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皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第7章 暴走皇女の我儘を

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第2話・足止め結果を確認すれば~予想に違わぬポンコツさ~

第7章 暴走皇女の我儘を



    第2話・足止め結果を確認すれば~予想に違わぬポンコツさ~



 微妙な空気に首を傾げるジャンヌを躱しつつ、インスが全員分のお茶を入れて各々が席に着く。



 と言っても、ファンとクロードとステールは立ったまま。


 護衛として即座に動ける体勢を保っている。



 なので、応接セットのローテーブルを囲んで座ったのはジャンヌの他にリオンと……インスとアイン。



 ジャンヌと向かい合う形でインスとアインがソファーに座り、リオンはその横側、テーブルの短辺に置かれた背もたれのないスツールにドカッと腰を下ろす。



「……それで、どんな素(・)晴(・)ら(・)し(・)い(・)作戦を考案されたのですか?」


「……う……っ!?」



 ジャンヌが甘くしたミルクティーを口にした瞬間、冷めきった笑顔、という何とも矛盾した表情でインスが声をかける。


 口に含んだばかりのお茶を吐き出しかけたジャンヌは慌てて飲み込むと、がしゃりと音を立ててカップをテーブルに戻した。



 落ち着きがないな……と思いながら眺めるインスを、質が悪いな……と横目でリオンはチラ見する。



 何も、あんなタイミングで声をかけなくてもいいだろうに……



「げほ……っ!? さ、さくせ……ごほっ!」


「姫様!? 貴様! 何をする!?」



 熱いお茶に喉を焼かれながら噎せるジャンヌと、顔色を変えてインスを睨むファン。



 その様子を白けたように流して、ほんの少しだけ、舌先にお茶を乗せたインスは、ゆっくりとカップを戻してにこりと微笑む。



 舐める程度の水分を含んだだけだが、胃の辺りに鈍い痛みを感じた。



「何をも何も……随分と張り切っておいででしたので? さぞかし素(・)晴(・)ら(・)し(・)い(・)作戦をお考えになられたのだろう、と思ったまでですが?」



 それを、きれいに押し隠して、しれっとした様子で言ってやれば、ギリギリと歯ぎしりでもするかのようにファンは怒りの表情を見せる。



 相変わらず、沸点が低いな……と思いながらも、自分も若干八つ当たり気味であることも理解していた。



 それが分かったステールが「うわぁ~。」と内心で思いっきり引いていたが、インスはまったく気にしない。


 ただ、ファンはほんの一瞬、そっと顔を背けたステールを見て眉を顰める。



「それが、ディアスもリオンも全然協力してくれなくて……」


「いや、お前、全然内容変わってないからな? 協力なんてできるわけないからな?」



 周囲の様子に気づくことなどなく、不服そうに頬を膨らませてジャンヌが言えば、若干の疲労感を滲ませてリオンは至極当然のことを言う。



 二晩考えても内容が変わっていないらしいと分かってインスが微かに目を細める。



 一応とばかりにきちんと確認してみれば、結局は呼び出しを行う相手を全く知らないリオンから、一度は会ったことのあるインスに変える程度の思い付きのようだった。



(……お話になりませんね……しかも、私(・)が(・)呼び出しては、相手はお断りすることもできないでしょう……)



 リリーの弟であるカミルを診察した相手が呼び出しなど行ったら、弟の診察内容に何か問題があったのか、あるいは、何らか、診察の見返りを求められるのか、と勘繰る可能性が高い。


 こちらから無理やり押し掛けたとはいえ、同意を取って診察を行い、診察料を受け取ったわけでもない。


 場合によっては無駄に恩を感じてしまっている可能性もあるのだ。



(……皇女殿下の我儘でしかないというのですから、本来であればただ迷惑なだけ……そうは言っても……)



 現に、あの場でも何度も涙ながらにお礼を伝えられたのだから、恩義を感じていることは間違いない。


 そこに、インスからの呼び出しなど行えば、何を置いてでも赴く可能性は高いだろう。



 それなのに、呼び出された先にいるのは見ず知らずの男……



 まさかそのために診察をしたのかとも疑われかねない。



(……何をどう考えれば、押し付け診察で恩を売り、騙し討ちのように呼び出して閉じ込めるのがロマンティックな演出になるのか全く分かりませんが……)



 関係するもの全員の名誉や尊厳を毀損しようとしているとしか思えない。



「…………へぇ?」



 インスの目がすうっと細くなり、眼差しの冷ややかさも増す。


 少し低くした声で首を傾げてやるが、ジャンヌは一切気づこうとしない。



((ヤバい! 絶対怒ってる!!))



 代わりに、それを目にしたリオンやステールがドッと冷や汗を掻いていた。



「? えっと、どうして呼び出さないといけないんですか?」



 けれど、そんな空気を裂くように、こてりと首を傾げたアインが不思議そうに問いかける。


 途端にファンが不機嫌そうに眉間に皺を寄せて凄むのに、キュッと肩を竦めて小さくなった。



 アインの純粋な、それでいて当然の疑問にジャンヌは言葉に詰まるが、懇切丁寧に説明したところでどれだけ理解してくれるのだろうか?



 それでも、一応なのか、本人もようやく思い至ったのか、ファンが呼び出すのはセージ自身が適任である、と言い出せば、それでは演出効果がないと文句をつけだす。



 そもそも、そのような演出が必要なのか? からして甚だ疑問だということに気づこうともしない。



(……セージさんは、あの後もフィール家に留まっていましたね……私たちが帰った後に、何らかの話し合いが持たれた可能性は高いですか……)



 流石に、あの場ですぐさまカミルの体調が良くなる、ということはない。


 何しろ、服用していた薬が原因なのだから。



 だから早くても今日の昼食後。


 順当に考えれば明日以降には多少の差が見えてくるか……



(……ああ、ですが、カミルさんご自身の心理状態によっては、もう少し早く変化らしい変化が見えるかもしれませんね……)



 元より病は完治していたのだから、心持ちが変われば言動にも変化が出るはず。


 それは五年もの間、殆どベッドの住人だった少年の変化としては大きな差だろう。



 つらつらと考えている間にもジャンヌの暴走は止まらず、いきなりセージを呼び出そうとし始めるのを……



「……だから、そんなことでいちいち仕事中に呼び出すなんて、お貴族様だけだぞ!! それも、物凄く傲慢で偉ぶってる奴だ!!」


「「……な……っ!!??」」



 うがぁっ!! と怒鳴り散らしたリオンに止められ、目玉を零しそうなほど大きく目を見開いたジャンヌとファンも絶句していた。

第2話をお読みいただきありがとうございます。


ジャンヌの部屋に集まり、作戦の内容を確認する一同。


しかし二晩かけて考えたはずの案は、相変わらず身勝手で杜撰な思い付きのまま……。


冷めきった笑顔の裏で静かに怒りを募らせるインスと、その不穏さに冷や汗を流すステールたち。


アインの純粋な疑問も意に介さず暴走を続けようとするジャンヌとファンに対し、ついに痺れを切らしたリオンの痛快な正論が炸裂し!?


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「(相変わらずの)インスの圧WW」「リオンのツッコミが冴えてるWWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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