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皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第7章 暴走皇女の我儘を

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第8話・警備隊の事情聴取~盤面操作に気づかせず~

第7章 暴走皇女の我儘を



      第8話・警備隊の事情聴取~盤面操作に気づかせず~



 宿の主人が訪問を伝え、応えを待ってから開かれた扉の中は、中流貴族家向けの宿で主人らが取引先などと対話を行うにふさわしい、上質ではあっても華美ではない家具で整えられた応接室。



 中には警備隊の隊長をしているらしい中年の男性と、昨夜の事件で隊を率いていた部隊長である三十代ぐらいの男性、それと、まだ若い、二十代後半頃の女性隊員が一人。



 丁寧に整えられた口ひげが印象的な中年の男は五十代の後半くらいだろうか?


 いや、もしかすると、ひげのせいで年齢が上に見えているだけで、もう少し若いのかもしれない。


 がっしりとして鍛え上げられた体躯であることが隊服の上からも感じられる。



 部隊長の男も引き締まった体格で、けれども警備隊長とは違い、威圧感は感じられない。


 女性の隊員は長い金髪を首の後ろで一纏めにし、それを隊服の上衣の背中側に納めている。


 表情は引き締まっているが、女性特有の穏やかな柔らかさも感じられた。



 騎士団の隊服は男女の差も、年齢の差もあまり関係はなく、またどこの騎士団であるのかさえもが基本の隊服の構造においては差異がない。


 だから、騎士団に所属している隊員……騎士や兵士であること自体は、どこに行っても一目でわかる。


 では、どうやって見分けるのか? と言えば、所属を示す所属紋が上衣の裾に刺繍されていた。


 更に、隊服の材質や色もそれぞれの騎士団ごとに予算が違うため差が出て当然。


 階級を表す階級章や、役職についている者かどうかは役職章を見ることになるが、それも、国の騎士法で定められているので、一般人であってもわかった。



 ただし、ステールが着ているのは騎士団の隊服ではなく、護衛官の隊服。


 騎士団と護衛官では所属どころか命令系統も指揮系統も違うため、それと一目でわかるように隊服のデザインが違う。



 やはり男女でデザインが違うことはなく、年齢でも差がない。


 皇宮護衛官であれば黒の、神殿護衛官であれば白の隊服を着用する。


 違うのは各護衛官を統括する官長だけで、一目でそれとわかるように上衣の丈が長い。



 警備隊は騎士団ではないが、ブルンは現在直轄領であるため、その下部組織的な扱いも受けている。


 だから、ブルンの警備隊の隊服は、騎士団の隊服に似せたデザインになっていた。



「早くから、お手数をおかけします」



 立ち上がって迎えた三人のうち、警備隊の隊長と思われる男が代表で挨拶する。



「いえ……こちらこそ、わざわざご足労いただきまして、ありがとうございます」



 声掛けに応えて、インスが微笑んで会釈し、それに合わせてステールも黙したままで軽く頭を下げた。



 改めて応接セットを囲み、宿の従業員……主人《オーナー》の夫人か、秘書であろう女性がお茶を出し、静かに部屋を出て行く。



「……改めまして、昨夜の件で、お話を伺わせていただいても……?」


「……もちろんです……」



 それを待って、穏やかに事情聴取が始まった。



 昨夜、神殿の治療院で行われた事情聴取と、聞かれる内容に差はない。


 だからある意味、記憶違いや、時間が経過して、落ち着いたことで思い出したことがないかなどを確認されただけ。



 インスとしては、今思い出しても腹立たしいのはジプシー風の相手のことではあるのだが、あえて、その存在に関してはあやふやに伝える。


 実際、顔も、体格も、ゆったりとした服装とベールなどに隠され、しかも日が暮れ始めて薄暗くなっていた時間帯。


 性別も何も、シルエットだけでは判断できない。


 だから、インスは意識を失ってしまったため、襲撃犯と現場で逮捕された男が同一かどうかはわからない、と答えても嘘ではないし、ステールも、痺れて動けない中で、聞こえた声と暗がりのシルエットが、襲撃してきた相手と同じか否かを言い切ることはできない。



(……まあ、実際のところ、別人だろう、というのはほぼ確実でもあるんだがな……)



 こっそりと、内心でツッコミを入れるステールは、だが、インスから絶対と言えるのか? と問いただされたら口を閉ざすしかなかった。



「……昨夜もお伝えした通り、私たちは呼び出しのメッセージを受け取って、あの場に赴きました……もちろん、どなたからの呼び出しかは分かりませんでしたし、目的も書かれてはいませんでしたので、不安がなかった訳ではありません……」



 知り合いなど殆どいない、旅先の街で、誰とも知らない者からの呼び出しに、普通ならば応じるはずもない。


 けれど……



「これも、昨夜申し上げましたが、私どもの同行者が、ご無理を言ってご訪問させていただいたフィール家のカミルさんの投薬内容に疑問があって、騒ぎにせずにお話を伺えればと考えていた中でしたので……」



 その関係での呼び出しかもしれない、と判断したからこその訪問。



「……しかし、なぜ、その呼び出しがカミル君の投薬内容に関係する話しかもしれないとお考えに……?」



 そんなインスの説明に、警備隊長が鋭く問いかけた。



(……っ……!)



 ほんの一瞬、ぎくりとしかけたステールは頬の内側を噛んで堪える。


 対して、インスは一度瞬きをすると、少し迷うように視線を彷徨わせた。



(っ!? おいおい! 何してるんだ!? そんな、あからさまに怪しい動き……!!)



 内心で焦るステールのことなど気にもせず、躊躇うような様子を見せたインスを警備隊長がほんの僅かに目元を険しくして見つめる。



「……何か、隠しておられる……?」



 そして当然に、警備隊長の声が若干硬くなった。


 問い詰めるような口調になったことに気づいて、すぐに誤魔化すように咳払いする。



「……その……もしかしたら、気のせいかもしれないのですが……」



 それでも、まだ暫く躊躇う様子を見せてから、インスは細く、声を震わせて囁いた。

第8話をお読みいただきありがとうございます。


宿の応接室にて、警備隊長たちによる事情聴取を受けるインスとステール。


昨夜の出来事や呼び出しに応じた理由を説明する中、警備隊長から鋭い質問が投げかけられます。


内心で焦るステールを余所に、怪しまれるような躊躇いを見せ、声を震わせながら語り始めるインス。


相手に悟らせることなく盤面を操り、狙い通りに情報を誘導していくインスの巧みな駆け引きの行方とは!?


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「インスの巧みな盤面操作WW」「胃痛深まるステールWWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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