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皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第7章 暴走皇女の我儘を

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第9話・並べる点は真実の~繋がる線は思い込み~

第7章 暴走皇女の我儘を



       第9話・並べる点は真実の~繋がる線は思い込み~



 誰からのものとも知れない相手から届けられた、何の目的とも知れない呼び出しに、普通であれば応じるはずがない、というのは少し考えればわかること。



(……当然、そんな呼び出しに応じるには何か裏がある、と邪推されてしかるべきでしょう……)



 邪推も何も、呼び出してきた相手は、恐らく屋根裏に潜んでいたネズミで、薬店から裏帳簿を盗み出せれば、楽に事実関係が確かめられる……と、こちらから持ち掛けたからだ、というのは分かっている。



 けれど、そんなことを口にしたら、むしろこちらが策を弄して薬店の跡取りを嵌めたように思われかねない。


 まあ、実際、インスが描いた盤面とは若干異なってはいるものの、嵌めたことに違いもないのだが……



(……実行犯だけ逃げおおせて、私たちだけ痛み分けさせられるつもりはありません……)



 内心で冷ややかに算段を付けるインスは、それを欠片も表に表すことなく、ただ、躊躇うそぶりだけを見せて口籠る。


 案の定、少し厳しく追及する言葉を発した警備隊長を恐れるように、あえて声を抑えめにして囁くように告げる。



「……フィール家からの帰り道に、どなたかに付けられていたようなのです……」


「「「……っ……!!??」」」



 インスの言葉に、警備隊の面々が一気に緊張し、身を強張らせる。



「……もちろん、たまたま、同じ方角に向かっているだけなのか、とも思ったのですが……」


「……何か、確証に近いものを抱くきっかけが……?」



 目線を逸らし、伏せ気味にして言うインスに、警備隊長が重ねて問う。



「……先回り、されていました……」


「「「……な……っ!!」」」



 きゅっと、膝の上に重ねて置いた手を握りしめて伝えたインスの言葉に絶句する。



「……途中で、道を逸れていかれたので、最初はやはり気のせいだったのか、とも思ったのです……けれど……」



 宿に戻って来た時、物陰から、様子を見る人影があった。



「……随分と癖のある髪をされていて、顔中、髭に覆われておられたので、人相などは分かりません……ただ、着古した大きめの外套などの様相から、行商の方のようでした……」


「……行商……顔中髭で覆われた男か……」



 特徴を告げるインスに、部隊長の男が呟くように繰り返す。



(……言ってねぇ……一言も男(・)とは言ってねぇ……)



 内心でツッコミを入れるステールは無言。


 実際、本当に男なのか、女なのかは直接本人を確かめなければわからない。


 何しろ、その相手が付け髭である、と指摘したのはインスで、女だ、といったのはアインであって、本人の顔から髭を引っぺがして服を脱がせたわけでもない。



「私たちがこの街で関わったとはっきり言えるのは、同行者が職務中に呼び出してご迷惑をおかけしたセージさんと、その幼馴染の方のご一家であるフィール家の方々だけです……」



 それなのに、フィール家を訪れた帰りに尾行され、翌朝には呼び出しのメッセージ。


 その関係で、誰かが呼び出したとしか思えなかった。



 インスの説明に、今度こそ警備隊の面々は納得したように頷いた。



「ご指摘のあった、ナペル薬店の調薬に関してですが……詳しいことは捜査上の秘密から申し上げられませんが、確かに、フィール家のカミル君に処方されていた薬には問題があったようです……」


「っ!? ……そう、なのですね……やはり……」



 それから、女性隊員が初めて口を開く。


 伝えられた情報に、インスは軽く息を飲み、微かに眉を顰めた。



(……それだけではなく、恐らくこの街で広まっている違法薬物にも関与しているのでしょう……流石に、そこまでの情報を伝えてくることはないでしょうけれど、あのネズミの持ち物であれば現場には残さないはず……)



 昨夜の時点では判断がつかなかったが、落ち着いて考えてみれば自分の痕跡を残すのは三流のやることだ。


 あえて現場に何かを残すのだとしたら、それはそ(・)ち(・)ら(・)に(・)意識を誘導させるため。



 あれだけの手練れが、自分の痕跡を消さずに逃げた、とは考えにくいのだから、残しても構わないもの、もしくは、あえて残したかの二択。


 自分であれば、間違いなく犯人に仕立て上げる相手の持ち物を利用する。



(……あのネズミと同じ思考回路、というのは認めがたいですが……合理的に考えれば似たような結論になるはずです……)



 思わず手に力が入って、怒りのあまり眉間に皺が寄るのを何とか堪えて俯く。



 そんなインスの様子が警備隊の目には、望んだわけではなくとも知り合うことになった少年の、長年の苦しみを思いやるように見えて、一気に義憤の機運が高まる。



 ……まさか、インスがカミルへの同情ではなく、自分を嵌めた相手への怒りで震えているのだとは思いもしない。


 しかも、思考回路が似ている、つまりは、同族嫌悪に近いものであるだなんて想像の埒外だった。



「……犯人のシェイド……ナペル薬店の跡取り息子ですが……彼がその行商人とつながりがあった可能性は高いでしょう……ナペル薬店自体も多くの商人らと取引しておりますが、シェイドが個人的につながりを持った商人らもいるはずです」


「……それは……そうかもしれませんね……跡取り、ということは現在はご家族か師匠に当たる方が経営されていらっしゃるのでしょう? 代替わりされる際に、そのまま基盤を引き継げるとは限りませんから、今のうちに個人として人脈を広げるのは不思議ではありません……」



 女性隊員が続けた説明に、インスは静かに頷いて自身の見解も伝えておく。



「その通りです。ブルンの商人とも何人か付き合いはあるようですが、オルデンやポルツォ、もちろん、皇都に店を構える商人や、行商の者とも関係があったことは判明しています」



 薬店の跡取りが店を引き継いだ際に困らないよう、今のうちから人脈を広げるなど当然のこと。


 それは何も薬店だけではなく、様々な場所から仕入れを行い、また、様々な場所に流通させる職に就いていればどこも同じ。


 商家の跡取り同士が交流することだって当然ある。


 そして、遠方の商人だけではなく、自分が住む街、店を構えている街など、広範囲に及ぶのもまた当たり前。



 具体的な地名が出てきた、ということはシェイドと関わりを持ったことのある商人の目星も多少はついているのだろう。


 全部の洗い出しはまだだとしても、一切不明の段階で「どこの商人。」などとは言えないはずだ。



「……ナペル薬店は、行政や神殿とも取引がある、と伺いましたが……」



 ふと思い出したようにインスが問いかけると、警備隊の間に緊張が走った。

第9話をお読みいただきありがとうございます。


警備隊の追及に対し、真実の断片を並べながら巧妙に相手の思い込みを誘導していくインス。


語られた尾行者の特徴から捜査の輪が狭まる中、怒りに震えるインスの姿を、警備隊は少年の境遇を思いやる義憤だと好意的に受け取ってしまいます。


薬店の跡取りが築いた人脈や不正が浮き彫りになる中、インスが投げかけた核心を突く問いによって、場には再び張り詰めた緊張が走り……?


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「点しか言ってないWW」「存在しない線ができてるWWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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