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皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第4章 発芽の兆しと不穏の兆し

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第3話・見者の瞳が見抜くもの~好奇心の面倒臭さ~

第4章 発芽の兆しと不穏の兆し



       第3話・見者の瞳が見抜くもの~好奇心の面倒臭さ~



 インスの腕に抱かれたアインは、同じ方向に向かって歩く人物を見て不思議そうに首を傾げた。



「……どうかしましたか……?」


「……ぁ……」



 すぐに気づいたインスがそっと声をかけると、アインは戸惑ったような表情のまま、インスを見上げる。



「……え……っと……お顔にいっぱいお髭を付けた女(・)の(・)人(・)がいるから……」


「……はい……?」



 その返答に、インスは軽く目を丸くした。



(顔に髭の生えた女性……?)



 一瞬そう考えて、いや……と気づく。



(アイン君は髭を付(・)け(・)て(・)い(・)る(・)という言い方をしましたね……つまり、自前ではない……)



 すぐにその違いを理解する。



 エスパルダ聖皇国において、異装……女性の男装、男性の女装は己を偽る行いである、とされる重大な教義違反。


 最悪の場合は異端審問からの処刑もあり得る禁忌。



 それを、あ(・)え(・)て(・)行っているとすれば、他(・)国(・)の者か、それとも……



「……ステールさん、クロードさん。振(・)り(・)向(・)か(・)な(・)い(・)で(・)下さいね?」


「「……っ……!?」」



 前を向いたままそう告げたインスに、二人はピクリとも反応を示さない。


 示さないが、視線だけがどういう意味かとインスを見た。



「……アイン君が、少し気になる方を見つけたそうです……」



 その視線に応えるように、あるいは、ごく自然な動作として、首だけを捻ってステールを見上げたインスが薄く笑みを浮かべて囁く。



「……お前……俺たちには振り向くなと……」


「だから私が振り向いているんでしょう? お二人の後ろに同行者はいないのですから、確認するなら私が適任です……なるほど……」



 ステールに顔を向けたまま、その後ろ……絶妙な距離を保って歩く行商風の人物を、視界の端に捉える。


 気づいていると気付かれないよう、あえて視線は向けない。


 周囲の風景に同化して存在している人々を見るとはなしに視界に捉えるのと同じ範囲で確認した。



「……どうなんだ……?」


「……行商の方が同じ方向に向かっていますね……まあ、宿屋街に向かうなら当然でしょう……」



 ステールが問いかけてくるのに、そう返したインスが……すっと、ほんの一瞬、目に入ったと言わんばかりの自然さで相手を見る。



(……身体のこわばりも、歩行の乱れもなし……けれど、一瞬息を飲みましたね……自然な呼吸に偽装していますが、気配までは隠しきれていない……)



 たったそれだけで相手の反応を探り、間違いなく自分たちを観察していることを確信した。



 さて、何者で、一体何の目的や理由があって見ているのか……



「……あとで、少し話しましょうか……」


「……今は放置でいい、と……?」



 顔を前に向けて言ったインスにステールは眉を顰める。



 危険があるなら、排除するべきではないのか?



「……まだ、何も分かりませんからね……それに、感じるのは皇女殿下(あのかた)と同種の好奇心です……」


「「……ああ……」」



 ごくあっさりと告げたインスの言葉に、クロードもステールも一気に気が抜ける。



 もちろん、それを悟らせるような真似はしないが……



「今は様子見でいいと思いますよ……行商の方なら、旅人など見慣れているでしょうが、私たちが多少、目立っているのは事実です……」



 続けたインスの言葉に、確かに……と納得する。



 東西に分岐する街道の大都市であるブルンは、この季節でも旅人は多い。


 それでも、巨漢の男二人と、幼児を連れた華奢な若者、という組み合わせは珍しいのだろう。


 街を歩けば現地の住人から、宿では宿泊客などからも視線を集めている。



 ここでは見かけることの少ない、皇宮呪師や護衛官が目立つのもあるだろう、とインスたちは思っているが、実際のところは違う。



 まだ若く、十五歳で(成人してすぐに)子供を産んだと思しき未亡人と、三歳児(その愛娘)。


 更に、未亡人への再婚を競うように迫って護衛をしている巨漢の男たち。



 街の者はインスたちをそう見ている。



 そして、宿の宿泊客たちはもっと複雑な人間関係を知っていた。



 何しろ、この四人に加えてジャンヌたち三人が増えるのだから、ドロドロの人間模様を勝手に想像している。



 特に、貴族の令嬢と思しき主人格が一人で貴族用の宿室を使用し、令嬢と同性である未亡人とその娘が護衛の男たちと一緒に従者用の部屋に押し込められているように見えるのだから、誤解は深まりこそすれ解消されることはない。



 なにしろ、彼らの誰も、そんな誤解を受けていると一切気づいていないのだから当然だ。



「……ああ……ただの好奇心ではなさそうですね……」


「……? インス……?」



 途中で別の道に分かれた行商人が、先回りして物陰に潜んでいるのを気配で捉えたインスが呟く。



 どういう意味かとステールが問いかけるが、インスはふわりと微笑むだけ。



「……というか、お前……」



 その様子を見て、ふと、ステールは眉を顰めた。



 フィール家からの帰り道、ずっとアインを抱いて歩いていたインスの顔色が少しだけ悪くなっている。



「……また無茶しやがって……俺かクロードに預けりゃいいだろうに……」


「クロードさんにならとにかく、あなたに預けるのは嫌ですよ。……アイン君が壊れてしまいます」


「壊れねえっての……ったく……」



 ドアマンが開いた宿の玄関を潜り抜けて消えて行く四人を、物陰から観察していた行商人が愉し気に笑って見ていた。

第3話をお読みいただきありがとうございます。


帰り道の雑踏の中、不思議な人物の存在を目ざとく察知したアイン。


即座に警戒を促しつつも、相手の気配から「野次馬的な好奇心」を感じ取り、静かに様子を見る判断を下すインス。


一方、相変わらずアインを抱っこして無理をするインスと、呆れつつ世話を焼こうとするステールとのやり取りも健在ですW


周囲の凄まじい大誤解をよそに、一行は宿へと戻って来ましたが……?


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「目敏すぎるアインWW」「確認方法がプロすぎるWWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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