↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第6章 ブルンの宿の朝

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/66

第5話・厭熱の記憶と許せないもの~互いに想って譲れないもの~

第6章 ブルンの宿の朝



    第5話・厭熱の記憶と許せないもの~互いに想って譲れないもの~



 カタカタと震える身体の奥に、厭な熱が蠢く。


 胃の中のものをすべてぶちまけても治まらない吐き気と、内臓をかき回されるような不快感。


 内容物だけで済んでいるのはまだマシなのだろう。


 身体の奥に一瞬生じた痛みが繰り返されれば、いずれ血を吐くようになり、確実に寿命を縮める。



 しかも、コレは自分にだけ起きていることではない。



「…………っ」



 目に浮かぶ涙を拭う余裕もなく、乱れた、短い呼吸で激しく揺れる動きに時折雫が零れ落ちる。


 嵐のような嫌悪感を何とかやり過ごした頃には、すっかり疲れ果ててしまっていた。



(……本っ、当に……っ!)



 自分のことはまだいいとして……それだって、正直気分のいいものではないが……



(……よくもやってくれましたね……!!)



 ギリっと奥歯を噛みしめ、怒りを飲み込むインスが許せないのはただ一つ。



(……厭な夢を見たせいで、アイン君に……っ!!)



 肩を外されたことも、絞め落とされたことも、正直どうでもよい。


 それはただ単に、こちらの油断。


 想定していた以上に相手が上手であっただけ。



 過小評価してしまった自分のミスに過ぎない。



 けれど、だからと言って気絶している間に、単なる嫌がらせで違法薬物を飲まされ、路上に放置される破目になるとは……


 しかもそこに、わざわざ変態を呼び込んで如何わしい目的で襲わせようだなんて!



 無意識で動いてしまう魔力にも、魔族にかけられた呪いが反応してしまうのに……そのせいでアインに苦痛を強いてしまうなんて……!!



(……絶対に、許しません……っ!!!)



 眠っている間にも魔力が動く恐れがあって、その動きでも呪いが反応してしまうなら、もう一瞬たりとも意識を失えない……


 しかし、残念ながら人間という生き物は一睡もせずに生きることなどできないし、不可抗力で落とされることだって、今後いくらでも出てくるだろう。



 その度に魔力が動いてしまったら……



(…………っ)



 かつて、主神殿の医務殿に入院中に起きた恐ろしい光景が脳裏に甦ってゾッとする。



(……何か、対策をしないと……)



 本当に今すぐ血を吐きそうな気持ちで身を震わせて、インスはゆっくりと立ち上がった。


 手早く汚れを落とし、洗面室から出ると、ステールとアインが同時に顔をあげる。



「「……っ……!?」」



 二人が揃って息を飲んだのが分かって、微かに首を傾げた。



 身を起こし、ベッドの端に腰かけるアインの正面にステールが膝を着いて向き合っていて、その大きな掌がアインの小さな頭をすっぽりと包み込んでいる。



「……いんすさま……」



 顔を上げたアインの大きな瞳には、今にも零れ落ちそうなほど大きな涙が溜まっていた。


 その小さな唇から、震える吐息が漏れるのを見て息を飲んだ。



「アイン君、痛いところは? ごめんなさい……私が……」



 真っ白に青ざめ、血の気が引いた顔にどうにかこうにか、普段通りの表情を張り付けたインスは、足早にベッドへと歩み寄り、ほんの一瞬躊躇って、アインの横に腰を下ろすと、そっと抱きしめた。



「……………っ」



 インスの、あまりの顔色の悪さに震えて、アインはぎゅうっと抱き着く。


 そのままインスの胸元に頭を擦りつけるようにして無言で首を横に振った。



「……アイン君……」



 涙と、吐息の熱が布越しに伝わってきて、冷えたインスの身体に染みた。



「……すまん……。驚かせるつもりはなかったんだが……」


「……いえ……私が、不用意に魔力を動かしてしまっただけです……」



 硬く拳を握り、頭を下げるステールの言葉に、緩く首を横に振る。



「……ぼ……くも……っ」


「アイン君は悪くありません。……眠っていたのに、急に痛い思いをすれば、驚いて当然です」



 インスの胸元に頭を押し付けたままアインがしゃくりあげるのを、インスはそっと背を撫でて落ち着かせながら宥めた。


 フルフルと首を横に振るが、実際に眠っている最中に急に痛みに襲われれば「驚いた……。」では済まないに決まっている。



 自分が魔力を動かしてしまったのだって驚いたからなのだから、これはもう誰が悪い、という話でもない。



 いや、明確に誰が悪いかは分かり切っている。



 まず、インスを気絶させて興奮剤を飲ませたジプシー風の人物。


 それ以上に、男である自分(インス)に対して、如何わしい目的で襲おうとしたナペル薬店の跡取り息子(シェイド)。


 そもそもで言うのなら、自分たちをこんなところまで無理やり連れ出し、赤の他人の事情に好奇心で首を突っ込んだ皇女殿下(ジャンヌ)。


 それを、口先だけでおざなりに止めるだけで、結局は我儘を許している騎士団長(ファン)や国の上層部(皇帝たち)。


 一番はインスとアインに呪いをかけた魔族か……



 更に言うのなら……大元の元は……



(……いえ……流石に、ソレを口に出してしまうと、少し面倒になるかもしれませんね……)



 内心でそっと溜め息を吐いて、インスは改めてアインの容体を診ることにした。

第5話をお読みいただきありがとうございます。


無意識の魔力により、アインへと呪いの痛みが伝わってしまったことに激しい自責と絶大な怒りを抱くインス。


自分を襲った者たちや理不尽な状況に対し、胸の奥で静かに復讐の決意を固めます。


一方で、激しい疲労とショックで顔色を失うインスを深く案じ、涙ながらに抱きついて寄り添うアイン。


互いを大切に想うからこそ譲れない二人の強い絆と、インスの内に秘められた冷たい決意の行方は――!?


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「静かなるブチギレWW」「互いを想い合う絆……尊い(涙)……」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。