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皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第1章 西へと向かう極寒の

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第8話・独特すぎる文化に染まり~悪気がなくても大問題~

第1章 西へと向かう極寒の



      第8話・独特すぎる文化に染まり~悪気がなくても大問題~



 結局、ファンとステールはジャンヌを「お嬢様。」と呼ぶことで決着が着いた。



「別に、気にしなくていいのに……」


「そうはいきません!」


「そうです! 申し訳ありませんっ!」



 インスから懇切丁寧に説明されてもジャンヌはどこ吹く風。


 そうは言われても到底受け入れられないのがファンとステール。


 特にステールの方は、幼い時から主家のご一家を、裏家業の頭目一家と同じように呼んでいたのだと初めて知って頭を抱えていた。



「……しかし、まさか辺境伯家では昔から辺境伯ご自身を『頭領』、夫人を『姐さん』、ご令息を『若』、ご令嬢を『お嬢』と呼んでいるとはな……」



 眉間を揉んで呟くファンは、つい先ほどステールから聞いた話を思い出して溜め息を吐く。



「……大変、独特な文化が根付いている地域のようですね……」



 説明に反論してきたステールの言葉でそれを知ったインスも疲れを隠そうとしない。



 この分だと恐らく、先の辺境伯のことは『先代』、その夫人は『奥方』とでも呼んでいそうだ。



「い、いや……っ! 俺たちからすると、当たり前だったから……!!」


「分かってるよ……。まあ、正直、下町の奴らや、あとは職人街の奴らは堅気でも似たような呼び方はするから、一概には言えないってのもあるしな……」



 焦って言い訳するステールに、リオンが同情たっぷりの眼差しを向けて同意を示す。



 実際、口が悪い者の中にはそういった呼び方をする者がいるのも事実。



 というより……



「普通に『姫お嬢』って呼ばれてたから、本当に気にしなくっていいのに……」


「……それも、大きな問題です……」



 あっけらかんとして言うジャンヌに、眉間の皺を深くしてファンが返す。



 皇都の住人からすれば、ジャンヌが『皇孫皇女(ジャンヌ)』であることなど、百も承知。


 その上で、お忍びだというジャンヌに、なら……と砕けた物言いをするようになって行った結果。



 最初は普通に「お姫。」とか「姫様。」とか「姫さん。」などであったらしい。



(……インス(貴様)がっ! 姫様を! 脱走などさせるから……!!)


(私に言われてもねぇ……ご下命に従っただけですし?)



 ギリギリと歯を噛みしめながら睨むファンの視線を、インスは極上の笑顔で受け流す。



 実際問題、インスに言ったところで過去のジャンヌの出没先まで操作できるはずもない。



 そう思うなら、今後は()()()で管理してくれればいい、としか思えなかった。



(こちらがどれほど苦労を強いられていたかも知らないで、文句を言うだけならば誰にだってできるでしょう……)



 インスには、専属護衛騎士団長のくせに、あっさり脱走を許していたのはファンの方だろう、としか思えない。


「ついでですから、今朝できなかった件もお伝えしましょうか……」


「……? 今朝できなかった件?」



 お茶を一口飲んで、そう言えば……と思い出したインスが口を開くと、胡乱げな表情でファンが睨む。



「ええ……。フロークス爵子も皇女殿下も『身分を隠す』と言うことを、一切ご理解していらっしゃらないようですので……」


「「……? ……」」



 笑っていない笑顔のインスに、ジャンヌもファンも首を傾げる。



 というか……



「貴様がそんな呼び方をしていれば、気づかれて当然だろう」



 ムッと、眉間の皺を増やしたファンが言えば、インスは冷笑を返す。



「私は()()()に聞こえるように呼び掛けた覚えはありませんが?」


「……いや、それ、屁理屈……」


「何か? リオンさん?」


「何でもないですっ!」



 反論に、思わずぼそりと呟いたリオンは、その極寒の笑みを向けられてピッと背筋を正した。



「実際問題、呼び方云々以前の問題でしょう? どこにフロア二つ借り切ったり、周辺の部屋を使いもしないのに借り切ったりする()()()がいるんですか?」


「「……あ~……」」



 笑顔で怒る、という器用なことをしているインスの言葉に、リオンとステールは「そりゃあそうだ。」としか言えない。


 無言のクロードは無表情のまま小さく頷き、アインはちょっと首を傾げて思考を巡らせていた。



「何を言う。姫様の安全を確保するには……」


「……ぁ……」


「何だ!」



 眉を顰めたファンが言うのに、気づいたアインがちょっと声を漏らすと、途端に鋭い眼差しで睨みつけ、厳しく誰何する。



「……っ!? ご、ごめ……」


「アイン君は悪くありませんよ。……フロークス爵子。いちいち大きな声で怒鳴るのはやめて下さい。悪党の恫喝にしか見えません」


「何だと!」



 びくりと震えたアインが謝罪を口にしたのを、そっと抱き寄せたインスが宥めた。


 ファンを睨んで苦言を呈するが、全く理解していないのか、ファンはますます険しい表情を見せる。



「少なくとも、一般の方から見れば、小さな子供を怒鳴りつける大人など、良識のある行いには見えない。と言っているだけです」


「……っ!?」



 一切怯まないインスに、グッとファンも詰まった。



 確かに、何も知らない者から見れば、そう思われても致し方ないということは理解できる。



「で? 結局、何で身分隠せてないってことになるの?」



 そして、一切気にしないジャンヌが話の続きを促した。

第8話をお読みいただきありがとうございます。


ジャンヌの呼び方が決定したものの、その裏で明かされるステールの実家が仕える辺境伯家の、あまりにも独特すぎる呼称文化に、大人たちが頭を抱えます。


主家を主人を「頭領」、夫人を「姐さん」、ご令息を「若」、ご令嬢を「お嬢」と呼ぶのが当たり前だったというステールの弁明に、インスもファンも疲れを隠せません。


さらに、ジャンヌがこれまでに周囲から呼ばれていた「姫お嬢」という呼び方や、過去の脱走劇を巡ってインスとファンが視線で静かに火花を散らす小競り合いなど、相変わらずの噛み合わなさ。


しかし、お喋りはそこそこに、インスから「身分を隠すことの本質」について、今朝できなかった容赦のない説教が始まります。


一般人とかけ離れた過剰な部屋の取り方をバッサリと切り捨てるインスの正論。


「何で身分が隠せていないのか」を未だに理解していないジャンヌの促しに、インスはどう答えるのか?


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「辺境伯家が極道一家WW」「『姫お嬢』のパワーワードWWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト


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