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皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第4章 発芽の兆しと不穏の兆し

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第2話・自我の芽生えと困惑と~道行く人波、紛れる影は~

第4章 発芽の兆しと不穏の兆し



     第2話・自我の芽生えと困惑と~道行く人波、紛れる影は~



 今後のことを話し合い、フィール家を出るころには辺りは早くも暗くなっていた。



「……少し、時間がかかり過ぎましたか……」



 空を見上げて、西の端に極僅かな残照を見とがめたインスが小さく呟く。



「……? ……アイン君?」



 その瞬間に、繋いだ手をきゅっと握られて、インスは不思議そうにアインを見下ろした。



 二人が付けている手袋は、外側は滑ることがないように魔物の革が。


 そして内側には、僅かな水分で熱を発生させる雪中兎の毛皮が使われていて、ふわふわのもこもこで温かい。



「………………」



 唇を引き結んで俯くアインは無言。


 そう言えば、ステールも何も言おうとしない。



「……アイン君……」


「……っ」



 その場で膝を着いて、顔を見合わせるようにして向き直ったインスに呼ばれて、アインはピクリと肩を揺らした。



 優しい、温かい声音で呼ばれているのに、胸の奥がざわざわする。



「……教えて下さい。今、君が感じていること、思っていることを……」


「………………」



 そっと、繋いでいない方の手を、手袋を外してアインの頬に添えて聞けば、無意識にか頬を摺り寄せるのに、唇を開こうとはしない。



 二人の頭上で、クロードとステールが視線で会話していたが、インスもアインもそちらを気にする余裕がなかった。



(……どうしたのでしょう? ……何か、気になる事でもあるのでしょうが……?)



 いつもなら、問いかければ応えるはずなのに、今のアインはなぜか頑なだ。



 困惑しつつも、それも、アインが自分の考えや気持ちを、しっかりと持つようになった証拠にも思えて、少しばかり嬉しくも思う。



 けれどそれでも、心配であることに違いはなくて、できれば相談して欲しい、教えて欲しいとも思ってしまう。



(……聞き出すことは、できるでしょうけれど……)



 どうしたものかと、考える。



 アインの感情を……それも、罪悪感などを刺激するような言い方をすれば、必死に否定して、話してはくれるだろう。



 けれど、そのやり方をあまりしたくない。



(……正直、無理に聞き出すやり方は、できればしたくないですからね……)



 必要だと分かっているなら躊躇しないが、今回はそうではない。



 だから、アインを傷つけるようなやり方をしてまで、聞きだしたいとは思えなかった。


―――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


(……どうして、インス様は……)



 一方のアインは、フィール家でのインスの言動を思い返せば思い返すほど、胸の奥がざわついて、何だか嫌な気持ちがぐるぐるする。



 それが何なのか分からなくて、何と言えばいいのか分からない。



 何かが嫌だったことはなんとなくわかるのだが、では何が? と聞かれても……



(……わからない……)



 だから何も言えなくて、キュッと唇を引き結び、俯いてしまう。



「……二人とも、そろそろ戻らないと……」



 しばらく無言になって向き合う二人に、少し呆れた様子でステールが声をかけた。



「……そう、ですね……それじゃあ、アイン君……」


「……ぇ……? ……わ……っ?」



 頷いたインスは、言いながら手袋をはめ直してアインを抱いて立ち上がる。


 急に抱き上げられて、驚いたアインが慌ててインスの首に手を回し、しっかりと抱き着いた。



「……お話し、できるようになったら、教えて下さいね……」


「…………ん……はい……」



 そっと、頭から背中にかけてをやさしく撫でて告げたインスに、アインも素直に頷く。



 四人はゆっくりと宿泊先の宿へと向かって歩き始めた。




 その、後ろ姿を……



(……へぇ……。驚いた、とんでもない上玉じゃないか……しかも、あの服装……)



 散歩でもするような気楽な足取りで宿屋街に向かって歩くのは、だぼっとした服装で中折れ帽子を深く被ったひげもじゃの行商人。



 リリーが勤める宿屋兼食堂・バイファに逗留中の行商人は、少し前を行く巨漢の二人と、子供を抱いた華奢な若者を何とはなしに眺めながら唇を歪める。



(……何だって、こんなところに皇(・)宮(・)呪(・)師(・)とその護衛官、更に神(・)殿(・)護(・)衛(・)官(・)ま(・)で(・)居るのか……皇宮と神殿、双方の護衛官を連れてるなんて……何者かねぇ……?)



 何やら話しながら歩いてはいるようだが、巨漢の二人が壁になって、振り向くようにして話す若者の口の動きが読めない。



 かといって、護衛官の二人は前を向いたまま。



(……それにしても、まさか昨日シメた男共が懸想してる嬢ちゃんの家に、あんな奴らが来てるとはね……危うく怪しまれるところだったよ……)



 家の前で無言で周囲を威圧していた……本人にそのつもりはない……クロードを目にした瞬間、方針を変更し、フィール家を探るのは中止したが……



「……っ……!?」



 チラッと、インスの視線が一瞬こちらを見たのを感じる。



 緊張も警戒も気づかれないように、視線にも気づかなかったフリをして、足取りも呼吸も乱さない。



 極僅かに息は飲んだが、それも自然な呼吸に偽装した。



 そのおかげか、すいっと視線は外れ、何事もなかったかのように彼らは宿へと向かう。



 途中、バイファへの分かれ道で、すんなりと道を変えた行商人は……



 さりげなく路地裏に紛れ込むと走り出す。



 彼らが向かう先に先回りして、予想通りの宿に入っていくのを物陰から確認する。



「……さてはて、一体何者なのかねぇ……」



 ニヤリと、それはそれは愉しそうに笑って呟くその声を聞く者はいなかった。

第2話をお読みいただきありがとうございます。


フィール家での話し合いを終え、すっかり日の暮れかけた街を宿へと向かう一同。


インスの言葉に複雑な感情を抱き、固く口を閉ざしてしまうアイン。


そんなアインの「自我の芽生え」を察し、無理に聞き出さず優しく寄り添い見守るインスの不器用な情愛。


しかし、無事に宿へ戻ろうとする彼らの背後には、密かに忍び寄り観察する怪しげな行商人の影があって……?


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「アインの成長・インスの心配WW」「背後に忍び寄る(怪しすぎる) 影WWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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