↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第5章 悪魔と躍る・あくまで踊る

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/68

第3話・酒場『ヴィノン』の開店頃に~路地裏の襲撃者~

第5章 悪魔と躍る・あくまで踊る



      第3話・酒場『ヴィノン』の開店頃に~路地裏の襲撃者~



 宿に届けられたメッセージカードに書かれていた『ヴィノン』という酒場は、宿屋街の下町……住宅街にも近い安宿が並ぶ一角にあった。



 時刻は夕方。


 日は西の空に大きく傾き、辺りは薄暗くなっていて、もう間もなく夜を迎える。



 ブルンには街道を東に向かう一団と、西に向かう一団。


 更に皇都方面へと向かう一団と、それぞれの方角から来た一団が入り混じる。



 貴族や豪商が利用する高級宿だけではなく、その従者や店員、更には個人で行商を営む者などが利用する宿屋や食堂、酒場なども多くあった。



 そこに、地元の者らも食事や休憩、呑みに訪れたりするので、開店間際の時間帯は特に人が多く、ごった返している。



「……流石に人が多いな……気を付けろよ……?」


「分かっています……アイン君には宿に残って貰って正解でしたね……」




 チラチラと小雪が舞う街路を人を避けつつ……また避けられつつ歩くステールの真後ろで、インスはこっそりと息を吐く。



 巨漢の護衛官を二人も連れて来ていたら、それだけで威圧感もすごいことになってしまうし、何より人通りの邪魔だ。



 ステールだけでも、軽く二人分ほどの幅を封鎖してしまっているのだから、ここにクロードがいた日には狭い道ならすれ違うこともできない。


 ましてや、体格的にはせいぜい三歳ほどでしかないアインを連れていたら、人波に攫われてしまったり、最悪潰されかねなかった。



「……っ! 待ってください」


「っ!? ……どうした……?」



 事前に宿で確認した、目的の店に真っ直ぐ向かおうとしたステールを、不意にインスが呼び止める。


 その若干警戒を滲ませた声音に、ステールは一気に緊張感を高めた。



「……どうやら、取引の場所は店の中ではなさそうです……」


「……………」



 道の端に寄って、足を止めたインスが見ているのは店の脇の路地。


 視線を辿ったステールも、注意深く探ればこちらを見ているらしい気(・)配(・)を感じた。



「……俺が先に行く……お前は、少し距離を開けてついてこい……場合によっては、立ち回る必要があるかもしれない……」


「……そうですね……分かりました……」



 それから、そう提案すれば、少しだけ思案したインスも素直に頷く。



 二人は揃ってまずは路地に寄り、事前の取り決めの通り、先にステールが、少し距離を置いて、その後をゆっくりとインスが付いて行った。



 表通りの喧騒や人込みが嘘のような静かな路地裏はやはり表より大分厚く雪が残っている。


 ザクリ、ザクリと硬く踏みしめて進むステールの後ろで、周辺の気配を探りながらゆっくりと進むインスの靴音は喧騒と静けさに吸い込まれて消えて行く。



 二人が気付いたことを察したのか、見ている気配は消え去り、今はどこに潜んでいるのか全く分からない。



 緊張しつつも、下手に刺激しないために武器には手をかけず、ゆっくりと周囲を探りながら奥へと進むステールの後ろ姿を視界に納め、インスも辺りを見回し、どこに潜んでいるのかを探る。



 レストランと酒場の間にある路地裏は、搬入のためかそれなりの幅があった。


 代わりに物も多く、身を隠せそうな大きな箱などが乱雑に置かれていて、表通りからちょっと覗いただけでは奥まですっきりとは見通せない。



 よくよく見れば、路面に積もる雪に真新しい足跡も残っていないようだ。


 夕暮れ時の薄暗い時間のせいか、それとも随分前からこの辺りに潜んでいるのか……



(……その場合、このレストランか酒場の住人か、あるいは長く逗留していても不思議はない立場にある相手……もしくは……)



 思考を巡らせながらもインスは緊張感を解かない。


 そのインスを守るように少し前を進むステールの唇からは、呼吸に合わせて濃い白色が一瞬だけ空気を染めていた。



「「………………」」



 喧騒が意識から遠ざかり、極限まで研ぎ澄まされた感覚が心音を頭に響かせる。



 ……と。



「……っ……!?」



 不意に、ステールの視線の先で何かが横切った。



 ハッと注意を向けるが次の動きはない。



 気のせいか、それとも野良猫か何かだったか……と、一瞬集中が途切れる。



「上っ!」


「……っ!? な……っ!!」



 その瞬間、インスが鋭い声で注意を促す。



 しまったと思った時には、屋根かベランダに潜んでいたと思しき影(・)がひらりとステールの肩に舞い降りた。



 ジプシーだろうか?


 体の線を隠す、それでいて動きを妨げることのない緩やかな服装と、分厚いベールで髪も口元も隠し、薄闇に紛れるシルエットだけがインスの目に映る。



 ステールの肩に音もなく舞い降りたジプシーは、一瞬の躊躇いもなく、その首筋にブスリと針を突き立てた。



「っ!? ステールさんっ!!」


「……ぐ……っ!?」



 驚いたインスの声を聞きながら、全身が痺れていく感覚に唇を噛んだステールは、咄嗟にジプシーの腕だか足だかを掴み、投げ飛ばす。



「「……っ……!?」」



 投げ飛ばした瞬間、しまったと顔色を変えたステールの身体が地に沈む。


 真っ直ぐに飛んでくるジプシーの軌道から素早くインスは身を翻して避けるが、辺りに物が散乱しているせいで充分な距離が取れない。



「……な……っ!?」



 ギリギリの位置を通り抜けざま、ジプシーは流れたインスの外套の端をしっかりと掴み、投げられた勢いを利用して引き倒す。



「……っ!!」



 ぐらっと体勢を崩されたインスは、それでも何とか踏ん張るが飛体の勢いには適わない。


 避けた動きの結果、ほぼ横倒しに近い状態にされてしまった。



 冷たい雪の上に身体を投げ出され、瞬間動きが鈍る。


 直後に右腕を掴まれ、肩を押さえられるのを感じた。



(……っ!? まずい……っ!!)



 思った瞬間には思いっきり腕を引かれ、グッと体重をかけられる。


 鈍い音が脳裏に響き、目の奥で火花が散った。



「……ぁ……っ!!」



 激痛に唇から悲鳴が上がる。



「……っ……!?」



 痛みをやり過ごす間もなく、細い割にしっかりとした筋肉の張りを感じる腕が首に回され一気に締め上げられた。



 ギリギリと首を絞められ、頸動脈を圧迫される。



「……ぅ……ぐ……っ」



 必死になって引き剝がそうと自由になる左手で掴み、身を捩るが頭の奥に危険な痛みが響き、視界が徐々に狭まっていく。



「……ぁ……っ」



 くらりと揺れる視線が彷徨い、息苦しさに無意識に唇が震える。



(……やって、くれました、ね……)



 微かに浮かんだ罵倒を明確に認識できないうちに指先から力が抜け、意識が闇に染まっていった。

第3話をお読みいただきありがとうございます。


アインを宿で留守番させ、メッセージに記された酒場『ヴィノン』へと向かったインスとステール。


指定の場所付近で路地裏に潜む気配に気づき、警戒しながら慎重に足を踏み入れます。


しかし、頭上から突如舞い降りた謎の襲撃者によってステールが身動きを封じられ、さらにインスにも容赦のない急襲が迫り……!?


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「インスとステール、大ピンチ!?」「いや、襲撃者、何者WWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。