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皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第3章 要衝都市に隠された

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第6話・事前準備と情報収集~呼び止められた理由が分からず~

第3章 要衝都市に隠された



     第6話・事前準備と情報収集~呼び止められた理由が分からず~



 セージから事前に、彼が知っていることや、昨日、ジャンヌが無茶を言った結果を、相手側にどう伝えているのかを確認した後。


 宿の主人らにも謝罪と心づけなどをしてからインスは一旦宿泊している部屋へと戻る。



 いや、戻ろうとしたのだが、宿泊客と思われる貴族の男性に呼び止められていた。



「失礼……。あなたは何やら、護衛の男共に不遇な扱いをされておられるようだとお聞きしたが……」


「……はい……?」



 いきなり呼び止められて、背後に使用人と思しき男を控えさせた貴族男性の言葉に首を傾げる。



(……護衛に、不遇な扱い……? 護衛というのはステールさんとクロードさんのことでしょうか? 私の護衛官(・)はステールさんだけなのですが、アイン君と一緒にいることが多いので、クロードさんも私の護衛官(・)と誤解されたのでしょう……ですが、不遇……? ですか……?)


「……まあ、確かに……?」



 ちょっと驚いて、瞬きを繰り返しながら思考に耽る。


 それから、不遇と言われればそうかもしれない扱いはされているな……と納得した。



「そうでしょうとも! ……いえ。私も、本来であれば口を出す必要はないとは思うのですが……使用人(これ)があまりにも哀れである、と訴えるもので……」



 道を塞ぐように立つ貴族男性は五十代くらいか……その背後に控える使用人風の男も同年代に見えた。



 言いながら、貴族男性は整えた顎髭を扱くような動きを繰り返し、目で示した使用人は無言で一礼する。



 けっして、おかしなことを言っているわけではない。



 ただ……何というか……



(……仰っている内容と、表情が……どうも……)


「……っ……」



 首を傾げるインスの服を、キュッと掴んでアインが身を寄せてくる。



 それを、そっと宥めるように片手で抱いて、インスは少し困ったように微笑んだ。



「……お心づかい、ありがとうございます……ただ、お気遣いいただく必要はないかと……」


「いやいや! ご遠慮召されるな!!」



 それから、穏便に断りを入れるが、大げさなほどの身振り手振りを添えて貴族男性はにじり寄る。



「「……っ……」」



 距離を詰められた分、インスとアインは一歩後ろに下がって距離を取るが、主人である貴族男性と共に使用人の男も回り込むように立ち位置を変えて二人を壁際へと追い込む。



(……なんだか、昨日、街で声をかけてきた男性たちのような動きですね……?)



 そう言えば、彼らもこんな感じの表情を浮かべていたような……?



 だが、流石に貴族であるだけはあって、いきなり掴みかかってくるようなことはなさそうだ。



(……代わりに、何というか……皇女殿下方と同様の話の通じなさ、がありそうですが……)



 まさか、手出しされてもいないのに暴力沙汰を起こすわけにもいかない。



 どうしたものかと、そっと溜め息を吐いた。



―――――――――

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 行商も営む子爵家の当主である男は、いつもブルンに滞在する際に使用している宿で、奇妙な噂を聞いた。



 明らかに高位貴族と思われる、とんでもない美少女と婚約者の美青年。


 それと、未亡人と思しき若い美女にその愛娘と思われる美しい幼女。


 彼らの護衛や小間使いと思われる男の一行が宿泊することになったようだ、と。



 それだけならば、まあ、そんなこともあるだろう、だったのだが、問題はその後だ。



 宿の者が貴族の令嬢と思われる美少女と……どんな関係なのかは杳として知れないが、まだ年若い……成人してすぐに子供を産んだと思われる未亡人と、その愛娘が同じ部屋を使うのかと確認した。



 ところが、令嬢だけが主人格が宿泊する貴族用の宿室を使用し、残りは空きがあった従者用の三人部屋を使うのだという。



 主人格が宿泊する貴族用の宿室というのは、居間の他に主寝室、家族用の寝室、果ては世話係となる同性の従者らが使用する休憩用の仮眠室、水回りなども完備されている。


 だから、仮に、未亡人が令嬢の身内ではないとしても普通なら、同(・)じ(・)女(・)性(・)同(・)士(・)が貴賓室を使用するのが当然。



 むしろ、使用人同士だとしても婚姻関係にない男女が同じ従者用の……ベッドと洗面室くらいしかない部屋で同衾するなどありえない。



 ありえないのだが、彼らはさも当たり前のように未亡人とその愛娘を同室に押し込み……案の定、何やらいかがわしい行いをしていたと思しき声が漏れ聞こえてきた……と報告された。



 更に、食事の席でも娘を甲斐甲斐しく世話している未亡人の隣に陣取った年上の護衛が、半ば無理やり食事を詰め込んでいて、未亡人が涙する姿まで目撃されている。



 極めつけは……



(護衛の分際で、主人格である未亡人の口に布を詰めて黙らせる!? ありえないであろう!!)



 令嬢が最も身分が高いのであろう、ということは分かる。


 この未亡人が令嬢とどんな関係性にあるのかまでは分からないが、所作を見るに間違いなく貴族に近しい身分にあり、野蛮な護衛どもが手を出していいはずはない。



 令嬢にべったりと張り付くようにしている、騎士然とした銀髪の男は令嬢の婚約者か……未亡人とその愛娘に対する態度が随分と冷淡でもあった。



 それが、護衛たちを付け上がらせているのか……どちらにしろ、見過ごせる状況とも思えない。



 いや……



(……こんな良い女、護衛の男共にくれてやるのはもったいなさすぎる……!!)



 貴族男性の、この思考が実際にはすべての理由。



 彼らは知らない。



 一行のうち、正真正銘の女性がジャンヌただ一人である、と言うことを。



 彼らが未亡人と思い込んでいる良い女、などどこにも存在せず、いまだ完全回復には程遠い虚弱な青年を生かすために、食事の世話や体調管理を行っているだけだ、と言うことを。



 もちろん、自分たちが未亡人とその愛娘である、と誤解されているなど、インスもアインも思ってもいなくて……



「……いえ……遠慮ではなく……」


「いやいや! 一言、ほんの一言、仰っていただければ、助力は惜しみませんぞ!!」



 困ったように告げるインスと、口元を歪めたような笑みを浮かべる貴族男性との睨み(はなし)合いは……



「……そこで何をしている……?」


「「「「……っ……!?」」」」



 ジャンヌを連れたファンがとことん蔑んだ目で睨みながら間に入るまで続いた。

第6話をお読みいただきありがとうございます。


セージとの事前確認や、宿への配慮を終えて部屋へと戻ろうとするインス。


しかし、廊下で突然、見知らぬ貴族男性に呼び止められてしまいます。


インスたちが置かれている「境遇」への噂を聞きつけ、下心を隠して強引に距離を詰めてくる男性に、困惑しつつも穏便に断ろうとするインス。


アインと共に壁際へと追い詰められ、言葉の通じない相手に手を焼き始めたその時、冷ややかな視線を投げかけながら間に入ってきたのは……!?


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「宿の中でも声掛けWW」「行商の子爵の思考がクズWWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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