初収入
おじさんは、ちょい渋めだけど、かわいい感じが好きです。
作戦決行の時が来た。
すなわち、今、行商人のおじさんが来た。
笑って村長と話せるのも、今のうちだ。
「いやー、腹が減りましたなー」
村長と世間話をするおじさん。
いつものパンを食べる予定なんでしょ、そうでしょ。
させてたまるかーーーっ!!
「村長~出来ました~」
私が、さりげなく揚げたての唐揚げとフライドポテトを持って、村長に近付く。
「おぉー、やっと出来たか。手間もかかるのに悪いのう。ほれ、銅貨5枚」
「まいどありっ」
おじさんは、ぼんやりと私たちのやり取りを見てる。
村長は、熱々を指でつまんで、サクッと食べる。
「ふあっ熱い!美味い!最高じゃっ」
はふはふ食べる村長。
行商人のおじさんは、涎を垂らして見てる。
来る?
「村長、、、それは?」
来た?
「これはのう、ニーナが村の皆に作ってくれる特別な食べ物なんじゃ。信じられないほど美味いが、誰も真似は出来ないし、ものすごい手間もかかるらしい」
村長あおってるねー。
みんな、普通に作ってるけど。
「じゃから、こうして、順番を待って買わせてもらっとるんじゃよ。はー、、うまい」
おじさんのお腹が鳴ってる。
「村長、、、私にも一口、、、」
「美味かったー」
おじさんが言う前に、村長は全て平らげてしまった。
ガックリとするおじさんを見て、村長が
「お前さんも食べたかったか?じゃあ、ニーナに聞いてみるか?」
「ニーナ!!!」
おじさんが、ぐりんと私の方を向く。
なんだか、目が血走ってる?
「どうか私にも、先程の物を作ってくれないか?!」
顔が近いし、唾飛ばさないでくれる?
このおじさんを少しでもかっこいいと思った私って一体。
「うーん、、、でも、みんな、順番待ってるものなんでー」
チラと周りを見てから、おじさんを見る。
「おじさんだけ特別扱いする訳にも、、、」
「そこをなんとか!私は週に一度しか来れないんだ!頼むよ!」
懇願するおじさんって、シュール。
「村長、どうします?」
村長とアイコンタクト。
「今回だけ、特別に作ってやってはどうじゃ。いつも世話になっとるし。だが、ちゃんとお代は頂いた方が良いのう。他の者へ示しがつかん」
「それはもちろん!払います!割り込ませてもらうんだから、私は銅貨8枚払います!」
やったぁ!
「じゃあ、ちょっと待ってて下さい」
ほんとは、ハルサたちが作ってくれて、もう出来たみたいだけど、ちょっと待たせる。
他の準備もあるし。焦らしてやるぜ。
「お待たせしましたー」
ジャーン!と唐揚げポテトセット登場。
おじさん、フルフルと震えながら受け取って、そっと食べる。
なんかかわいいわー。
「、、、美味い」
「うまい!うまい!うまいぞーーーっ!」
おじさん、大興奮。
完全に確保したな。
そこへ、冷たい果実水登場。
「村長~こっちはどうします?村長の分ですけど」
キラキラとした目で、おじさん見てる。
「おー、待っておった。やはりそれが無いと、口の中がさっぱりしないからな」
おじさんの目の前で、村長は果実水をごきゅごきゅ飲む。
「ぷっはーーっ!生き返る!この酸味と香りが何とも言えず美味じゃな」
おじさんが、ぐるんとニーナを見る。
「今のは?!」
「酸味と香りの強い果実を絞った果実水ですよ。油っこい物を食べた後に飲むと、口の中をさっぱりさせてくれて、すごく美味しくて、、、」
私の説明が終わりきらないうちに
「私にも同じものを!」
「銅貨3枚ですけど、いいんですか?」
さっきのも8枚で買ってる。
「もちろんだ!きちんと払う!ニーナ、頼む」
「かしこまりましたー。少々お待ちください」
もう、モルさんがスタンバイ完了してた。
出来た冷たい果実水を運ぶ。
「出来たて、冷たい新鮮な果実水でーす」
ちょっと情報を盛っておく。
「おおっすごい!」
ただ、小川の水汲んで、山でもぎったレモンに似た果物絞っただけなんだけどさ。
「くはあっ!こりゃーうまい!初めて飲むぞ、こんなうまいもの」
よっしゃあああっ
小さくガッツポーズをして、みんなに見せる。
ひとしきり、食べて飲んだおじさんから、お代を頂く。
「いやー、この村に、こんなに美味いものがあったなんて、知らなかったよ。また食べさせてもらえるかい?」
「えぇ、もちろんです。次は、もっと美味しい物を用意してますよ」
おじさんは、驚いて、でも嬉しそう。
「ほんとうに?じゃあ、街でも、ここの村には、美味いものがあるって言いふらしておくよ。フリオ村のニーナ食堂がすごいってね」
冗談めかして、ウインクしながら、おじさんはそう言って帰って行った。
ニーナ食堂、、、
良い響きじゃーんっ!!!
その後、村のみんなと話し合って、ニーナ食堂をやってみよう、となった。
空いてる家は、けっこうあるから。
その中でも、台所が広くて使いやすくて、みんなが通い易い家。
なぜか、結局、私の家になった。
場所も、村の中央だしね。
みんな通い易くて、家の中に何があるかも慣れてる。
いいよ!やろうぜ!ニーナ食堂ーーーーっ!
いいですよね、かわいいおじさん。




