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皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第4章 発芽の兆しと不穏の兆し

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第10話・壊れた皇女を寝かしつけ~神秘の祈りが満たすのは~

第4章 発芽の兆しと不穏の兆し



     第10話・壊れた皇女を寝かしつけ~神秘の祈りが満たすのは~



 ジャンヌが利用している宿室に赴くと、そこには半分死体が二つと目がイっている女性が一人。



「あ! 四人共!! 聞いて!!」


「「「「……………………」」」」



 濃いクマを貼りつけ、薄気味の悪い笑みを満面に浮かべ、手にした紙(書類)を震えながら突き付ける皇孫皇女の、声だけはなぜか元気な呼び掛けにドン引きする。



「まずは、リオンにリリーを呼びに行かせて……」


「……だから……無理だって……」


「次に、適当な部屋にディアスと二人っきりにして閉じ込めて……」


「……ですから……そのようなことは……」


「そこに、セージがリリーを助けに飛び込んで、ディアスを追っ払って告白させれば!!」


「……とりあえず、一旦寝て下さい……」



 常以上に甲高い声でウフフと笑うジャンヌに、疲れ切って覇気のない声でツッコミを入れるファンとリオン。


 三人とも限界を超えていると判断したインスが、溜め息混じりに言う。


 ぐりんっとインスに顔を向けたジャンヌの、薄気味悪い笑みに微かに顔を引きつらせた。



 アインなど、喉の奥で小さく悲鳴を上げて必死でインスにしがみつく。



 そのくらい表情も視線も最悪。



「作戦内容に関しては後でお伺いしましょう……成功させるためにも、気力体力は万全にしておかなければいけませんよ?」


「…………それもそうね……じゃあ、少し休むわ……」


「「「「「「……っ!?」」」」」」


「姫様っ!!」



 意識して笑みを浮かべた……それでも微かに引きつってしまったが……インスの言葉に、数テンポ遅れて頷いたジャンヌは、そのままその場でばたりと倒れてしまう。



 流石に驚いた一同の中で、最初に声を上げ、動いたのはファン。



 直前までうふふ……と嗤っていたジャンヌは早くもぐっすりと眠っていて、抱き起こしたファンは怪我はなさそうだと判断すると、肺の中が空になるほど深く息を吐きだす。



「……お二人も、一旦休んでください……」


「………ぉう……」



 溜め息を吐いたインスがファンとリオンにも言えば、素直に頷いたリオンはふらふらと立ち上がり……



「……リオン……」


「……ぁ~……悪い……無理……」



 クロードに支えられてごにょごにょと言いながらさっさと夢路に旅立つ。



「……しかし、姫様の……」


「こちらはとりあえず、ステールさんに立っていただけばいいでしょう? さっさとベッドに寝かせて来てください」



 護衛が……とウダウダ言うファンを切り捨て、それとも、こちらで運んだ方がよいのか? とインスが首を傾げて見せれば、不機嫌そうに鼻で息を吐く。



「……貴様に任せて落とされでもしては叶わん……私がお運びする……」


「……いえ、私が運ぶとは一言も言っていませんが……?」



 心底不審そうに、インスを上から下まで見下ろしてファンが言えば、何を言っているのかと言わんばかりにインスが返す。



「「……………」」



 一瞬、眼差しが火花を散らすが、それ以上は何も言わずにファンはジャンヌをベッドルームへと運んで行く。



 すぐに出てきたファンはぎろりとインスとアインを睨みつけると。



「……貴様らは姫様のお部屋に近づくな……」


「……仕方ないですね……では、私たちも部屋で少しゆっくりさせて頂きましょうか……」



 一方的な命令に、アインはびくりと震え、インスはそれを宥めるように抱き寄せて溜め息を吐く。



 ふんっと、鼻を鳴らすファンと共にいったん部屋に戻り……



 ファンとリオンがベッドで泥のように眠りにつく中、インスとアインは仲良く話しながら過ごすことになった。




「アイン君。この護符に祈りを込めて貰えますか?」


「……え……?」



 すっかり寝入った二人を横目に、インスが取り出したのはブルンの神殿で譲って貰った三つの護符。



 戸惑ったように首を傾げたアインは、差し出された護符の一つを手に取った。



「……これ……って……」


「ええ……神官の方が祈りを込めないと効果が発揮されない造りになってしまっているのです……品質だけは、最高級なのですけれどね……」



 じっと見つめたアインが目を見開くと、インスは少し困ったように眉を下げて説明する。



「……僕が、お祈りして、いいんですか……?」


「アイン君に、して欲しいのです……」



 困惑気味なアインに、インスがほわりと微笑んで言えば、アインはちょっと躊躇う。



 きちんとした神官様にお祈りして貰った方が……とも思うが、この先を考えれば見習いとはいえ神官呪師としての修行を積んでいるアインが適任なのも間違いはない。



「……分かりました……」



 だから素直に頷いて、床に膝を着き、右手に護符を持って十字を切る。



「……………」



 黙って見守るインスの前で、アインは神官の、正式な礼拝でもって祈りを捧げた。



 都合、三回。



 護符一つ一つに祈りを込める。



 見た目には一切変化は起こらない。



 魔力を動かして込めているわけではないので、二人にかけられた呪いも反応することはない。



 けれど……



(……さすが、ですね……)



 ふわりと、優しくほほ笑むインスは、アインの祈りが護符に刻まれた呪紋を巡り、魔力へと変換され、蓄積されて行くのを感じ取る。



 護符というのは、人の祈りに宿る正の感情を神族に捧げることで守護の魔力とし、いざという時に加護を受けるための……守りの魔法を刻んだ魔法の道具。



 魔法の使い方も、魔力の感じ方も、何も知らなくても使用できるようにと最適化された図象魔法を刻み込んで作られたもの。



 本来であれば、ごく普通の祈りでも守りの魔法が発動するようにされていなければいけないのだが……



 インスがブルンの神殿で譲り受けたこの護符は、神官が行う正式な礼拝による祈りにしか反応しないようになっていた。



「……ありがとう、アイン君……」


「え……っと……僕、少しは……」


「ええ……充分以上に……」



 すっと、アインを抱き上げ、頭を撫でるインスに、はにかみながらもどこか不安げなアインは、その優しい微笑に少しほっとして、ギュッとインスに抱き着く。



「……疲れたでしょう? 一緒にお昼寝しましょうか……」


「……ん……はい……」



 促されて、素直に頷いたアインと二人、インスは空いていたベッドに横になり、二人でゆっくりと休息を満喫することにした。

第10話をお読みいただきありがとうございます。


徹夜でとんでもない暴走作戦を練り上げ、限界を迎えていたジャンヌたち。


インスの巧みな誘導によって無事に寝かしつけた後、部屋へと戻ったインスとアイン。


アインは神殿で手に入れた高品質な護符に向き合い、神官としての真摯な祈りを捧げることに。


無事に祈りを込め終えた二人は、あたたかな時間の中でゆっくりと体を休めます。


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「壊れたジャンヌWW」「インスとアインの尊いお昼寝WWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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