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皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第6章 ブルンの宿の朝

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第6話・悪化はなくても問題だらけ~神秘の瞳に映る痕~

第6章 ブルンの宿の朝



      第6話・悪化はなくても問題だらけ~神秘の瞳に映る痕~



 ベッドに仰向けになったアインの小さな体を、ベッド脇の床に膝を着いて、インスは慎重に診察して行く。



 まずは顔色を、続いて呼吸を確かめ、脈を取り、熱を測り、目や喉、内臓の異常がないかを診た。



 幸いにして、一瞬、パチリと弾けるような痛みを感じただけだったようで、特に悪化している様子はない。


 ただ、元々の極度の貧血と緊張を強いられる環境、そして負担を考えようともしない旅路の強行軍で蓄積している疲労は疑いようもなかった。



 内心でそっと溜め息を吐いたインスは、アインからの聞き取りと実際に自分が診察した結果から一応は問題なし、と結論付ける。



 ……実際には問題だらけではあるのだが、悪化していないだけマシ。


 要するに、現状維持が何とか保たれているという状況。



(……結果だけを考えるなら、数日とはいえ移動が止まったのは幸いでしたね……)



 街中で襲撃されたり、ジャンヌが他人の恋愛に首を突っ込んだりしたおかげで、ブルンに数日、腰を落ち着けて休むことができたともいえる。


 まあ、そもそもこんな無茶な強行軍をやめてくれるのが一番ではあるのだが、自分がどれだけ言葉を重ねても、結局皇女の我儘を他の者が許している限りは終わらないだろう。



「……うん。大丈夫そうですね……でも、無理はしないで下さい。少しでも、具合が悪かったら、ちゃんと教えて下さいよ?」


「……はい……。あの……!」



 ふわりと微笑んで告げたインスに、こくりと頷いたアインは、じっと、真剣な表情でインスを見上げる。



「!? はい?」



 まさか、どこか具合が悪いのを見落としてしまったのかと、緊張しながらインスは先を促した。



「……えっと……インス様の、お身体を……僕が診ても、いいですか……?」


「……っ……!? ええ。もちろん」



 遠慮がちに視線を揺らして言葉を絞り出したアインに、インスは軽く目を見開くとそれはそれは甘やかな笑みを浮かべる。



 アインが求めるままにベッドに横たわり、インスがアインにしたのと同じように、アインが診察して行くのに応えた。



 横たわったインスの脇。


 ベッドの空いたスペースに乗り上げて座ったアインは、小さな手をインスの手首に沿えて脈を診る。


 黙ったまま数を数えて、ちょっと眉を寄せた。



 それから、熱を測り、心音や呼吸、瞼の裏側や口内、爪床の色なども確かめていくと、緊張した様子でちょっとだけ腹部や胃の辺りを押して、慎重にインスの反応を見る。



(…………インス様、やっぱり表情には出してくれない……)



 診察を進めれば進めるほど、インスが一切の不調を示そうとしないことに、ちょっとだけ不満を覚えた。



(……僕には、無理しないでって、仰ってくれるのに……)



 インス自身は己の不調を、まるでない物であるかのように軽視する。



「「「………………」」」



 誰も口を開こうとしない、静かな室内で、アインが動く衣擦れの音だけが微かに響く。



「……インス様。無理、しないで下さい……」


「……え?」



 ややあって、手を止めたアインは真剣な表情でインスを見つめた。


 キョトンとして首を傾げるインスに、アインはちょっと顔を歪めて口を開く。



「……昨日。夜、お出かけになりましたよね……? いつ、お戻りになったんですか……?」


「「……っ!?」」



 アインのその問いかけに、インスよりもステールが大きく息を飲んだ。



 インス自身は軽く目を見張った程度。


 けれど、アインにはそれだけで十分だった。



「……さっき、吐いていたのも……そのせいも、ありますか……?」


「………そう、ですね……」



 きゅっと眉を寄せたアインの震える声での問いかけに、インスはちょっと困ったように微笑んだ。



 インスはゆっくりと身を起こすと、そのままアインをそうっと抱きしめる。



「……アイン君の目(・)を、誤魔化すのは無理ですね……。確かに、昨夜は予想外の事態に巻き込まれて、帰るのが遅くなりました……」


「……ん……」



 静かに語るインスの話に耳を傾けながら、アインはその胸に顔を摺り寄せ、小さく頷く。



「……色々とあって、そのせいで、不用意に魔力が動いてしまったのも事実です……」


「……インス様。お怪我も、しましたか……?」


「「っ!?」」



 きゅっと、小さな手が縋りつくようにインスの服の胸元を掴む。


 囁くように問いかけられて、インスもステールもほんの僅かに体を強張らせる。



「……ぇ……? ……なん……??」



 驚いたステールが思わず小さく呟く中、インスはふっと、身体の力を抜いた。



「……残(・)っ(・)て(・)い(・)ま(・)す(・)か(・)……?」


「……ん……。はい……右の、肩のところと、首に……」


「…………………」



 何かに納得したように言ったインスに、アインが答えると、ステールはポカンと大口を開けて絶句する。



(な、なんで……っ? 何だってそんな、具体的に、怪我をした場所がわかるんだよ!! 治療は終わっていて、不調は残っていないはずだろう!!??)



 白魔法による治療を受けて、昨夜、ジプシー風の相手に脱臼させられた右肩も、直後に絞め上げられて落とされた首の絞め跡も、何一つ残っていないはずなのに……



 ピンポイントで指摘したアインに驚きすぎて、声も出せずに絶叫することになった。

第6話をお読みいただきありがとうございます。


呪いの反応による悪化がないか、アインの身体を慎重に診察するインス。


現状維持が保たれていることに胸を撫でおろすインスに対し、今度はアインが「インスの身体を診たい」と逆診察を申し出ます。


自分の不調を隠して無理をしがちなインスですが、見者の力を持つアインの瞳は誤魔化せず。


隠された負傷の痕跡をピンポイントで見抜かれてしまい……!?


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「お互いを診察し合うふたりWW」「アインの目が鋭すぎる(見者)WWW」 と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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