第2話・早めの夕食を食堂で~幸せを語る幼児~
第5章 悪魔と躍る・あくまで踊る
第2話・早めの夕食を食堂で~幸せを語る幼児~
これで今夜も宿に閉じ込めることに成功。
作戦の立て直しを指示したインスにジャンヌが頷いた時点で勝敗は決したも同然。
ただし……
(……大人しく、作戦立案を続けて下されば、ですが……)
流石に二日目ともなると煮詰まった結果、気分転換と称して動き回ろうとしないとも限らない。
(……そう考えると、クロードさんにも宿に残って皇女殿下の見張りをしていただいた方がいいかもしれませんね……)
インスがそう考えるのは、昨日、フィール家からの帰り道で後を付けて来ていた異装の行商人や、夜に宿の屋根裏から自分たちのことを観察していたネズミのことがあるから。
行商人とネズミが同一人物なのかも、その正体も判然としない中で、とりあえずは同一人物と仮定して依頼を囁いてみれば。
達成はしてくれたようだが引き渡し場所を指定された。
(……いえ……引き渡す、とは書かれていませんでしたね……)
なるほど、何らか仕掛けてくるつもりがあるのだろう。
そう考えれば、なおさらアインは同行させられない。
(……アイン君に危険が及ぶ可能性は、できうる限り排除したいですからね……)
果たして、宿にクロードと共に残す方が安全なのか、自分の目の届く範囲に同行させた方が安全なのかは……迷うところではあるが……
「……インス様……?」
宿の一階のレストランで、早めの夕食を取りながら、ひそかにこの後の段取りを考えるインスを、アインが不思議そうに見上げる。
「……アイン君は、セージさんとリリーさんのことを、どう考えていますか……?」
「……ぇ……?」
ふわりと微笑みかけたインスが、問いかけながら一口大に切った肉のローストをアインの口へと運ぶ。
インスの隣にちょこんと座らされたアインは、ちょっと目を見開いて、驚きながらも素直にそれを口にして、もぐもぐと咀嚼しながら考え込んだ。
その隙に、ステールがインスの口に同じようにローストした肉の塊を押し込んでいた。
「んぐ……っ。……ちょっ! ステールさんっ! 自分で食べますから、押し込まないで下さいっ!!」
「やかましい! アインに食べさせるのに夢中になって、手が止まってるから運んでやっただけだろうが!」
口いっぱいに詰め込まれるような大きな塊に、涙目になったインスが慌てて咀嚼し、飲み込む。
飲み込んだ直後に抗議するインスに対し、ステールは淡々と次の準備を進めていた。
「私には私のペースと言うものが……!」
「グダグダぬかすな! 次だ!!」
「ちょっ……っ!? んぐ……っ!!」
「「………………」」
なおも抗議するインスと、無視して次を突っ込むステールの、いつも通りの攻防にクロードもアインも無言になって見つめるだけ。
インスがどれだけ抗議しようが、アインがいくら制止しようと言葉を重ねようが、ステールが手を止めることはないのはこれまでの旅路でもはっきりしているから。
「……アイン……」
「え……? ぁ……」
いつものこととは言え、呆気に取られてポカンと口を開くアインに、今度はクロードがテーブルを挟んだ向かいから甘くしたニンジンを差し出す。
「……ん……」
「ちょっと! クロードさん!! アイン君には私が……!! ぐ……っ!?」
パクリと口に含んだアインを見て、インスがクロードにまで文句を付けるが、ステールから容赦なく次を突っ込まれて声が途中で止まる。
「……インスは、自分の手を止めすぎ……」
「んぐ……っ!」
もくもくと己の皿に乗った肉を減らしていきながらクロードが言えば、口いっぱいに詰め込まれて話すことのできないインスが涙目で睨む。
「その通りだ……折角、数日滞在してるんだ! しっかり食って体重増やせ!」
「減ってないでしょうっ!!」
我が意を得たりとばかりに頷くステールに、別に体重が減ったわけではないだろう、とインスは抗議するが……
「……もっと、太った方がいい……」
「全然足りてないだろうが。虚弱」
「~~~~~~っ!!」
「……え……っと……」
淡々とクロードがいい、何を言っているとばかりにステールが言う。
涙目で睨みながら必死に咀嚼して飲み込むインスと、オロオロとしながらもインスとクロード、二人から一口分ずつ肉だ野菜だ卵だと口に運ばれるアイン。
「……僕は、お二人が、それぞれに幸せだと思えるなら、それでいいんじゃないかなって、思います……」
それから、漸くインスの質問への答えを口にする。
「「「……………」」」
ピタッと、三人の動きが止まり、まじまじとアインを見た。
「……ぇ……っ!?」
いきなり視線が集中して、びっくりしたアインが小さく肩を跳ねさせる。
「……アイン君の言う通りですね……」
「……ん……正しい……」
「まあ……真理だな……」
すぐに、インスがそっとアインを撫でて微笑めば、クロードもステールも頷く。
そう、誰が何と言おうとも、その人が「自分は幸せだ。」と思えるのなら、それがその人の幸せで……その価値基準も、判断基準も、人それぞれ違って当然。
他人が己のエゴで相手の幸せを決めつけるのは傲慢だろう。
「……それを、ほんの少しでも理解して下さると、いいのですけれども、ね……」
そっと溜め息を吐いたインスの言う通り。
ジャンヌがやろうとしていることは、結局は「ジャンヌが考える二人の幸せ。」でしかないのだ。
「……クロードさん。申し訳ありませんが、アイン君と一緒にあの方々の監視をお願いできますか……?」
「……動きそう……?」
それから、クロードに顔を向けてインスが言えば、クロードはちょっと首を傾げて確認する。
「分かりませんが……フロークス爵子とリオンさんだけでは荷が重いかもしれません……何だかんだ、許してしまっていますからね……」
困ったようにインスが微笑めば、確かに……とクロードもステールも納得できた。
「……アイン君。私はステールさんと少し出かけてきますが、クロードさんと一緒に待っていてください……無理をせず、早めに休んでいいですからね」
「……インス様……危ないこと、しますか……?」
ふわりと微笑みかけたインスに、キュッと服の端を掴んだアインが不安そうに見上げてくる。
流石に鋭い、と思いながらも、インス自身にもどう転ぶかは分からない。
だから……
「……護衛官も一緒です。大丈夫ですよ……」
安心させるようにアインの頭を撫でて、インスがそう告げたのは紛れもない本心だった。
第2話をお読みいただきありがとうございます。
早めの夕食を摂るため食堂へ向かった一行。
アインへのお世話に夢中で自分の手が止まるインスを見かねて、ステールによる容赦ない「肉の押し込み」と、クロードによる「ニンジン給餌」が炸裂!
大人たちの不器用すぎる過保護に翻弄され涙目になるインスと、二人がかりでご飯を口に運ばれオロオロとモグモグするアインのカオスな食卓をお楽しみください(笑)。
次回もお楽しみに!
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▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク
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ノリト&ミコト




