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皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第3章 要衝都市に隠された

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第10話・家族に告げるは裏側の~それは善意かそれとも悪意か~

第3章 要衝都市に隠された



     第10話・言葉の裏に隠された~それは善意かそれとも悪意か~



 完治する、とカミルに告げたインスが、現状は変わらない、と言い出したことに混乱するセージたちの前に、インスは持ってきた薬を並べる。



「カミルさんが服薬されているこちらの薬ですが、このまま飲み続けていては現状は変わりません」


「「……? ……あの……??」」



 一日三回、食後に飲んでいるという粉薬。


 水分補給の代わりに煮出して飲んでいるという薬草茶。


 そして、寝る前に飲む薬液。



「……分かりやすく、申し上げますね……」



 ひたりと、インスの赤みを帯びた紫色の瞳が二人を見据える。



「……こちらの薬は、組み合わせによって依存性を高め、禁断症状を引き起こす……毒です……」


「「……な……っ!!??」」



 インスの口から出た毒、という言葉に二人は目を見張って絶句した。



「ただ……」



 衝撃で一瞬思考停止した二人が、正気に返った途端に暴走しないよう、インスはすぐに釘を刺すように言葉を続ける。



「……違法な品ではありませんし、間違いなく薬ではあるのです……分かっていて処方しているのか、それとも知らないだけなのか……そこがはっきりしていない段階で、騒ぎにするわけにもいきません……」


「「……ぁ……っ!!」」



 その言葉で一気に冷水を浴びせられたように血の気が引く。



 そうだ、今、インスが「毒だ。」と言ったのは分かりやすく説明するための言葉選びに過ぎない。



 けれど……



「……薬を扱う方が、知らないもの、なのですか……?」



 押さえきれない怒りに肩を震わせるロブが、声を絞り出すようにして問いかける。



「……知らないで、済ませてはいけないでしょうね……ですから、故意にしろ、そうでないにしろ、事実関係は明らかにしなければいけません……」



 気持ちは分かるし、言葉通り、命を預かる職に就く者が「知らない。」では済まされない。



 だからインスは真顔のままでそう告げて、持ってきた薬をテーブルに並べて、一つ一つ指し示して話を続ける。



「先ほど申しあげたように、これらの薬は組み合わせによって、依存性と禁断症状を起こすものです……ですから、急にすべてを中断すれば、以前同様、体調が悪化したような錯(・)覚(・)を引き起こすでしょう……」


「なら、どうすれば……」



 困惑気味にセージが問いかけると、インスはまず、小瓶に入った薬液を持ち上げた。



「少しずつ減らしていくのが正解です。それだけではなく、飲み方や、飲む順番も重要になります……依存性を薄めるための減薬と、禁断症状を引き起こさせないための飲み合わせですね……」



 ほっそりとした長い指が小瓶を摘み上げ、ことりと、少しだけ前に、ロブとセージに近い位置に置く。



「まずはこの、寝る前に服用しているという薬……これは夕食の前に半量に減らしてください」


「っ! このまま飲ませ続けて……!」


「急にやめては以前と同じです、と申し上げたでしょう?」



 思わず口を挟んだロブを真っ直ぐに見据える。



「……っ!!」


「……小父さん……まずは、インスさんの話を聞こう……?」



 グッと言葉に詰まったロブに、セージが宥めるように言う。



「……そうだな……申し訳ない。続けて下さい……」



 ふーっと、大きく息を吐いて気を静めたロブに促され、一つ頷いたインスは話を続ける。



「まずは今夜。薬液は夕食前(・)に(・)半(・)量(・)に減らして、食後の粉(・)薬(・)は(・)中(・)止(・)します。この順番でなければ、依存性が薄まりません……薬液の量も一度にひと瓶は多すぎます。ですから、半量です……」


「「…………」」



 説明を真剣に聞いて、なるほど……と思う。



 薬の量というのは年齢や性別、体格によって効きが変わる。


 過剰に摂取させていれば依存性が高まるのは道理だ。



「粉薬の残りの二回分。朝とお昼はこれまで通りのタイミングで服用して下さい。ただし、半量ずつ……」


「「……っ……!」」



 ここまで聞けば理解できる。



 カミルには過剰な量を処方していたのだ。


 それが故意であるのか、それとも、もしかして良かれと思って、多めに出してくれていたのかは分からないが……



((……なるほど、今すぐに怒鳴り込まないように、気を使って下さったのはそういう……))



 止められていなければ怒鳴り込んでいただろう。


 もし、善意で多めに出してくれていたのなら、むしろ恩知らずと言われかねないところだった。



 けれど……



「……最後に、こちらの薬草茶にして服用しているという薬ですが……」



 残る、複数の薬草の葉を調合してあると思われる薬草茶を示したインスの表情が少し、硬くなる。



「……これは、煮出して飲むもので(・)は(・)あ(・)り(・)ま(・)せ(・)ん(・)……」


「「……は……?」」



 薬草茶が飲むものではないというのはいったい……



 どういう意味かと、口を開けて見つめる二人に、インスはほんの一瞬、言い淀む。



「……これは本来、一つまみ分程度をスープやお粥などに、調理の最後に加えて薬膳食にし、そのまま服用するべき調合になっています。……煮出してしまっては特定の薬効だけが濃くなりすぎますし、折角含まれている別の薬効が消えてしまいます。……回数も、一日一食分で十分です。水分補給の代わりに何度も服用するものではありません……」


「「……な……っ!!??」」



 説明に絶句した二人に対して、決定的ともいえることをインスは告げる。



「……そして、この三種類の薬に、それぞれ含まれている、ある薬効を持つ薬の組(・)み(・)合(・)わ(・)せ(・)が……」



 カミルさんをベッドに縛り付けている、身体機能を脆弱化させている原因です。



 と……

第10話をお読みいただきありがとうございます。


完治する、とカミルの前で優しく告げたインス。


ですが、ロブとセージを前にすると、一転して冷徹な表情でテーブルに薬を並べます。


カミルが飲み続けていたのは、組み合わせによって依存性を高め、禁断症状を引き起こす「毒」でした。


薬草茶として飲んでいたものの驚くべき誤用。


そして三種類の薬の「組み合わせ」に隠された、カミルを五年間ベッドに縛り付け、身体機能を脆弱化させていた本当の原因。


誰の、どのような意図によって、この「薬害」は引き起こされていたのか……?


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「薬の過剰摂取は危険 (ガチ)」「表と裏の差が激しいWWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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