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皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第5章 悪魔と躍る・あくまで踊る

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第7話・盤面の支配者~転んでもただでは起きない~

第5章 悪魔と躍る・あくまで踊る



       第7話・盤面の支配者~転んでもただでは起きない~



 ステールが無力化され、インスが意識を刈り取られた後に路地裏にやってきた男。


 それが、問題のナペル薬店の跡取り息子か? と聞いてきたインスに、ステールは本気で理解できなくて目を丸くする。



(こいつ……気絶していて、一切見てもいないくせに、何で分かったんだ……?)



 見てもいない、というのなら、ステールもきちんと相手の姿を見たわけではない。


 けれど、意識がはっきりしていたステールは相手の声も、その直後に駆け付けた警備隊員たちの声もしっかりと聞いていた。



「まあ、跡取り息子だ、とは言っていなかったが、ナペル薬店のシェイドとは呼んでいたな……」


「……なるほど……」



 説明に、頷いたインスは少し考えるように目を伏せて、改めてステールを見る。



「……恐らく、宿に届けられたメッセージカードと同じようなものを、あえて残してきたのでしょうね……自分の犯罪の証拠が盗まれ、呼び出しのメッセージが書かれたカードが残っていれば……」



 それから、考えられる可能性を口にすれば、ステールもハッと気づいて息を飲んだ。



「! 当然、暴露されないうちに取り戻しに来る……そんなメッセージが残っているってことは、何らかの取引を持ち掛けられると想定するだろうからな……」


「そういうことですね……指定の時間なども……私たちより後に到着するように調整された文面であった可能性が高いです」



 インスが付け加えた説明に、ステールは大きく溜め息を吐いた。



「……とんでもない計算高さだな……俺もお前も、相手にいいように踊らされたってことか……」


「……そうなりますね……ステールさん、ちょっと、起こしてください……」


「……ん? ああ……」



 同じく溜め息を漏らしたインスの求めに応じて、ステールは慎重に起き上がらせ、背中側に枕を挟んでもたれかけさせる。



「……………」


「……? インス……?」



 上体を起き上がらせてもらったインスは、無言のまま右肩を回して痛みや動きを確認していく。


 特に問題はなさそうだと分かるとそっと息を吐いた。



 けれど、そのまま左手で肩の辺りを押さえるようにして沈黙してしまう。


 一体どうしたのかと、ステールは困惑気味に声をかけた。



「……ステールさんは、針を刺してきた相手の姿は見ましたか?」


「いや……いきなり後ろを取られたからな……お前が上、と言っていたから、屋根かベランダか……建物の二階以上の場所に潜んでいて、飛び降りて来たってことだな?」



 少しして、それでも一瞬躊躇うように口籠ったインスの問いかけに、ぐっと眉を寄せてステールは答える。



「……相手は、体型が分かりにくい服装で、髪も顔も隠していた上に、辺りも暗くなってきていましたから……私にもはっきりとは見えませんでした……見た目からでは性別も判断できませんね」


「……なるほど……まあ、そうだろうな……俺も奴の腕だか足だかを掴んで投げ飛ばしたが……あ~。まあ、あのくらいの太さだと、男でも女でもありえるか……」



 掴んだ位置によっては男であっても女であっても不思議はない。


 暗がりで、相手の姿を確認もせず、痺れで動けなくなっていくのを感じながらの抵抗だ。


 残念ながらその辺りははっきりしない。


 少し距離を開けていたインスからも、はっきりとは見えなかったのだろうと納得する。



「……そして、私はあっという間に落とされてしまいましたからね……正体を探る余裕はありませんでしたよ……」


「……………」



 言いながら、インスが左手で首元を軽く撫でた。


 どこか自嘲気味な笑みを浮かべる様子に、ステールは無言で見下ろす。



「……つまり、私たちは二(・)人(・)と(・)も(・)襲撃犯の姿をはっきりとは見ていない、と言うことになりますね……?」


「え? ……ああ、そう? だな……?」



 一度溜め息を吐いて、何かを振り払うようにして意識を切り替えたインスが、にこりと笑いかけてきたのを目にして面食らう。



 確かに、襲ってきた相手の姿ははっきり見ていないが……



「犯人が、その後路地にやって来たという男性と、何らか関係があるのかどうかも分かりませんね?」


「えっ!? ……まあ、そう? だな??」



 続けられた言葉にますます戸惑って、ステールは首を傾げた。



 こいつは一体、何が言いたいんだ?



「……薬店の跡取りが犯罪を犯しているかもしれない、というお話はしましたが、その調(・)査(・)方(・)法(・)に関してはまだ検討中でしたよね?」


「はぁっ!? いや……お前……」


「私が、いつ、誰に、明確に、何かを、お願いしたと?」


「……………」



 こいつ……



 そこまで聞けば理解する。


 ステールは呆れてインスを見下ろした。



「……お前……全部シェイドとかいう薬屋の男に罪を擦り付ける気か?」


「まさか? 確かに、私たちは彼に疑いを持っていて、調べようと話(・)し(・)合(・)っ(・)て(・)はいましたが、それだけでした……そこに、何(・)者(・)か(・)か(・)ら(・)呼び出しのカードが届いて、話を聞くために店を訪れようとしていただけでしょう?」



 溜め息混じりに確認すれば、それはそれは素晴らしい笑顔で返すインスの、言っていることに嘘はない。


 嘘はないが、意図的に省いている情報は存在している。



 この説明を聞いて、警備隊がどう判断するかは警備隊の勝手なのだろう。



「……本当に、性格悪いな……お前……」


「どこがですか? 私の言ったことは、どこか間(・)違(・)っ(・)て(・)いましたか?」


「間違ってないから性格悪いって言ってるんだ……まったく……つまり、そうやって薬害に関する調査予定を共有することで勝手に調べさせようってことだな? 内容が内容だけに、警備隊も極秘で調査するだろうし、俺たちやセージたちにも口止めをすると踏んでるわけだ?」



 呆れ返ったステールに、インスは無言。


 けれど、その素晴らしい笑顔がすべてを物語っている。



「……お前は……。ああ、そうだ……キレずに聞け。そのシェイドってやつは、どうやら変態だったらしい。意識のないお前を押し倒そうとしていたぞ? 多分、異端審問にかけられるから、お前も神官から事情を聞かれるだろう」


「………………………は?」



 それから、ふと思い出したステールがぶっちゃけた話に、直前までの笑顔が凍り付いたインスは、何を言われたのか理解できずに処理落ちした。

第7話をお読みいただきありがとうございます。


気絶していて現場を一切見ていないにもかかわらず、報告だけで裏に潜む「ナペル薬店のシェイド」の正体と狙いを即座に名指しで看破してみせたインス。


一切の嘘をつくことなく、持ち前の洞察力で盤面を完全にコントロールし、シェイドを自爆へと追い詰めていく不敵な策を張り巡らせます。


盤面の支配者たるインスの極寒な笑みと、それに寿命が縮む思いで戦慄するステールですが……!?


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「シェイドを即名指しWW 」「転んでもタダでは起きないWWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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