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皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第7章 暴走皇女の我儘を

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第6話・宿屋の主人とドアマンと~秒で粉砕される夢~

第7章 暴走皇女の我儘を



      第6話・宿屋の主人とドアマンと~秒で粉砕される夢~



 その日、出勤して早々に宿屋の主人から極秘で伝えられた情報に、セージは思わず息を飲む。



「……それは、本当ですか……?」


「ああ……今朝早くに警備隊の馬車でお戻りになられた……ご同行者のご令嬢方には内密にして欲しい、とのご希望だ」



 表情を硬くして確認するセージに、深刻な表情で主人は頷く。



 何の話をしているのかと言えば、昨夜、外出したインスが襲われた、という事件に関して。



「……まさか、シェイドさんが……?」


「……っ!? 何か聞いているのか……?」



 できるだけ声を押さえて聞いたセージに、さっと主人は表情を強張らせた。



「……その……シェイドさんがご夫人に乱暴しようとして現行犯で捕まった、という噂は聞いていますので……」


「……ああ……。確かに……タイミングを考えればもしや、と思うのも無理はないな……」



 セージが少しだけ口籠ったのは、インスがナペル薬店に関して独自に調べる、と言っていたことはできるだけ隠しておくべきだ、と判断したため。



 それが理由かとも思うが、確証もなく口外して誤解を生むわけにはいかない。



 だが、ナペル薬店の跡取り息子であるシェイドが婦女暴行未遂の現行犯で警備隊に連行されたという話は既に街中に広まっていて、タイミング的にはぴったり合うのも事実。



(……まさかシェイドさん……本当に何か後ろ暗いことがあって、調べていたインスさんを襲ったんじゃあ……?)



 セージが内心でそう考えてしまうのも無理はない。



 そして、もしそうだとしたら、インスに対して申し訳なさすぎる、とも考えていた。



「あ……でも、立派な護衛の方が付いておられたはずじゃぁ……」



 それから、セージはふと思い出して呟く。



 インスがフィール家を訪れた時、巨漢の護衛を二人も連れていたことを。


 まさか、夜間の外出に護衛を伴わない、何てことは考えられない。


 そして、彼らが付いていて、シェイドがインスをどうこうできるとも思えなかった。



「ああ。年上の護衛の方がご同行されていた……けど、毒針で麻痺させられたらしく……」


「な……っ!? 本当ですか?」



 その呟きに答えて教えてくれた主人の説明に、思わず声を上げかけて慌てて声を落とす。



「警備隊から聞いた話だと、麻痺毒を塗った針で護衛の方を無効化して、それから凶行に及んだらしい……しかも、恐らくその道の人間を雇ったのだろう、と……」


「…………っ!!」



 主人もまた、それまで以上に声量を落として説明を続け、セージは声を無くして息を飲む。



(……シェイドさんは薬店の跡取りだ……ご自身でも薬を扱われる……そんな方が、そういった人間を雇って、薬を融通したら……!)



 最悪に近い想像を、セージだけではなく主人もしていた。



「「……………」」



 二人揃って顔色を悪くし、黙り込む。



「……分かっているとは思うが、この件は……」


「……はい。不用意に口外は致しません……あの方はフィール家の人たちにとって……いえ。私にとっても、恩人なんです……恩を仇で返すようなこと、できません……」



 それから、念のため、と口にした主人に、深く頷いたセージはきっぱりとそう告げる。



 見知らぬ男に乱暴されかけた、なんて……女性にとってとんでもない恐怖だろう。


 まして、そのことでいわれのない後ろ指を指されたり、好奇の目に晒される可能性だってあるのだ。



「……それで、お怪我などは……?」


「さっきも言ったように、護衛の方は毒針を刺されて麻痺させられ、未亡人様も何かの薬を飲まされたのか、お戻りになられた時は顔色も悪く、ふらついておられた……」



 明確なことは分からないが、と断った上で応えた主人の説明に息を飲む。



「……シェイドさんは、薬店の跡取りですよね……?」


「……ああ……そんな人間が、薬を使って護衛を麻痺させ、ご夫人に薬を盛るなんて……」



 ぎゅっと、両手を強く握りしめたセージが感情を押し殺して呟けば、主人も嫌悪を顔に浮かべて低い声で返す。



「……正直、マクランさんが許すとは思えないが……」


「……ですね……」



 ナペル薬店の店主で、シェイドの父は職務に対しては厳格な人間。


 薬は人の命に係わる。


 だから、そこには一切の妥協を許さない。



 けれど、人には色々な事情がある。


 そこを汲み取る程度の度量も有していて。


 そうでなければ街の顔役の一人として、神殿や公的機関との取引などできない。



 そして、その認識がセージにも、フィール家の面々にもあったから、まさかカミルに処方されている薬に問題があるとは思いもしなかった。


 ただ、カミルに処方されている薬を持ってきてくれるのはいつもシェイドで、店主から直接渡されたのは最初だけだったらしい。



 インスたちがフィール家を訪れ、カミルの診察をした後、処方されている薬に問題があることを指摘された。



 しかも、急にやめてしまうと禁断症状が出て、病気が悪化したように思えてしまうという。


 だから、禁断症状が出ない飲み方や減らし方、というのを事細かに教えてくれた。



 その話を、インスたちが帰った後にリリーやその母親とも共有し、指示に従った結果。


 今日の出勤前にセージが様子を見に寄った時には、早くも変化が目に見えて現れていて驚く。



 カミル自身も驚いている様子で、何やら可愛いことも言い出していた。



「インスさん、きれいで優しかったなぁ~。娘のアインごと俺が貰ってやるよ!」


「駄目よ、カミル。見たでしょう? 大柄な護衛の方がご一緒されていたの……外で待っていてくださった方もいたのよ? そのお二人が頑張ってるし、インスさんもお二人とは仲が良さそうで、アインちゃんも懐いていて、どちらと再婚されるか迷っていらっしゃるのに、今更参戦したところで勝ち目なんてないでしょう?」


「えっ!!??」


「それに、ちゃんとした稼ぎがないと、まさかインスさんに養ってもらうつもりなのか?」


「う……っ。……り、立派に稼げるようになったら、求婚するっ!」



 まあ、即座にセージとリリーとで夢を壊してしまったのは申し訳なかったな、と今になって思う。



(……けれど、実際、生きていくためには働かないといけないし、いくらインスさんの方が年上で、しっかりされているとはいっても、なぁ~……)



 こっそりと溜め息を吐くセージは、主人との話し合いを終え、仕事を始めるために宿の玄関口へと向かった。

第6話をお読みいただきありがとうございます。


出勤早々、宿屋の主人から昨夜の極秘情報を耳にして言葉を失うセージ。


街で広がる不穏な事件の噂で誤魔化しつつも、恩人であるインスへの心配と深まる疑惑に胸を痛めます。


一方で、適切な助言によって回復の兆しを見せ始めたカミルが抱いた淡い野望は、現実的な正論によってあっさり粉砕される一幕も!?


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「もはや収拾がつかない誤解の極地WW」「カミル君の夢は儚く散ったWWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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