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皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第3章 要衝都市に隠された

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第8話・診察前に確認し~互いの意思を確かめる~

第3章 要衝都市に隠された



       第8話・診察前に確認し~互いの意思を確かめる~



 ネモナがお茶をそれぞれの前に置き、そっと一口含んだインスがゆっくりと口を開く。



「……改めまして、私は皇都の主神殿で医学を学んだことがあり、今回、同行者の医療面でのサポートも任されております。とはいっても、医師としての職に就いているわけではありません……」



 突然、貴族の道楽で押しかけて来た、得体のしれない旅人を信用しろと言われても無理に決まっている。



 だから、まずはしっかりと双方の意思を確認し合う必要があった。



「正式な医者ではない、と言うことです……何より、ご子息を見ず知らずの旅の者に任せるのはご不安でしょう。ですので、この場で診察をお断りいただいても構いません」


「「「「……え……っ!?」」」」


「……は……?」



 続けられた言葉に、セージを始め、フィール家の面々だけではなく、インスの後ろに立って様子を見守っていたステールまでもが目を丸くする。



 ずっと、不安そうな顔で様子を窺っているアインだけは、事前にインスから色々と説明されていて、納得しているので無言。



「……もちろん、お任せいただけるのであれば、きちんと診察させて頂きます。ただ、事前にセージさんから伺ったお話から推測するに……」


「「「「……ああ……」」」」



 少しだけ、眉を下げて言葉を濁したインスに、それはそうだろうと納得できた。



 この五年、ずっと投薬で小康状態を保っているのだ。


 薬をやめれば悪化する。


 けれど、飲んでいれば身を起こす程度のことはできる。


 外に出て、元気いっぱいに動き回ることまではできないけれど、ベッドから一歩も動けないほどの重症と言う訳でもない。



 むしろ、そんな状況になっているのなら、何とかしてもう一度神殿の医者に診て貰い、場合によっては回復魔法で治療して貰うことだってしただろう。



 命の値段をケチるような真似はできないからと言って、本当に危険である、と素人目にも分かるような状態なら、全財産をかき集めてでも診て貰うに決まっている。



 そうではなく、薬を飲んでさえいれば一定の症状には押さえられているのだから、現状維持を続けることはできるだろう。



 ただ……



「……診察をお願いできますか……」


「……あなた……」


「……お父さん……」



 インスを真っ直ぐに見て、ロブが重い口を開く。


 ネモナとリリーが呼びかけるが、彼は視線を逸らさなかった。



「……カミルは……息子は元々。外で遊び回ることも、悪戯することも好きな、普通の子どもでした……けれど、五年前に高熱で倒れて以来、ずっとベッドに縛り付けられています……」



 膝の上で、ギュッと拳を握り締めて話し始めたロブを、全員が黙って見つめる。



「……薬代が苦しいことも事実ですが、そんなことよりも、あの子を自由に動けるようにしてやりたい……それが私の本音です……」



 そっとネモナがロブの膝の上の拳に手を添えた。



「……何も変わらないかもしれない……それは確かでしょう……けれど、何かが変わる可能性もあるのなら……どうか、お願いします……」



 深々と頭を下げたロブを、インスもアインも、少し目を丸くして見つめる。



 続けざまにネモナとリリー、そしてサージも頭を下げてきた。



「……分かりました……。息子さんを任せて下さって、ありがとうございます……」



 その様子に、ふわりと微笑んだインスが頷くと、顔を上げた彼らは少し、泣き笑いのような表情を浮かべる。



 それではさっそく……と席を立ち、案内されてカミルが使っている二階奥の、日当たりのよい部屋を訪れた。



「……カミル……」


「……………」



 ロブの案内で訪れた部屋で、ベッドに身を起こし、ぼんやりと窓から外を眺めていたのは、淡い桃色の髪と濃いめの黄色の瞳をした少年。



「……なに……? お客さん?」



 表情が殆ど動かない、どこか冷めたような口調で、父親の後ろに立つインスと、手を引かれて隣にいるアインに目を向けた。



「……こんにちは……」



 ロブが説明しようと口を開きかけるのを遮るように、インスがふわりと微笑みかけて挨拶する。



「……ぇ……? ぁ……こ、こんにちは……?」



 その、柔らかで華やかな微笑に、ぼっと赤くなったカミルは目を泳がせて小声で応えた。



「私はインスと言います。この子はアイン君……」


「……こんにちは……」



 明らかに挙動不審となったカミルの様子を気にもせず、インスはベッド脇にゆっくりと歩み寄り、自分とアインを紹介する。


 アインもぺこりと頭を下げて、カミルに挨拶した。



「……ぇ……っ、と……どうも……?」



 え? なに、この美人と美少女??


 何でここに居るの?



 混乱のまま、インスとアインを交互に見て顔を赤くするカミルと、視線を合わせるように腰をかがめたインスは、にこりと笑う。



「私は医者です。今日は、あなたを心配したご家族のために、診察させて頂きに来ました」


「……ぇ……?」



 インスの、思いもかけない説明に、カミルは目を丸くして父親と……その後ろ、扉の外の廊下から中の様子を見守っている家族たちを見た。



「「「「……………」」」」



 医者だ、と言い切ったインスの物言いが若干引っかからなかったわけではないものの、患者であるカミルが安心して診察を受けられるようにだろうと解釈して様子を見守る全員が無言で頷く。



「……でも……お布施……」


「大丈夫ですよ……心配しなくても充分、頂きましたから……」



 もごもごと、口の中で呟いて俯いたカミルを安心させるように、穏やかな口調のままで告げたインスに、一瞬驚きそうになって、セージたちは必死に表情を保つ。



 カミルに余計な心配をさせないために、インスはそう言ってくれているのだろう。


 それがすぐにわかって、なら自分たちがカミルを不安にさせるような真似をするわけにはいかない。



「……診察させていただいて、いいですか……?」



 心を落ち着かせるように、穏やかな声音で問いかけるインスに……



「……ん……お、ねがい……します……」



 くしゃくしゃの笑顔を見せてカミルも頷いた。

第8話をお読みいただきありがとうございます。


病床のカミルのもとを訪れ、対面を果たしたインスとアイン。


しかし、診察を始める前にインスは「自分は正式な医師ではないこと」「不安であればここで診察を断っても構わないこと」を、フィール家一同に極めて誠実に伝えます。


得体の知れない旅人に大切な家族を任せることへの不安をどこまでも慮るインス。


その真摯な姿勢に、驚く一同。


思いがけないことを言い出したインスに、ステールが目を見開く中、カミルの父ロブの切実な願いと、家族の固い意思。


互いの意思を確かめ合い、ついにアインとインスによるカミルの診察が始まろうとします。


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「正式な医者ではない→『医者です』WW」「普通に闇医者? それとも無免許医WWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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