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皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第3章 要衝都市に隠された

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第2話・皇女殿下の呼び出しと~話を聞くのも一苦労~

第3章 要衝都市に隠された



      第2話・皇女殿下の呼び出しと~話を聞くのも一苦労~



 前夜、ずいぶん早い時間にがっつりとマッサージされた結果。


 すっかりコリは解れたものの、別の疲労でぐったりとしてしまったインスは、翌朝早くにアインを呼び出したジャンヌの部屋を訪れる。



「あら? インスも一緒に来たのね?」


「……いけませんか……?」



 部屋には他にファンが居るだけ。


 一応、部屋の外、扉の前にはクロードも立っているが、同席しているのは四人だけだ。



 ちょっと首を傾げたジャンヌが言うのに対し、笑っていない笑顔で返すインスは向かい合うように応接セットのソファに腰を下ろすと、すぐ隣にアインを座らせた。



「……それで? こんなに朝早くから、アイン君に一体どんな用事がおありで……?」



 チラリと、ファンに視線を投げたインスが問いかければ、満面の笑みでジャンヌは胸の前で両手を合わせる。



 無言のファンはいつにも増して仏頂面。



 明らかに、何らかの問題が持ち上がっているのが分かる。



「あのね! アインに診察して欲しい子がいるの!!」


「……は……?」


「……ぇ……?」



 そんなインスとファンの間の冷ややかな気配に一切気づかず、いきなりそう言いだしたジャンヌに、インスもアインも目を丸くした。



「昨日、インスたちが出かけた後にね……って、あ! 何で一緒に連れて行ってくれなかったのよ!! わたしもお買い物に行きたかったのに!!」


「……私が出かけた先は神殿ですが……?」


「え? あれ? お買い物に行くからリオンも連れて行ったんじゃなかった?」


「……そちらは、ステールさんの用件ですね……」



 話始めた……かと思えば、いきなり脱線したと思われる話に、ちょっと頭痛を感じながらも相槌を打つ。



「……姫様。お話の続きを……」



 同じように、眉間の皺を揉みながらファンが口を挟めば、そうだった! とジャンヌも話の軌道を修正する。



「ええっと、ディアスと二人でお茶をしてたらね、セージとリリーが目配せをしていて……」


「……どなたですか? そのお二人は?」



 いきなり出てきた名前に戸惑ってインスが口を挟めば、もうっ! とジャンヌは唇を尖らせた。



「ドアマンのセージと幼馴染のリリーよ! 門のところに立ってたでしょう?」


「……ドアマン……」



 何を言っているのかと言わんばかりのジャンヌの説明に、ドアマンの記憶を遡ってみれば、昨日、出かける前と帰って来た時とで違う、二人のドアマンがいたことは覚えている。



 覚えてはいるが……



(……なぜ、ドアマン……??)



 疑問は深まるばかりだ。



 こっそりと溜め息を吐いているファンにでも説明させた方が早い気がすると思いながらも、その後も逐一情報を引き出しながら、あっち飛び、こっち飛びするジャンヌの話をまとめると……



「……つまり、皇女殿下(あなた)は、たまたま目に入った男女の色恋にわざわざ関係を持ちに行かれ、ご自分が責任を取れるわけでもないのに安請け合いをされ、お相手の同意も取れていないのに押し掛けるように、と仰るのですね?」


「えっ!?」


「……言葉が過ぎる……」



 一切笑っていない眼差しと、いつも通りの微笑を張り付けた表情で伝えれば、ジャンヌは驚いたように目を丸くし、眉間に皺を寄せたファンがぼそりと窘める。



 窘めるが……



(……その声と表情で仰られてもねぇ……)



 いつものキレもなく、頭痛を堪えるかのような様子では説得力がない。



「言葉を飾ってどうなるというのですか? というより、これでも大分、穏やかな表現をしていますが?」



 チラッと一瞬だけファンを見て、すぐにジャンヌへと視線を戻したインスがにこりと笑って小さく首を傾げた。



 正直、言葉を飾らずに言わせてもらうなら。



 わざわざ旅先の都市(こんなところ)で、他人の色恋に首を突っ込まないで下さい。


 しかも、適当なことを言って、責任を全部アイン君に押し付けていると気付いていますか?


 もっと言えば、どう考えても物見遊山の貴族の道楽にしか思えませんよ?


 相手の方だって迷惑でしょう。


 余計なことに関わるくらいならとっとと皇都にお戻りください。


 むしろ私たちはその方が助かります。



 くらいのことは言いたい。


 これを全部飲み込んで、最低限言っておくべきことだけに押さえて、更に表現も整えているのだから文句を言われる筋合いなどなかった。



「で、でも! 弟のカミルって子は十歳から五年も殆ど寝たきりらしいのよ! 助けてあげたいじゃない!」


「そのお心がけはご立派だと思いますが、その方と皇女殿下(あなた)に一体どんな関係が?」


「別にないわよ? え? 何かいる??」



 ぐっと、両手の拳を胸の前に持ってきて力説するジャンヌを冷ややかに見つめる。



 あっさりと関係はない、と言いながら、同時にそんなものが必要なのか? と首を傾げていた。



「困ってる人がいて、してあげられることがあるなら、助けてあげたいじゃない! 何かおかしい?」


「「「………………」」」



 キョトンとして首を傾げるジャンヌを黙って見つめる。



(……まったくの、赤の他人を気に掛けるよりも先に、アイン君や私(こちら)のことをもう少し気遣って頂きたいのですが……?)



 貼りつけたような微笑の下でインスがそんなことを考えているとも知らず、ジャンヌはひたすらに首を捻っている。



「んんん~~~? やっぱり、ちょっと診て来てくれれば、何かわかって、助けになれるかもしれないじゃない!」


「……長患いの方を、ちょっと診ただけで何が分かると仰るのですか?」



 ややあって、至ったらしい結論を口にしたジャンヌを、冷ややかな視線が射貫く。



「えっ!? 何かはわかるでしょう?」


「「「………………」」」



 さも当たり前のように言われて、再び沈黙が落ちる。



 確かに、診察を行えば何かは分かるだろう。


 しかし、それが何の役に立つというのか?



「……結局、今のまま、投薬を続けるしかない、という結論にしか至らない可能性もありますが……?」


「それならそれで、安心させられるじゃない!」


「「「………………」」」



 結果が変わらなくても、何も分からないままよりはいい。



 確かに、その通りだ。


 その通りではあるのだが……



「……完全に、貴族が道楽で人を玩具にして楽しんでいるだけですね……」


「えっ!!??」


「っ! インス=ラント! 流石に言葉が過ぎる!!」


「………ひっ……」



 冷めた表情で呟いたインスに、ジャンヌは本気で驚いて目を丸くし、ファンが厳しい声で諫める。



 その怒声に、やり取りをオロオロしながら見ていたアインが、短く悲鳴を上げて、ぎゅっとインスの服を掴んで身を竦めた。

第2話をお読みいただきありがとうございます。


朝も早くからなぜか「アイン」を呼び出したジャンヌ。


不審に思ったインスが同席する中で始まったのは、他人の色恋と事情に首を突っ込んだ皇女の安請け合い。


貴族の道楽と冷徹に切り捨てるインスに対し、戸惑うジャンヌ。


冷ややかに微笑むインスが言わんとすることは!?


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「ジャンヌは話下手WW」「キレが悪いファンWWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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