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皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第1章 西へと向かう極寒の

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第7話・現実を知る者~その甘やかしに失望す~

第1章 西へと向かう極寒の



       第7話・現実を知る者~その甘やかしに失望す~



 いつ、どうして、皇孫皇女を「お嬢。」などと呼ぶことになったのか?



 動き出した馬車の中で思考に耽るインスを、アインが心配そうに見上げ、リオンが外に顔を向けて視線を逸らす。



「昨日の宿もまあまあだったわね! インスたちも、昨夜は少しマシに休めた?」



 艶ピカのジャンヌが笑顔で問いかければ、リオンは「おいおい! まじかよ……。」と密かに冷や汗を浮かべ、思考に耽っていたインスは極上の笑顔を向けた。



「……おかげさまで? 初日よりは()()()()でしたかね……?」


「なら良かったわ! インスもアインも、大変でしょうけど、頑張りましょうね!」


「「「…………………」」」



 完全に嫌味でしかない返答に、とてつもなく前向きな笑顔を向けるジャンヌを無言で見つめる。



「……えっ? どうかした??」


「……どうかした? じゃないと思うぞ……」


「……ぇ……と……」



 まじまじと見つめられて困惑するジャンヌに、リオンが疲れた声を出せば、自分も何か言わないといけないだろうか? とアインもしどろもどろと口を開く。



 そんなアインの頭を撫でて、何も言わなくて良いと言いうかのように笑顔を貼りつけたインスが。



「大変だと分かっていらっしゃるなら、今すぐ皇都に帰らせてください」


「だめよ! 絶対に取り戻すんだから!!」



 至極もっともなことを告げれば即座にジャンヌは却下する。



 しかし、本当に「大変であること。」を理解しているのなら、こんな死にかけたばかりの病人と死にかけたばかりの幼児を連れ出すべきではない。



「「「……………」」」



 当然、ジャンヌがそう返してくるだろう、ということは言ったインス自身も、リオンやアインにも分かり切っていた。



 分かり切ってはいたが……



(……すげぇな、インス……真っ向から帰れって言いやがった……!)



 ジャンヌ以外の全員が思っていることを突き付けたインスにリオンは感心し。



(……皇女殿下の()()に、どこまで付き合わせる気でしょうかね……?)



 何も()()()()()しない皇女に冷めた目を向けてインスは沈黙し。



(……やっぱり、皇子さまは、僕と違って、両方()()()()から……かな……?)



 ジャンヌがどうしてそこまでこだわるのかを、アインは考える。



「というか! アインの宝石だって、取り戻さないと()()()()のよ!」


「……それは……」


「……ぇ……っと……」



 むうっと頬を膨らませてジャンヌが言えば、流石にインスの眼差しが揺れ、オロオロとアインが声を漏らす。



(……言われるまでもなく、私だって、一瞬でも早く、アイン君から奪われた瞳の宝石を取り戻したいに決まっているでしょう……!)



 インスだって、できることなら今すぐにでもアインの損なわれた目を元に戻してあげたい。



(……けれど、そのためにアイン君までこんな危険な旅路に連れ出す? ありえませんね……!)



 けれど、そのためにアイン自身を危険に巻き込みたくもない。



 なにより……



(……盲目の皇子殿下は()()()皇都に残し、隻眼になってしまったアイン君は()()()()()()同行しろ……?)



 その()()()()に関しても納得がいかない。



(……確かに、皇太子たる皇子殿下は盲目で、危険と分かっているこの旅路に同行させられないのは分かります……分かりますけれど……!!)



 分かりはする。


 国として考えれば、皇子も、当然、皇女も、こんな危険な旅路に行かせたくないのだと。



 だというのに、この旅路が強行され、自分たちが同行させられているのはつまり……



(……いえ。やはり、皇女殿下の我儘がすべての元凶ですね……)



 結局はここに帰結する。



 確かに、アインの瞳の宝石はインスとしても取り戻したい。


 けれど、それと危険に晒すことは同じではないし、それを皇女の我儘で押し切られて納得できるはずもない。



 だから……



「……少なくとも、()の状況で強行することではないでしょうね……」


「……っ!?」



 ぽつりと呟くように言ったインスに、ジャンヌは息を飲む。



「……そして、皇女殿下(あなた)が同行するべきことでもないでしょう……」



 ふわりと、笑っていない笑顔を向けたインスに絶句する。



「なん……っ!」


「なぜ、などとは仰らないで下さい。私はきちんと()()()申し上げました」



 一拍置いて、声を上げかけたジャンヌを遮る。



 すでに、説明は終えている。


 それでも()()したのだから、()()()が歩み寄る必要性は皆無だ。



 そう……



(……本気で、皇女殿下の出奔を阻止したかった、と仰るのなら、やりようは()()()()()あったはずなのですから、ね……)



 ガラガラと、街道を走る馬車の車輪の音だけが重苦しい車内に響く。



「……インス様……?」



 不安そうなアインに微笑んで、そっと抱きしめるインスは、けれどそれ以上口を開こうとしない。



「…………ぁ…………。………ぇ………?」



 何を言っていいか分からなくなって、ジャンヌも口を開きかけては閉ざすを繰り返すだけ。



「…………………」



 ふいっと、視線を逸らすように、リオンもまた外へと顔を向ける。



「「「「……………………」」」」



 沈黙は、次の休憩地点まで続くことになった。

第7話をお読みいただきありがとうございます。


動き出した馬車の中で繰り広げられる、ジャンヌとインスの決定的な温度差。


そして息が詰まるほどの重苦しい沈黙で終わる回です。


悪気なく前向きな言葉をかけるジャンヌに対し、極上の笑顔の裏に冷徹な嫌味を隠さないインス。


ジャンヌの無自覚な我儘と、病人と幼児を危険な旅に連れ出す不条理に対し、真っ向から冷たい正論を突きつけます。


アインから奪われた瞳の宝石を取り戻したい気持ちは山々ながら、それと危険に晒すことは別問題であり、盲目の皇太子との扱いの差にも割り切れない思いを抱くインス。


笑っていない笑顔で突き放されたジャンヌの困惑と、車内に満ちる張り詰めた空気。


そして外を見つめて視線を逸らすことしかできないリオンの居心地の悪さ。


不安そうなアインをそっと抱きしめ、無言を貫くインス。


旅路の厳しさと、大人たちの思惑のすれ違いが冷徹に浮き彫りになる、緊張感あふれる車内劇でした。


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「インスの嫌味がキレッキレWW」「車内の居心地の悪さがリアルWWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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