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皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第4章 発芽の兆しと不穏の兆し

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第1話・可能性と確実な~疑いあれども確証はなく~

第4章 発芽の兆しと不穏の兆し



       第1話・可能性と確実な~疑いあれども確証はなく~



 セージたちには故意かそうでないか分からない、と告げたものの、インスはこれらの薬は故意に調合され、処方されたものであると確信していた。



(……薬の過剰摂取はまさに毒です……そもそも、食(しょく)すべき薬草の混合を煮出して飲むようにと言っている時点でおかしいでしょう……)



 善意で多めに処方していた、はまだ納得できても……それだって、一度に服用すべき量に分包して渡していない時点で不自然ではあるが……食用の混合薬草を飲用と偽っているのは明確な誤用だ。



 けれど同時に、他では起きていない医療事故だとするなら、誰がどこまで、どのように関わっているのかを明らかにし、正しく裁かなければいけない。



(……事故、というよりは犯罪ですか……恐らく、薬店の跡取りでしたか……その方がリリーさんに懸想しているようなことを伺いましたので、それが目的ですかね……)



「……薬を融通して下さっているのは、この街の薬店の方でしたね……?」


「……ぁ……はい……」



 つらつらと考えながら、確認するように問いかけたインスに、ハッとしてセージが頷く。



「……街で一番の薬屋の、ナペル薬店です。公的機関を始め、多くの店や個人にまで薬の販売をしてくれています。街の顔役の一つでもあって……確か、神殿にも薬草を卸している筈です」


「……なるほど……」



 続けられた説明に、インスは目を細める。



 各地の神殿には薬草畑などが存在していて、神殿か(・)ら(・)薬草が卸されることもある。


 その薬草を扱えるのはよほど信用がある店だけで、厳しい監査なども存在していた。



 また逆に、神殿の薬草畑だけでは足りない薬草類を外部から買い付けることも当然あり、そちらにも厳しい監査が存在する。



(……神殿に卸す薬草類を取り扱っている店が、不正を行っているとは考えにくいですね……というより、そんなことが万が一にもあれば、すぐさま取引が中止されます……)



 神殿は信仰の場だ。


 その信仰が揺らぐような事態は絶対に許されない。


 万が一、そんなことになれば、それはそのまま、その地域を守っている守護結界の崩壊に繋がってしまうから。



 ひとたび綻びが起きれば、そこから復興させることは容易ではない。



 ブルンの領政をサルビス元子爵家が維持しきれなくなったのは、この信仰の揺らぎによる守護結界の綻びも関係しているのだろう。


 不信が蔓延し、祈りが遠ざかれば守護結界は維持しきれなくなってしまう。


 その結果、多くの不幸や犠牲が出て、更に信仰が遠ざかる。



 それを阻止するためにも、難しいと判断すれば速やかな返領が望ましい。


 そういう意味で言えば、サルビス家は正しい判断をしたともいえる。



(……一つの街の崩壊が、国全体を滅ぼしかねないですからね……)



 その、誠実で真摯な領政への向きあいが評価されているからこそ、今も代官や役人として領政に関わっているのだろうと理解する。



「……やはり、薬店自体には問題がない可能性が高いでしょう……そうなると、善意での処方が裏目に出てしまったのか、あるいは……」



 話を聞いてそう口にしたインスに、セージもロブも確かに、と頷く。



「……少し、調べてみないことには分かりませんが……もしかすると、別の目的があってのことかもしれません……一旦、この件はこちらにお任せいただけませんか?」


「……ぇ……任せる、というのは……?」



 考え込むようにして告げたインスに、ロブが目を丸くして見つめる。



「……故意であるのか、そうではないのか、どなたがこの件に関わっていて、どこまで協力し合っているのか……今の段階では、何も分からないでしょう?」


「……それは、確かに……」



 顔を上げたインスに、セージが曖昧に同意を示す。



 もちろん、セージ自身にも、そしてロブにも、もしかしたら……という思いがないわけではない。



 けれど、証拠となるようなものがあるわけでもないことも確かで……



((……シェイドさんがリリーとの結婚を強引に進めるため、と決めつけるには弱い……))



 セージとロブの心の声は一致していたが、口に出されてはいないので誰も気づけない。



 気づけはしないが、この場にいる誰もが……



 黙って話を聞いているだけのステールも、不安そうにインスとセージたちを見比べているアインも、同じ可能性を想定できていた。



 即ち、リリーと結婚したいがための薬店の跡取り(シェイド)の自作自演。



「……ですので、完全に外部の者である私たちが、勝手に調べる事に致します……」



 ふわりと微笑んだインスに、セージもロブも理解が及ばない。



「……? え? 何のために……??」


「もちろん、何ら問題がな(・)か(・)っ(・)た(・)時に誰も困らないように、です……」



 思わず口に出したセージを真っ直ぐに見たインスのその答えに……



「「……っ……!!」」



 二人はハッと息を飲んだ。



(……そうだ、もし、何の問題もない、本当に、ただの善意の空回りだったら……!)


(街の顔役であり、最大手の薬店と関係が悪くなったりしたら、この街で生きていけなくなる……!)



 そこまで考えてくれているのだと分かって、インスを見つめる二人の目に尊敬が宿る。



 そんな二人の様子に、インスは少し、困ったように微笑む。



「……薬店に関しては、どのような結果になるかは分かりません……けれど、少なくともカミルさんは既に病は完治されていて、後は薬の依存性を、禁断症状を起こさないように抜いて行けば、普通に生活できるようになります……それだけは、確かです……」


「「……っ!!」」



 その言葉に二人はまた、大きく息を飲んだ。



「……ですから、少しずつ減薬して、抜け出していただけるように、ご家族もご協力ください……」


「……っ。……はい……。ありがとう、ございます……っ」


「……インスさん、本当に、ありがとうございます……」



 ふわりと微笑むインスに、目を潤ませてロブが、そしてセージが深く頭を下げた。

第1話をお読みいただきありがとうございます。


カミルを苦しめている薬の不自然な仕掛けと、街の顔役であるナペル薬店の存在。


確証がない段階で軽率に騒ぎ立ててフィール家やセージたちの立場を危うくさせないよう、自ら「部外者」として独自調査を申し出るインス。


その気配りと真摯な手腕に救われ、深く信頼を寄せるセージやロブ。


裏で不穏な真相へ迫ろうとするインスの冷静な覚悟が交錯します。


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「怪しすぎる跡取り息子WW」「インスも結局首を突っ込むWWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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