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寄り道青春  作者: 夕波テイト
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ひたすらごしごし

この話はTwitterフリーワンライ企画‏@freedom_1write

「#深夜の真剣文字書き60分一本勝負」で作りました。

お題「新品だったのに」やルールは同企画より頂きました。時間制限の都合上誤字脱字もあるかと思いますがご容赦ください。

高校三年の夏のこの時期になると、将来の夢とまで遠い話ではなくとも志望校くらいは固まっているのが普通で、私の周りの人達も大体決まってて赤本の貸し借りの話をしているのをたまに聞く。意外と高いもんね。赤本。それに比べて私はいまだ何がしたいのかわからず、配られた進路先のプリントを白紙のままじーっと睨んでいた。二年の時、理系文系に分かれる際は我が親友である涼香が

「結菜!どうせあんたのことだから進路先悩んでるんでしょ?とりあえず私と一緒の文系にしようよ!文系クラスには健斗君もいるんだよ!?」とバシバシ叩きながら言ってきて、私はそれを断る理由も特に思いつかなかったので文系にした。ちなみに健斗君というのは涼香が片思いしている男子で、その思いを密かに心にしまっていると本人は思っているのだろうが、明らかに健斗君といる時、声が裏返ったり、耳がまっかっかになっていて明らかになっているので、「わかっているけど、とりあえず知らないことにしておく」というクラス内で暗黙の了解となった。恋に一途な涼香は、傍目から見ても――親友というひいき目を除いても――とても、とっても綺麗だった。三年間涼香と一緒のクラスになれてよかったなあ。

 ああいけない。現実から目をそらしてしまった。そんなわけで流されるままにテキトーに進路を選んでしまったツケが表れて今に至る。どうしよう。

安っぽいプリントには涼香が私の机に書いた少し不恰好になってしまった流行りのキャラクターが透けて見えた。そのキャラクターの吹き出しには「三年間ずっといっしょ!!」の丸っこい文字。このまま涼香の人生にずっとついていくのでもいいなあ。プリントに涼香の志望校と同じ大学を書き込む。同じ大学入って、同じサークル入って、それでゆくゆくは同じ会社通って、同じマンションの部屋借りて、あぁ同じ部屋をシェアするのもいいなあ。ずっと涼香と同じ。それを涼香に言ったらどんな顔するかな。あの子はとても優しいから喜んでくれるだろう。「やった!これからも一緒!?私はずっとお前を離さないよ……きゃー!恥ずかしい!」とか言いながら。でも涼香はそんな決断力の無い人がキライだ。涼香は問題に対して、もうずっと考えてたかのようにすぐに決断を下す。その表れなのか、決断力のない人にズバズバ言ってしまう。もとより、私自身がそんなお互いに気を遣ってしまうような人生なんてゴメンだ。

 どうしようか。そんなことを考えながらさっき書いた大学名を消しゴムで消す。弱い筆圧だったからすぐにその痕跡は消えてしまったけど、消しきれていない何かがまだそこに残っているような気がして、何度も何度も消しゴムをかける。汗をかいた右手のせいでプリントが歪んでしまった。だけどまだそこに残っている何かが加速度的に広がっていくような気がして、その何かに抗うように消しゴムをかける。ひたすら。ただひたすら。

「なーにやってるの結菜?ちょ、なにこれ、消しカス?」消しカスに圧倒された涼香は驚いた様子だったが、荒い呼吸と握りしめた進路調査の紙を見て、事情はわかったらしい。涼香は肩に優しく手を置き、私と向かい合い、

「結菜。確かにまだ進路が決まっていないのはこの波丘高校広しといえどもあんたくらいだけど、別にそれをあんたが恥じる必要はないよ。人生は80年もあるんだ。まだ17,18の若輩者のあたし達がスパッと決められる方がむしろ可笑しいんだよ。だからあんたは悩めばいいさ。悩んで悩んで悩みぬけばいいさ。それまで私が一緒に悩むからさ。」そう言ってぐしゃぐしゃ頭を撫でてくれた後、あーまたこれで私の好感度が上がってしまったー。とか言ってチラチラと健斗君のいる机の方を見る。もうほんっとにわかりやすいなあ。そんな可愛らしい姿に笑ってしまった。

「よかった。いつも通りふにゃっとした結菜に戻って。」

「ありがと。」

「後でパンでもおごってもらうよ。覚悟しといてね!」とニシシと笑う。

「破産しない程度で頼むよ?」そうやって二人で笑いあっていた後、ふと何かを思い出したかのように涼香は自分の筆箱から何かを取り出し、こちらに投げてきた。生憎の運動神経なので、キャッチ出来なかったが、それは新品の消しゴムだった。

「それ使いなよ。もう結菜の消しゴムちびっちゃくなってるから。」

「ありがとう。大事に使うよ!」

「もちろんそれはさっきのパンとは別会計だからね?」

「母さんにお小遣い前借りしないとね。」

秋の匂いを乗せた風が私達の笑顔の間を通っていった。もうすぐ夏も終わりだ。 

一応舞台はいつも通り波丘高校です。高校名を考えるのが面倒だったわけじゃないです。決して。

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