↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第6章 ブルンの宿の朝

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/66

第7話・神秘の瞳を持つ者と~先を見据えて打つ采配~

第6章 ブルンの宿の朝



      第7話・神秘の瞳を持つ者と~先を見据えて打つ采配~



 アインは見者《けんじゃ》である。



 見者というのは、普通の人には見えないものを見る目であり、魔力を魔力のまま使うことができる、生来の特殊能力者。



 歴史上、あまりにも確認できている数が少なすぎて、一体どんな能力なのか、分かっていないことも多い。


 けれど現在、このエスパルダ聖皇国には、二人もの見者が確認されている。



 一人はもちろんアインで、しかも保有魔力量が多すぎて、感情のまま、魔力を暴発させたことがあった。



 もう一人はこの国の現在の皇太子。


 ジャンヌの弟であるジョンで、ジョンは保有魔力量がそう多くないせいか、見者としての能力も霞のようなものが見える、といった程度だった。



 そして、その見者の力の源でもある目の魔力。


 それを抜き取った時にできる結晶が、瞳の宝石。



 ジャンヌが取り戻すことを渇望して、この無謀極まりない極秘討伐隊が派遣されている理由だった。



 アインは、その目の魔力で意識的に『視る』ことで、普通では目に見えないものを意図的に見分けることができる。


 もちろん、最初からではなく、あまりにも多く溢れかえる情報の波に飲まれて、頻繁に体調不良を起こしていたのを遮断することから始まり。


 必要に迫られて必死に視えるようになった。



 そして以前、長期にわたって昏睡状態に陥っていたインスの『精神体』を視認し、その不調の原因を突き止めたことがある。



 インスはそのことを知っているので、アインが指摘した時点で視えたことを悟った。


 ステールはそんなことは一切知らないので、なぜ、どうしてと疑問ばかりが脳裏を埋め尽くしている。



「……新しいのは……濃いです……」


「……そうでしたね……」



 物質的な肉体には、傷痕一つ残さず回復魔法で癒すことができても、その傷跡は精神体に残ることがある。


 いや。本来なら、精神体の方が癒えるのは早いので、傷痕が残ることはないはずなのだが、インスは幼い時から……



 それこそ、生まれる前から命を狙われ続け、精神体に消えない傷痕がいくつも残ってしまっている。


 その、新しい痕が昨夜の襲撃の結果、生じてしまっているということだった。



 呟くように訴えるアインを撫でながら、インスもそっと息を吐いて頷く。



「……お前らだけで納得するな……」



 げんなりとした様子でステールが口を挟むと、二人は揃ってステールを見て、ちょっと困ったように首を傾げた。



「……とりあえず、ステールさん。お湯を貰って来てください……」


「は? なんで?」


「……薬を飲むんですよ……胃腸の修復を行う内服薬があります……数度に分けて少しずつ濃度を上げて飲む必要がありますから、今のうちから飲んでおかないと暫くまともな食事は無理です」


「っ!? それはマズイ! すぐに貰ってくる!!」



 ちょっと溜め息を吐いたインスが言えば、話を逸らされたステールは眉を顰める。


 しかし、続けたインスの説明に、話は後だと察して慌てて部屋を飛び出して行く。



「……内臓の修復薬は、修復が終わるまで不快感が酷いんですよね……」


「……インス様、無理、しないで下さい……」



 見送ったインスがちょっと遠い目をしてぽつりと呟けば、きゅっと抱き着いたままのアインが心配そうに見上げる。



「……そうしたいのは山々ですが……この先を考えると、食事は取れるようにしておいた方がいいですから……」



 困ったように微笑んで答えたインスに、アインは少しだけ唇を強く結んで、無言のまま小さく頷く。



 内臓の修復薬は複数種類が存在していて、修復に必要な栄養源となる成分が含有されている。


 ただ、どちらにしろ、強制的に組織を活性化させて修復を促すことになるので、鈍い痛みや発熱を伴ったり、内臓が蠢くような不快感が生じる。



 胃腸の修復薬は余程でなければ発熱することはないが、痛みや不快感が生じることはあるし、乱用できる薬でもない。


 本来なら、インスも飲みたいものではないのだが……



(……この後、皇女殿下がどんなとんでもない作戦を思いついたのかも確認しないといけませんからね……流石に、ここまでの不調を抱えた状態でお相手できる気がしません……)



 内心で盛大に溜め息を吐きつつ、インスは荷物の中からいくつかの道具を取り出した。



 携帯用のポットとカップは陶器ではなくガラス製。


 医務殿で使われている、魔法を使って作られた耐久性の高いガラスで、市場に流通することのない医療道具の一種。



 薬湯を作ったり、液状薬の精製や場合によっては蒸留にも使うことができる。



 ただ、当然だが安いものではないし、絶対に割れないという訳でもない。



 他にも、卓上でも使える携帯用の簡易的な竈……と言っても、火が付くわけではないのだが……の待熱炉《たいねつろ》をベッドサイドの小テーブルに置く。



 準備が終わる頃にはステールが宿の厨房からお湯を貰って戻ってきた。



「ほら。これで足りるか?」


「足りなければ、追加を貰って来てください……多分、大丈夫ですが……」



 中程度の大きさの薬缶を片手に持ったステールに応えて、インスは一旦テーブルに薬缶を置くように示す。



 素直に従ったステールが薬缶を置くと、インスは待熱炉の上にガラスのポットを置き、混合された薬草を中に適量入れる。



 それから、ステールが貰って来てくれたお湯をポットいっぱいに注ぐと、待熱炉を起動させた。

第7話をお読みいただきありがとうございます。


回復魔法で肉体の傷は消えたものの、見者の瞳を持つアインによって、見えない負傷の痕跡をピンポイントで見抜かれてしまうインス。


なぜ痕跡が分かるのか理解できず、ただ一人で驚愕し困惑するステール。


見者の力には隠し事ができないと悟りつつアインを優しく抱きしめたインス。


今後の対応を見据え、自らの不調を整える薬湯の準備を静かに始めて……!?


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「ステールの驚愕顔WWW」 「超高級フラスコ??WWW」 と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。