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皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第5章 悪魔と躍る・あくまで踊る

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第10話・誰も確認しない前提~会話だけなら噛み合って~

第5章 悪魔と躍る・あくまで踊る



     第10話・誰も確認しない前提~会話だけなら噛み合って~



 神官呪師らとの話が終わると、彼ら同席のもと、警備隊からも事情聴取を求められ、一連の流れと共にメッセージカードを証拠として提出しておいた。



 現場に残されていた革の手帳類や、薬瓶、ステールが刺された麻痺薬が塗られた針などに関しては知らないものなので、その通りに答える。



 実際、裏帳簿や調合記録があるだろう、といった話はしていたが、革手帳などの中身はインスもステールも見てもいなければ自分たちの持ち物でもない。



 あえて伝えていないことはあっても、嘘は一切ついていない、というインスの盤面操作に、呆れ半分、関心半分で付き合うステールも大概だ。



「……つまりは計画的犯行……と言うことですね……シェイドの単独犯ではなく、誰かに後ろ暗い行いを依頼し、お二人を襲撃させた可能性も浮上してきましたか……」


「……どう、なのでしょう……? なにぶん、突然のことでしたし、私は気が付いたら神殿(こちら)にいましたので……」



 難しい顔をして事情聴取を担当した警備隊員が言えば、インスは曖昧に首を傾げて事実のみを口にする。



(嘘はついてないんだよなぁ……呼び出してきたのはシェイドじゃないだろう、と確信してる癖に言わないし、証拠を盗み出すのが簡単だ、なんて言い放ったことも言わないが……)



 遠い目になりつつも表情を動かさないステールは、何とも言えない気持ちでやり取りを眺め、聞かれた時には短く答えるだけ。



 そもそも、警備隊員から聞かれる内容がほぼ「はい。」か「いいえ。」で答えられる質問ばかりだ。



「……その、興奮剤を飲まされ、何やら如何わしい行為を行おうとしていた、とお聞きしましたが……」


「ああ……その……まあ……」



 一応、念のため、と確認したインスに、警備隊員は曖昧に口籠り、視線を逸らす。



「……っ。……なるほど……」



 その態度で事実確認ができてしまって、インスの全身が怒りで微かに震えたのを……



(っ!? 怯えておられる……当然だな。おいたわしい……)



 警備隊員はそう受け取って、事情聴取を切り上げた。



「どうぞ、ご無理はなさらず……今夜は神殿で、ゆっくりとお休みください」


「……ありがとうございます……」



 最後にそう告げて退室して行った警備隊員を見送って、インスは何とか微笑んで見せる。



 正直、怒りで顔が引きつりそうになるのを堪えるのが大変だったが、むしろそのせいで警備隊員だけではなく、神官呪師らからもなぜか憐れむような眼差しで見られ、内心で首を傾げることになった。



(……なぜ、それほどまでに同情的な目をしてみてくるのでしょうか……?)



 インスは知らない。



 警備隊員の頭の中で、シェイドはインスをものにするために悪漢を雇い、自分では直接無力化できなさそうなステールを襲わせた、と考えていることを。



 さらに、抵抗を封じるためにインスも気絶させ、違法媚薬を飲ませて反応を引き出させて事に及ぼうとしていたのだ、と思われていることを。



 か弱き未亡人が、頼みの綱である巨漢の護衛が無力化され、ろくに抵抗できないままに肩を外され、気絶させられ……と、非人道的な恐ろしい思いをしたのだから、怯えるのも当然のことだ、と義憤を漲らせているのだと。



 そして、神官呪師たちは、まっとうな感性を持っているインスが、男に欲情するような変態に、知らぬうちに襲われそうになったことに嫌悪感を覚えるのは当然だ、と考えていた。



 しかも、話を聞くに警備隊員同様、計画的犯行である可能性が高い、と結論付けている。



 そんな風に同性に狙われるだなんて、恐怖でしかない。



 ただ、やはりシェイド自身にステールを無力化するほどの能力があるとも思えないので、共犯者がいる可能性も高いと見ている。


 それが一時的に金で雇った相手なのか、それとも長くつるんでいる相手なのかまでは分からないが、少なくともそういった者との繋がりはあるのだろうとみなしていた。



 彼らはインスが嫌悪や怯えで顔を引きつらせ、震えている、と思い込んでいたが……



(やべぇ……頼むから、キレるなよ……?)



 ただ一人、ステールだけはそれが怒りを堪えているからだと見抜いて戦々恐々としていた。




 事情聴取に訪れた警備隊員や同席していた神官呪師らが退室した後、病室にはインスとステールだけが残った。



 ちなみに、今夜は一晩治療院で入院だ。



 二人とも薬を使われているので、その効果が確実に切れるまでは何が起きるか分からないから、というのが理由だった。



 特に、インスが飲まされたのは違法な興奮剤。


 明確な解毒剤もなく、摂取させられてから処置を受けるまでに多少吸収されているので、その影響下にある。


 今は『弱毒』の魔法で効果を弱め、抜けきるのを待っている状態。


 万一、魔法が途中で途切れるとまた興奮剤の影響が出てしまう可能性もあった。



 警備隊員が持ち込んだ薬瓶の形状や、中にわずかに残っていた薬液などの成分分析が行われていて、この先早く影響を消すための解毒剤の開発も進むだろう。



 何しろ、違法であるがゆえに安全性は皆無。


 即効性が高く、効果も強い、一歩間違えば服薬した相手に重篤な症状を起こしかねない代物だ。



 今すぐ開発は流石に無理でも、万が一に備えて研究は進められる。



 今回、シェイドが持ち込んだと思われているので、そこから色々分かれば現物をいくつか確保できる可能性もある、と見られていた。



 流石に、インスたちもジプシー風の人物の個人的な持ち物なのか、あるいはつ(・)い(・)で(・)にシェイドから盗まれた物なのかまではわからない。



 分からないが……



(……どちらにしろ、この借りはいつか絶対に返します……)



 薄く、口元に笑みを浮かべ、冷ややかな眼差しで虚空を見つめるインスの様子に。



(……こ、こえぇ~~……)



 限界まで気配を消したステールが小さくなって怯えていた。

第10話をお読みいただきありがとうございます。


神殿の治療院にて、警備隊からの事情聴取に応じるインス。


一切の嘘をつくことなく客観的な事実のみを語りながら、持ち前の盤面操作で巧みに状況を誘導していきます。


インスの体の震えや態度を「ショックを受けた被害者」と受け取り、同情と保護を深めていく警備隊と神官たち。


しかし、その震えの真意が「静かな怒り」であることを見抜き、隣で一人戦慄するステール。


誰一人として真相に気づかぬまま噛み合っていく会話と、密かに誓われる冷徹な反撃にご注目ください。


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「周囲の盛大な勘違いWW 」「静かなるブチギレ(ステール恐怖)WWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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