第6話・困難の中にも楽しみを~騎士団長は突撃す~
第8章 創作ランチと報告会
第6話・困難の中にも楽しみを~騎士団長は突撃す~
食堂を出て、宿室が並ぶ廊下を、アインがゆっくりと歩く。
その左手をそっと、けれどもしっかりと繋いで、隣を歩くインスの眼差しはどこまでも優しい。
そんな二人を挟み込むように、前方にクロードが、後方にはステールが続く。
急に片目が見えなくなってしまったことで、日常生活にさえ不便を強いられているアインは、それでもできるだけ、自分にできることを増やそうとずっと努力している。
ついつい世話を焼いてしまうインスも、そんなアインの気持ちを汲んで、無理をさせない範囲で色々なことをやらせていた。
「……外は寒いでしょうから、しっかりと防寒の準備をしないといけませんね……」
そっと息を吐いたインスの言葉に、ちょっと顔を上げたアインはすぐに足元に視線を戻す。
まだ、ちゃんと足元を見るようにしないと、いつ転んでしまうかわからなくて不安だ。
「……はい……えっと、でも……みんなでお散歩できるのは……ちょっとだけ、嬉しいです……」
「「「…………っ!?」」」
でも、ほんのりと耳を赤くしてはにかむアインの言葉に、インスだけではなく、クロードとステールも一瞬息を呑んだ。
(……な、何ですか!? この可愛らしい生き物は……!!??)
(……おいおい……! 皇女殿下が強行する散策をみんなでお散歩って……どれだけ前向きにとらえてるんだ!?)
(……アイン、可愛い……正義……)
各々が心の中で悶絶するが、そこは流石に大人。
表情にも態度にも表すことはなく、ただそっと、インスがアインの頭を撫でる。
(……しかし、皇女殿下やフロークス爵子はアイン君をちゃんと気にかけて下さいますかね……?)
アインのかわいらしさに悶絶したのも束の間、ふと過った不安にインスは微かに眉を顰める。
あの、自分が正しいと信じて疑わず、進みたい道だけを迷わず突き進む皇女殿下と、その皇女殿下のことしか考えていないポンコツ騎士団長。
(……不安しかありませんね……)
思考を巡らせるまでもなく至った結論に溜め息しか出ない。
一同が部屋にたどり着き、クロードが扉に手をかける。
「……っ……!?」
「……来い」
直後、インスの腕を、上階から駆けつけたファンが強く掴んだ。
「……っ!? ちょっ……!?」
掴んだかと思えばいきなり引っ張られて、反射的にインスは声を上げ、抵抗を示す。
「来いと言っている」
「だからと言って……っ!」
強引に引き摺ろうとするファンに巻き込まれないように、インスはアインの手を放し、クロードの方へと軽く押す。
当然、クロードも事態を察しているので、素早くアインを抱き上げた。
「えっ!? あの……っ!!」
「っ。アイン君。大丈夫ですから、先に部屋に入っていてください……クロードさん、お願いします……」
「……ん……」
突然の事態に青ざめたアインが声を上げるが、ギリギリと力いっぱい掴んでくるファンに抵抗しながら、普段通りの表情と声音で告げるインスにクロードが短く頷く。
「……えっ!? ま……っ!!」
何かを言いかけたアインを遮るように扉が閉ざされる。
「ファン卿。手をお放しください……折れます」
直後、インスの肩を抱くようにして抱え込んだステールが、ファンの腕にそっと手をかけ、冷然と告げた。
「……っ……!?」
ハッとしてファンが慌てて手を放せば、インスは微かに眉を顰めて痺れる腕を軽くさする。
「……それで? ずいぶんと乱暴ですが、一体何のおつもりですか?」
そうしながら、変わらぬ笑みを口元にだけ浮かべたインスが、冷ややかな眼差しで問い詰めた。
「……話がある。来い……」
「「……………」」
グッと眉間の皺を深くして促すファンをインスもステールも無言で見つめる。
「……分かりました……」
一瞬だけおいて、溜め息を吐いたインスは素直に頷き、三人は連れ立って再び一階へと戻ることになった。
食事を終えたばかりなので、茶室の奥にある個室を借り、各々が飲み物を注文する。
「「「……………」」」
品物が届けられるまでの間、インスは無言で掴まれた腕をさすり続け、その様子をファンとステールがやはり無言で見守る。
(……大げさな……嫌味か……!)
(……おいおい……大丈夫だろうな……? 骨を痛めていたりとかしないか……?)
眉を顰めるファンはインスの様子を苛立たし気に睨むが、ステールの方は本気で不安を覚える。
インスは明らかに同年代の男性と比べて小柄で華奢なのだ。
騎士として鍛え上げられた男が力いっぱい掴んだら、それだけで本当に骨が砕けかねない。
……と、本気で思っている。
その基準が、自分やクロードの腕力である、というのがステールの認知の限界ではあるのだが、考え自体は間違っていない。
だからステールは、時折ファンに責めるような視線を投げていた。
第6話をお読みいただきありがとうございます。
今回は、散策前のひと時と、突然始まった少々物騒なやり取りです(;^ω^)
みんなで散歩できることを素直に喜ぶアインに、こっそり悶絶する大人たち。
……だったはずが、部屋に戻った途端、ファンが勢いよく突撃してきましたWW
どうやら、まだ話し合わなければならないことがあるようで……?
次回もお楽しみに!
【シリーズ一覧はこちら!】
本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。
過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!
▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク
https://ncode.syosetu.com/s7443j/
▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク
https://ncode.syosetu.com/s8365j/
【今後の連載スケジュールについて】
続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!
【ミニコラム掲載中!】
活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!
【読者の皆様へのお願い】
「突撃! 廊下の騎士団長WW」「ステールの認識バグWWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。
また次回もどうぞよろしくお願いいたします!
【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】
――――――
ノリト&ミコト




