ。
これが、一日で10枚近く貯まることさえあって。
驚いた2人の両親が、食堂に返却しに来た。
「これは、2人の頑張りの結果ですから」
そう返したけれど、両親は戸惑っていて。
仕方ないので、お店に、2人へのチップ用の箱を設置した。
2人とも、その箱にお金を入れてもらうと、大喜びするから、お客さんも、ついつい入れてしまう。
1週間分を、まとめて、レイとミルの両親へ渡している。
そのうちから、2人へは給料として銅貨5枚を1人ずつに渡している。
2人とも、飛び上がって喜んで、行商人の馬車での買い物を楽しんでいた。
「これ、、、」
2人が、もじもじしながら、私とモル、ハルサの前に出てきた。
2人の手には、クッキーの袋が3つ。
「作り方を、お母さんに教わって2人で作ったんだ。いつも、僕達2人がお世話になってるから、お母さんがお礼をしようって」
恥ずかしそうに出されたクッキー。
「いいの?」
そっとつまんで食べると、広がる小麦粉の香りと甘さ。
サクサクとした食感。
「美味しい!すっごく美味しいよ!」
「こりゃーうまい」
私たちの絶賛に、2人とも頬を染めて喜ぶ。
村長と同じ緑の髪と目の子供達は、森の妖精のようだ。
「そうだ、これ食堂で売ろうよ」
会計横のスペースが空いている。
棚を作れば、たくさん置ける。
「でも、僕達、そんなにたくさん作れないんじゃないかな」
「これも、すごく時間かかったの。朝から作って、もう夕方だもん」
褒められて嬉しいけれど、不安そうなレイとミル。
「練習すれば、早くたくさん作れるようになるし、食堂の台所を使えば、私達も手伝えるよ」
「作り方さえ分かれば、やれるさね」
2人は、もじもじしながらも、嬉しそうに両親に相談すると帰っていった。
すぐに飛びつかない慎重さが、この子達の良いところだ。
まだ子供なのに、よく考えて行動出来る。
私の子供の頃なんて、思い出す限り黒歴史。
「僕達を、ここで本当に働かせてくれませんか?」
それが、突然、レイがそう言ってきたのには、びっくらこいた。
ミルまで、真剣だ。
「今までは、遊びながら楽しく過ごして来たけれど、僕も、もう10才。あと5年で街へ行くか決めろって言われてるんだ」
この世界の成人は15才。
「勉強はおじいちゃんや曾お祖父ちゃんに教わって来たけど、ちゃんと働いて、もっといろんなことを学びたいんだ」
しっかりしてんなー、おい。
「それなら、お家の仕事もあるんじゃない?」
一応、ちゃんと返事しなきゃと襟を正す。
服に襟は付いてないけど。
「家だと、みんな僕達を子供扱いして、全然仕事を任せてくれないんだ。給料だって、貰ったことなんて無いし、きっとこれからも無いよ」
「そうよ、お父さんもお母さんも、いつも子供扱いして。私達のことなんて、認めてくれないのよ」
いろいろ不満がある年頃だなー。
「うーん、そうね、相談して、また連絡するわ」
にっこり笑って、ひとまず2人を返す。
裏口には、2人のご両親が揃って来ていた。
令和も3年になりますから。




