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皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第5章 悪魔と躍る・あくまで踊る

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第9話・皇宮呪師の誘導~真実ではあり、嘘もなし~

第5章 悪魔と躍る・あくまで踊る



       第9話・皇宮呪師の誘導~真実ではあり、嘘もなし~



 インスが意識を取り戻したことをステールが伝えに行き、暫くすると神官呪師が二人、病室を訪れた。



「……この度は、大変な事態に合われたようで……」


「……そのようですね……」



 片方は医呪神官の青と白のローブ姿の男性。


 もう片方は判別神官の朱と白のローブ姿の男性。



 判別神官のローブを着た男性が先に口を開き、医呪神官のローブを着た男性が診察を開始する中、インスは心底困惑した表情で頷く。



(……こいつ……わざとだな……)



 その表情を見て、ステールは微かに顔を引きつらせるが余計なことは言わない。


 できる限り表情も動かさないように努めた。



「……ちなみに、犯人と面識は?」


「ないと思いますけれど……そもそも、私は相手の顔を見てもいませんし、この街の住民でもありませんから……」



 名前を聞いたところで、顔と一致するほどの付き合いがあるのはセージと、リリーたちフィール家の面々くらいだ。



 判別神官の質問に答えるインスに、それはそうだろう、と相手も頷く。



 何しろ、インスは皇宮呪師で、普段は皇都にある皇宮内で生活している。


 ステールも皇宮護衛官であり、ブルンの街の出身者と言う訳でもない。



「……にもかかわらず、今回問題となっているナペル薬店の跡取り息子であるシェイド=マクランはあなたに対して性的な暴行を加えようとした疑いが持たれています……同性に対するそれは異端審問案件となりますので、彼には宣誓による意図の確認が行われることとなります」


「「………………」」



 淡々とした判別神官の申し送りに、流石にインスも嫌悪感を顔に浮かべる。


 実際、嫌悪感と怖気が走っているので一切表情を作ってはいない。



「……とんでもない変態がいたものですね……」


「……私どもとしても、頭の痛い状況です……」



 思わずと言ったように零したインスに対し、診察をしていた医呪神官が溜め息を吐いた。



「ナペル薬店には神殿から薬草を卸したり、また逆に、神殿では栽培できない薬草類などを納品して貰ったりしています……そんな店の跡取りが異端審問対象だ、などと外に漏れれば一大事です」


「「「………………」」」



 医呪神官の言葉にインスもステールも、判別神官も大きく頷く。



「肩に痛みなどは残っていますか? 動きは問題なさそうですが……」


「大丈夫です。特に違和感などもありません」



 それから、脱臼の治療経過を問いかけた医呪神官に、軽く動かしてみてからインスは答えた。



「行われるのは『宣誓』で済むのですね?」


「ええ。流石に、審判を行うほどの重罪とは言えません。未遂である、と言うことが一点と……警備隊から報告があった本人の証言が事実とは異なっていますので……」



 医呪神官が診察を終え、着衣の乱れを整えて良いと告げると、インスは服装を直しながら確認する。


 判別神官がそれに応えて説明を返すが、正直、インスとしては『審判』を受けさせたいくらいだ。



(一体、なぜわざわざ男の私を押し倒そうなどと考えたのか……いくら興奮剤を飲まされていて、多少前後不覚になっていたとしても、気絶した男(・)をわざわざ襲うだなんて、正気の沙汰ではないですよ!?)


(……シェイド=マクランはどうして女(・)性(・)と思い込んでいるんだ? どう見ても男性用の制服(ローブ)を着ているのに……これで彼が女装でもしていたというなら分からなくもないが、現場から直接警備隊によって運ばれて来た時も今と同じ服装だったと聞いているが……?)



 内心で不満を漏らすインス同様、神官呪師らもシェイドの考えや証言が理解できない。



 なぜなら、彼らはインスが着ている服が皇宮呪師の男性用ローブであると知っているから。


 そのフィルターがかかった状態では、いくら女性的で優美な風貌をしているとはいっても、インスを女性と誤認するはずがない。



 だから彼らは気づかないのだ。



 そもそも、皇宮呪師を見たことのある地方都市の者は殆どいない、と言うことに。


 いくら男性用の制服を身に纏っていても、それが男性の服装である、と判断できなければ分かるはずがない。


 その状態で、女性的な風貌であるインスを目にした者が性別を誤認せずに判断できないということに。



 結果、な(・)ぜ(・)か(・)犯人であるシェイドは「俺が来た時には女は倒れていて、介抱しようとしていただけだ!」と訴えることになる。



 そして、神殿側には警備隊から、シェイドは「女性を襲ってはいない!」と主張しているが、現場では「今まさに被害者の唇を奪おうと伸し掛かっていたところを取り押さえた。」と申し送られることになった。



 警備隊からすれば、わざわざ分(・)か(・)り(・)切(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)性別の確認など行わないので、神殿の神官呪師らも、インスの性別が誤認されていることに気づかない。



 当然、当の本人であるインスたちも、街中で誤認されていることに気づかないままだった。



「……面識はないと思いますが、実は、彼……というか、ナペル薬店を極秘で調査できないか? ということは検討していました……」


「それは、なぜ?」



 少し躊躇うように口籠って、結局打ち明けることにした、といった風情でインスが言えば、神官呪師らは一度顔を見合わせ、判別神官の方が確認する。



「……その、私どもの同行者が、この街の代官をされているサルビス家のご令孫であるセージさんと知り合いになり、幼馴染のリリーさんのご家族が長く病で臥せっている、と聞き及びまして……」


「……! それは……神殿に来てくだされば、診察させて頂けますのに……」



 ちらりと、医呪神官に対して申し訳なさそうな視線を向けて話始めたインスに、医呪神官も気持ちは分かるが……と眉を顰めた。



「ずっと、ナペル薬店の跡取りの方が都合して下さっている薬を飲むことで、小康状態を保っている、とのことだったのですが……私が拝見させて頂いたところ、薬の量や服薬の仕方、順番などの指示に問題があるように思いましたので……」



 それで、一度確認をできたら、と話し合っていたのだ、とインスは言い切る。



(……しらじらしい……)



 見事なまでの表情操作と話術を眺めながら、ステールがちょっと、遠い目をしてしまったのは……



 まあ、そういうことだろう。

第9話をお読みいただきありがとうございます。


意識を取り戻したインスの元へ訪れた判別神官と医呪神官。


事情聴取に対し、インスは心底困惑した被害者の顔を作りつつも、一切の「嘘」をつくことなく真実のみを語り始めます。


100%真実でありながらも、巧みな言葉選びで神官たちを意図通りに誘導していくインス。


インスが男性制服を着ていることを知る神官たちと、街の誤認との間で生じる噛み合わない認識の差。


嘘を吐かずに盤面を動かすインスの見事な手腕と、そのしらじらしい誘導劇の横で言葉もなく遠い目をするステールの様子にも注目ですWW


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「嘘『は』言ってないWW 」「完璧すぎる誘導WWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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