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皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第6章 ブルンの宿の朝

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第10話・朝食の席で困惑す~いつもと同じでいつもと違う~

第6章 ブルンの宿の朝



     第10話・朝食の席で困惑す~いつもと同じでいつもと違う~



 中流とは言え貴族である顧客が宿泊する宿の朝食は、どちらかと言えば皇都の貴族が好むメニューが中心。



 黄金色が美しい、小ぶりのオムレツ。


 ゆでた野菜とキノコ。


 腸詰の焼いたものとゆでたもの。


 白パンと、すりおろしたカブを使った真っ白なポタージュスープ。


 スープの白に映える緑色はエルシルを乾燥させて砕いたものだろう。


 バターやコンフィチュールの他に小さな壺状の器に入った蜂蜜。


 それから、チーズも数種類。



 高位貴族並とまではいわないが、伯爵家相当の貴族家であれば出てきてもおかしくはないものが一通りそろえられているのは流石と言えた。



 飲み物も、香草類を使った香茶だけではなく、高価な紅茶も選ぶことができて、もちろんミルクも用意されている。


 珍しいところでは、果汁を使った温かいジュースもあった。



 クロードとステールが、まずは肉とばかりに腸詰をフォークに刺して口の中に突っ込むのを横目に、インスはアイン用に運ばれて来たミルクパナードを少量、スプーンに乗せると、自分の口元に寄せて香りと温度を確かめる。



「はい。アイン君。あーん」


「えっと……あ、あ~ん」



 それから、甘やかな微笑を浮かべて、スプーンを差し出せば、ちょっとだけ照れたようにもじもじしつつ、アインは素直に口を開けた。



 アインの、小さな口を傷つけないように、スプーンの先の、細い部分にだけ乗せて、零さないようにタイミングを合わせてするりと含ませる。



 程よい温度で、程よい量を口に入れて貰ったアインは甘いミルクの優しい味にほわっと笑顔を見せてもぐもぐと咀嚼し、こくんと飲み込む。



「……熱くはなかったですか……?」


「……ん……丁度よかったです」



 少し心配そうにインスが問えば、アインはふるりと首を横に振った。



「……よかった。……次は、こちらにしましょうか……」



 ほほ笑み返したインスは、小ぶりのオムレツの、一番やわらかな部分を少しだけスプーンに乗せて、同じように香りと温度を自分の口元に近づけて確認してから、アインの口に運ぶ。



 あむっと、また口に含んだアインは濃厚な卵の風味と、ふんわりとした食感に嬉しそうな顔を見せた。



「「…………………」」



 その間、ひたすらに腸詰を食べていたクロードとステールがようやくパンを手に取り、豪快にちぎってバターをたっぷりと塗って口の中に放り込む。



 チラッと、クロードがステールに視線を投げかければ、ステールは若干渋い表情をしつつも僅かに首を横に振る。



「……………」



 少しだけ首を傾げたクロードが今度はインスを見るが、インスはその視線に応えることなく、アインへの給仕を続けていた。



 主食となるパナードを数口。


 ポタージュスープも数口食べさせて、オムレツの他に温野菜も小さく切って一口で無理なく食べられるようにアインの口へと運ぶインスは、今日に限って何も口にしようとしない。



 いつもなら、自分の口に入れて味や温度を確かめるというのに、どうしたのだろうか?



「……今は食えねぇんだと……」



 クロードが微かに眉を顰めるのに気づいて、ステールが小声で告げれば、クロードは困惑気味に視線を戻す。



「……昨日の……?」


「……それもあるな……」



 昨夜の外出のせいか? と聞けば、ステールは曖昧に頷く。


 それだけではなく、これまでの無理な給餌や今朝がた夢見の悪さで魔力を動かしてしまい、連鎖的に引き起こされた呪いの影響で嘔吐してしまったのが一番痛かったのだろう。



 それさえなければ、アインに食べさせる分の、残りくらいは食べられたはずだ。



 アイン用に出されるメニューは、体格に合わせてあるのかクロードやステールからすれば一口分程度にしか思えない。


 実際には、体格年齢の適正量より少し多めに提供されている。



 共通のメニューも、クロードとステールには山盛り出されるが、インスとアインには一、二個ずつや気持ち程度としか思えない量。


 こちらも、実際にはインスにとっては適正量より多いくらいで、インスとアインの二人で一人分を食べても十分。



 クロードは神殿孤児院時代に他の子供たちと一緒に育ったため、それぞれに適正量が違うことを肌感覚で知っている。


 だから、ステールほどは無理に食べさせようとは考えていないが、それでもインスの食の細さを心配していた。



 確かに、呪師は騎士ほどの運動量はない。


 だから、自分やステール、ファンほどは食べなくても不思議はないが、リオンとそう年齢が変わらないのに、そのリオンよりも……どころか女性であるジャンヌよりも少ないのだから相当だ。



(……リオンが孤児院で他の子供たちに取られて殆ど食べれなかった時より少ない……?)



 ちょっと目を離すとすぐに隣に陣取った子供にパンやおかずを取られていたリオンを思い出す。



 育ち盛りの幼い時分にそうやって取られてしまうことが多かったせいか、リオンも小柄だが、そのリオンよりも小さく、頼りないほどの細さであるのが気になってしょうがない。



「……インス……」


「? はい?」



 唐突にクロードに呼び掛けられて、インスはふっと顔を上げ、首を傾げる。



「……沢山食え……」


「はい?」



 真顔で言われて、いきなりなんだと思わず語尾を上げてしまった。



「……クロード。だから……」



 今言っただろう、と言わんばかりにステールが口を挟むが、クロードは無言で首を横に振る。



「……誰も、取らない……」


「…………何の話ですか……?」



 至極真面目に言うクロードが何を言っているのか本当にわからなくて、インスは困惑気味に返した。

第10話をお読みいただきありがとうございます。


中流貴族向けの豪華な朝食が並ぶ中、手厚く丁寧にアインへ食事を食べさせつつも、自分自身は体調不良で何も食べようとしないインス。


そんなインスの食の細さを深く心配したクロードは、かつて孤児院でリオンたちと過ごした記憶から「誰かに奪われる前に食べろ」という的外れな勘違いを展開!


唐突に「誰も取らないから沢山食え」と真顔で宣告されたインスは、何の話をされているのかさっぱり分からず大困惑することに……!?


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「自分は食べないのに完璧給仕WW」「誰も取らないから食え(困惑)WWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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