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皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第5章 悪魔と躍る・あくまで踊る

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第6話・状況を確認し~予測される闖入者は~

第5章 悪魔と躍る・あくまで踊る



        第6話・状況を確認し~予測される闖入者は~



 インスが意識を取り戻したのは、神殿の治療院に運び込まれ、粗方治療が終わってから。



「……気が付いたか……」



 ホッとして声をかけたステールも、首筋に刺された針に塗られた麻痺薬の解毒薬を投与して貰って、既に回復していた。



「……す……てーる、さ……?」



 酷い倦怠感と喉の違和感に眉を顰めるインスは、少し混乱する記憶を整理しようと考え込みながら呼び掛けに応える。



 確か、昨夜のネズミからと思われる呼び出しのメッセージに従って、宿屋街の下町にある酒場に向かったはず。


 店に入る前に、その脇の路地から視線を感じて……



 そう、ステールが先に立って路地に入り、自分も少し距離を置いて……万一の場合、ステールが立ち回れるだけの空間を取って路地に入った。



 それから……



「……っ……!?」


「バカっ! 急に動くなっ!!」



 路地に入ってからの、ほんの数分間での出来事を一気に思い出して思わず飛び起きる。


 飛び起きようとして、少し体を持ち上げただけでそのまま後ろに倒れたインスを、慌ててステールが抱き止めた。


 ゆっくりと、元通りインスの身体をベッドに横たえる。



「……どう、なりました……?」


「俺は首筋に痛みを感じた直後に体が痺れだして……聞いた話だと麻痺薬を塗った針を刺されたらしい……意識ははっきりしていたんだが、全く動けなかった……」



 自分が意識を失っている間のことを、どれだけ知っているのかを問いかけたインスに、ステールはきつく唇を噛んで説明する。



「……すまん……油断していたつもりはなかったが……お前を守れなかった……」


「それは……いえ……私も、まさかあそこまで、悪辣な対応をされるとは……思ってもいませんでしたし……油断していたのは同じです……」


「それでも、俺はお前の護衛官として同行しているんだ……真っ先に無力化されるなんて、許されない……」


「……ステールさん……」



 謝罪に、謝られることはない、とインスは言うが、ステールはきつく拳を握りしめるだけ。


 強く噛みしめた唇が切れ、爪が掌に食い込んで血を滲ませていた。



 言葉を重ねても意味はない。


 それが分かって、インスは一瞬口を噤む。



「……それで、私は何をされたんですか……?」


「……あ~……それは……」



 だから、話を変えて何が起こったのかを聞いたのだが、サッとステールは視線を逸らし、口籠る。



「「……………」」



 じっと見上げるインスの視線から逃れるように挙動不審になるステールは、どう説明したものかと悩む。



(……まさか、変態野郎に押し倒されかけてた、なんて……言えないよなぁ……あ~。でも、異端審問が行われるらしいから、バレるか……)



 しばらく視線を彷徨わせて考え込んでいたステールは、一度大きく溜め息を吐いた。



「……まず、お前は右肩を外されて、その後、首を絞められて落とされた……ここまでは分かるか?」


「……ああ……肩は外れていたんですね……痛みは理解できましたけれど、状態を認識する前に落とされてしまいましたから……」



 説明を始めたステールに、軽く目を見張ったインスは、あの激痛は脱臼だったのかと理解する。


 正直、外されたのか、筋をやられたのか、あるいは骨を折られたのかを判断できるだけの余裕はなかった。



(……あまりにも、手際が良すぎましたね……ますます只者とは思えませんが……)



 ステールを無力化したこと然り。


 そのステールの抵抗さえも計算に入れていたのであろう、その後の流れ然り。


 肩を外して抵抗を封じ、即座に絞め落とす手際然り。



 ジプシー風の格好をしてはいたが、恐らく本物のジプシーでもないのだろう。


 正体が分からないまま、というのは危険かもしれない。



「……意識を失ったお前に、何かを飲ませていた……医呪神官らの話によると毒物ではなく、興奮剤の一種だったらしい……多分、強制的に血流やなんかを高めるものだろう……」


「……興奮剤……? ああ。この倦怠感はそういう……」



 続けられた説明で納得する。



 興奮剤というのは血流を良くし、新陳代謝を高めるもの。


 言うならば、強制的に全力疾走させられるようなものなので、効果が抜けた後に酷い倦怠感に襲われるのは当然だ。


 更に、肩の脱臼の手当てに回復魔法も使われたのだろう。


 回復魔法は患者自身が持つ治癒力を高めて怪我や病気を治す魔法。


 当然、治癒力を支える体力や生命力が必要になるので、魔法をかけられると疲弊する。


 その疲労感も重なって、自力で起き上がることもできない。



「俺を麻痺させ、気絶したお前に薬を飲ませて、相手は何かを投げ捨ててさっさと姿を晦ましやがった……そこに男が一人。路地にやってきて……まあ、色々あって警備隊が駆け付けた……」


「……色々? それに、警備隊、ですか……?」



 いきなり説明を端折ったステールの物言いにちょっと首を傾げる。


 更に、なぜそんなに都合よく警備隊まで駆けつけたのか……



(……偶然、ではなさそうですね……)



 タイミングを合わせて警備隊を呼んだのはあのジプシー風の人物だろう。



 女だとは思うが、しっかりとした筋肉の張りを感じたので、もしかすると細身の男、と言うことも考えられるが……



(……恐らくは異装していた行商人風の女と、ジプシー風の相手は同一人物で、屋根裏からこちらを観察していたネズミも同一人物とみて間違いなさそうですね……)



 そうなると……



「では、路地に後から来た男というのは、もしかして……」


「……っ!? え? なんで分かった……?」



 インスがピンポイントで告げた男の素性に、ステールは驚いて目を丸くした。

第6話をお読みいただきありがとうございます。


神殿の治療院で無事に意識を取り戻したインスとステール 。


インスを守れなかったことを悔いるステールに対し、気絶していたはずのインスは、現場で起きた状況や仕掛けられた意図を恐ろしいほどの精度で鋭く見抜いていきます 。


一切を見ていないはずのインスによる冷静な盤面分析にステールは本気で驚いて……!?


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「インスの冷静な状況確認WW 」「気絶してたよね!!??WWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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