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皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第5章 悪魔と躍る・あくまで踊る

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第8話・攪乱者に制裁を~冷たい決意を胸に刻んで~

第5章 悪魔と躍る・あくまで踊る



       第8話・攪乱者に制裁を~冷たい決意を胸に刻んで~



 ステールが何を言ったのかが分からない。



 問題のナペル薬店のシェイドという男(・)が変態?


 ……まあ、そうだろう。


 好きな女性と関係を繋ぐために、その家族を投薬無しでは生活できないようにして、借金で縛っているのだ。


 そんな、一歩間違えればいつ後ろから刺されるかも分からない状況を良しとしているのだから、とんでもない変態と言える。



 けれど……



「……誰に、何を、しようとしていた、と……?」



 聞き間違いか、今、異端審問という言葉が出たような気が?



「だからお前を押し倒そ……って!? 待てっ!! キレるな……っ!!」



 その言葉をステールが繰り返した瞬間、インスの顔から表情が消える。



 魔力が動かないように押さえ込んだのは、我ながら大した自制心だと自画自賛しながら、インスは静かに自分の身体を見下ろした。



「……アレに飲まされたのは、興(・)奮(・)剤(・)……でしたか……」


「……そ、そう聞いてる、が……」



 感情が完全に抜け落ちた、恐ろしいほど静かな呟きに、若干腰が引けた状態でステールが答える。



「………………な(・)る(・)ほ(・)ど(・)……?」


(こわっ!! ……こいつ、本気で怒るとこんな風になるのかよ!! 下手に怒鳴り散らさない分、なおさら怖いぞっ!!)



 ごくごく薄く、唇が弧を描くのを見て取って、ステールが内心震え上がっていることなどお(・)構(・)い(・)な(・)し(・)に、インスは緩やかに首を傾げ、ステールを見た。



「…………流石に、コレは、割に合いませんねぇ?」


「……ヒっ! そそそ、そ……う、だな……?」



 ドロドロに濁って冷たく光る紫檀色に見据えられ、喉の奥で悲鳴を上げたステールは慌ててカクカクと力いっぱい頷く。



「「………………………」」



 嗤っているのかいないのか、分からないほど微かに口角を持ち上げ、瞬き一つせずにステールを見つめるインスと。


 目を逸らした瞬間、首を跳ねられそうな悪寒に背筋を凍らせ、絶句するステールとがしばし見つめ合う。



「…………い(・)い(・)で(・)し(・)ょ(・)う(・)……それならば、徹底的に……」


(ひぇっ!? おっかなすぎるだろうっ!! 終わったな……)



 くく……と、喉の奥で嗤って見せたインスの、全く笑っていない表情と声音に、ステールは心の中でそっと十字を切る。



(……こいつに呪いがかけられてなかったら、この街ごと灰にされてたな……)



 幸か不幸か、今のインスはろくに魔法を使えない。


 いや。使えないことはないが、魔法を使おうとすればアインが激痛に襲われる。


 だから、一切使おうとはしないし、魔力が動くこともないように完璧に押さえ込んでいる。



 その分、押し殺された怒りが重く圧縮され、反動でどんな悪辣な仕返しを企てるか分かったものではない。



(……あ、まずい……もし姫様たちが下手をつついたら……)



 そして、ふと気づいてしまう。



 それでなくても爆発原で華麗にタップダンスを踊って爆発させまくっているジャンヌや。


 分かっているのかいないのか、それをよしとして、時に火に油を注ぐファンが、今のインスをつついたら、どんな爆発が起こるか分かったものではない。



(…………さ、流石に、皇族殺しとか……しない、よな……?)



 その気になったら、魔法など使わず、証拠も一切残さず完全犯罪をやってのけそうな気がするのは気のせいか?


 是非とも気のせいであって欲しいが……



(……目の前で、分かりやすくや(・)ら(・)か(・)そ(・)う(・)としてるなら止めようもあるが、こ(・)っ(・)ち(・)にも分からないようにやらかされたら……)



 気が付いたら死んでいた……なんてことになった場合、誰が責任を取ることになるのか……



(……いや、その場合、全員に責任が及ぶだろうか……ら……?)



 ぞくうっ……と、とんでもない悪寒が全身を凍り付かせる。



(そうだ! もし、万が一、姫様にも(・)し(・)も(・)のことがあったら、この極秘討伐隊の随行員全員に責任が問われる! そんな危険をコイツが冒すはずはない! つまり、その場合は皆殺しにするか、完全に逃げおおせる状況を整える! 自分た(・)ち(・)が死んだと誤認させるってことだ!!)



 そこまで考えが及んでしまえば、もはや疑いようもなく……



(頼むから! 誰も妙なことをしてくれるなよっ!!)



 ジャンヌやファンが失言したり、おかしな行動をとらないこと。


 インスがそれになおさらキレて実行に移さないこと。



 それを必死に神に祈る。



(くっそ……胃の心配どころか命の心配もしないといけないとか! マジで勘弁してほしいぞ!!)



 知らず、胃の辺りを押さえ、げっそりと青ざめたステールを暫く見るとはなしに見つめるインスが。



「…………さて、と………」



 小さく唇を動かして呟くのを見て、一気に寿命が縮まった気がするのは……



 果たして気のせい、で済むのかどうか……



 答えはまだ、誰も知らない。

第8話をお読みいただきありがとうございます。


ステールから明かされた衝撃の事実に対し、静かな怒りを深めていくインス。


一切の感情が抜け落ちたかのような極寒の笑みと、胸に秘められた冷たい決意が静かに場を凍りつかせます。


魔法が使えないからこそ重く圧縮されていく怒りの恐ろしさに、寿命が縮む思いで戦慄し、ただ神に祈るしかないステールの切実な恐怖。


静かに、しかし確実に制裁の牙を研ぐインスの次なる一手にご期待ください!


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「静かに切れ散らかすインスWW 」「ステールの胃(と命)が絶望的WWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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