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皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第5章 悪魔と躍る・あくまで踊る

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第4話・皇宮呪師の敗北~路地裏の闖入者~

第5章 悪魔と躍る・あくまで踊る



        第4話・皇宮呪師の敗北~路地裏の闖入者~



 少しの間抵抗を示していたインスの身体から完全に力が抜ける。



(……く……そ……っ!)



 全身が痺れて動くに動けないステールは、ただ唇を噛みしめて、その様子を見ていることしかできない。



「……ぅ……っ」



 完全に意識を失ってしまったと思しきインスを膝と片腕で抱いて、ジプシーは懐から何かの小瓶を取り出した。



(っ!? ……まさか……っ!?)



 すうっと、ステールの顔から血の気が引く。



 上の方が太く、下の方が細い六角柱の茶色い小瓶。


 その蓋を片手で開けて、ジプシーは迷うことなくそれをインスの唇に押し付け、少しとろみのある中身を口の中に流し込んだ。



「……ぐ……っ。……ごほ……っ! ……ぁ……っ」



 苦しげに噎せたインスが微かに喉を震わせ、ごく少量を飲み込む。


 直後にびくりと体を震わせた。



(毒……!? インス……っ!!)



 その反応に全身が冷えるステールは、必死に体に力を入れ、起き上がろうともがく。


 意に反してピクリとも動かない体に怒りを覚えた。



 インスは意識のないまま抵抗を示すが、ジプシーは小瓶の中身をすべて飲ませてしまう。


 喉が鳴るたびに身体を跳ね上げるインスは、何かに縋るように左手で冷たい地面を掻いた。



「……ぁ……っ。……は……っ。……ぅ……っ」



 極寒の気温とは裏腹、息が上がり、紅潮した白い肌にうっすらと汗が滲む。



「ぅあ……っ。うく……っ!」



 引き攣った悲鳴が零れ、身を捩るインスの着衣に手をかけたジプシーは、女が男を煽るようなギリギリ……見えそうで見えない絶妙な加減で服を乱し、手近な箱の影、建物の壁にインスを凭れかけさせる。



 その間も、身悶えるインスの唇からは荒い吐息と甲高い悲鳴が途絶えない。


 最後に剥ぎ取った外套を腰から下に無造作に投げかければ、そこにいたのはすっかり乱暴された様相の美人。



 くくく……っと、喉の奥で嗤いを堪えるジプシーは、出来上がりのあまりの完璧さに関心半分で愉しさを満喫する。



 しばらく身を捩り、悲鳴をかみ殺すインスを見下ろして、ふと、表通りの方に顔を向けた。



 すうっと目を細め、足元……絶妙な箱の影に何かを投げると、ばさりと小さく音を立てる。



「……依(・)頼(・)の(・)品(・)は確かに渡したよ……」



 それからインスの耳元に顔を寄せると、意識を失ったままのインスに囁きかけ、トン、トン……と箱や壁を蹴って上に消えて行った。



「……ここか……?」



 直後、路地を一人の若者が覗き込む。



 薄い紫色の髪に、濃いめの緑色の瞳。


 年の頃は二十代半ばくらいか……人当たりのよさそうな整った顔立ちの男。



(……っ!? 誰だ? いや、誰でもいい、助けを……!)



 その気配にステールは一瞬希望を見出す。



 だが……



「……おい……どこだ……?」



 男は声を押さえて呼び掛けながら、恐る恐る路地裏へと足を踏み入れる。



(……なんだ……? 様子が……?)



 待ち合わせか、それとも……



 どうも別の厄介ごとが寄ってきた気がして、ステールはまたも緊張感に襲われた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 シェイド=マクラン。


 ナペル薬店の跡取り息子は今朝、裏帳簿や表に出せない調合記録を記した手帳がしまってあった場所に、一枚のカードだけが置かれていることに気づいて顔色を変えた。



 そこにはただ一言。



『日暮れ時。ヴィノン横の路地にて。』



 冗談ではない。



 ア(・)レ(・)が流出したら身の破滅だ。


 せっかく、もうあと少しでリリーも手に入れられそうだというのに!!



 そう思ってカードをぐしゃぐしゃに丸めて暖炉に放り込み、イライラと時間になるのを待った。



 そうしてやって来た路地裏には……



「……は……?」



 白い肌を紅潮させ、荒く息を吐いて身を捩る絶世の美(・)女(・)。



「……ぁ……っ。……ぅ……っ……」



 青みのかかった銀の髪が寒空の下、首筋に汗で張り付き、濡れた唇からは意味をなさない喘ぎが零れる。



(……っ!? この女……この前神殿ですれ違った……女、か……?)



 薄暗くなった路地裏で、よくよく見れば、先日納品で訪れた神殿ですれ違った美女に似ている気がした。



 身に纏う黒い服は着崩れて、腰から下を隠すようにかけられた外套の下で足が力なく雪を蹴る。


 激しく上下する胸元は心細いが、それを差し引いてもあまりある色気。



 ごくりと無意識にシェイドの喉が鳴る。



(……間違いない……この女……例(・)の(・)媚(・)薬(・)を飲んでいる……!)



 誰かに強引に飲まされたのか、それとも自分で煽ったのかは分からない。


 分からないが、吸い寄せられるようにフラフラと歩み寄り、美女(インス)の目の前で膝を着く。



「……おい……あんた……」



 声をかけながら細い肩に手を伸ばす。



「っあ……っ!! ぅぐ……っ!! ああ……っ!!」


「……っ!!」



 指先が触れただけで激しく仰け反り、悲鳴じみた声が上がって、反射的に手を引っ込めた。



 だが……



(……へへ……っ。リリーと結婚する前に、この女を味見させて貰うか……どうせ、ヤってやらなきゃ楽にはならないんだしな……)



 これは人助けだ。



 そう自分に言い聞かせて、シェイドは左手でインスの顎を掴み、右手で左肩を押さえた。



「ぅんん~~~~っ!!」



 激しく悶えるインスの濡れた唇に、ゆっくりと自分のそれを近づけていく。



 二人の息が混じり合うほど近づいた、その瞬間。



「そこで何をしている!!」


「「……っ……!?」」



 路地を照らす明かりを手に、ブルンの警備隊が怒声を上げた。

第4話をお読みいただきありがとうございます。


襲撃者の前に、ついに抵抗する力を失い倒れてしまったインス。


身動きを封じられたステールの目の前で、怪しげな影は懐から一瓶の小瓶を取り出し、インスの口へ流し込みます。


咽せながらも液体を飲み込み身悶えるインスと、毒を盛られたと焦燥に駆られ必死に抗うステール。


絶体絶命の危機に直面した二人の運命は――!?


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「まさかの完全敗北!? 」「怪しすぎる小瓶の液体WWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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